9月23日(日)、J2第41節の愛媛FC対アビスパ福岡の一戦が、ホーム(愛媛県総合運動公園陸上競技場)にて行われた。空を雲が覆い、風が少々吹いているものの、ピッチコンディションは概ね良好。19時、辺りが夕闇に包まれる頃、アビスパ福岡のボールで試合が始まった。
(写真:タッチライン際での激しい攻防)
 立ち上がり、愛媛FCは両サイドを活かした鋭い攻めを展開する。しかし、10分が経過する頃には、相手に中盤を支配され始め、徐々に劣勢に追い込まれる。前半12分には、ロングスローから一瞬の隙を衝かれ、失点を喫した。

 早い時間帯に先制点を奪われる苦しい展開となったが、愛媛FCはセットプレーから得点のチャンスをつかみ、ボールの支配率を徐々に取り戻していく。前半24分、中盤のルーズボールをDF星野真悟選手が拾い、センターサークル付近に陣取るMF宮原裕司選手に送る。

 その宮原選手が、右サイドに開いたMF大山俊輔選手にパスを送る。ボールを受けた大山選手が、すぐさま前線のFW内村圭宏選手の足元にスルーパス。そのまま内村選手がペナルティアークまでドリブルで駆け上がり、タイミングを測ってシュートを放つと、相手DFに弾かれたボールが、ペナルティアークに転がる。そこに走り込んできたのが、MF江後賢一選手。左足を思い切り振り抜くと、グラウンダーのシュートが相手DFの足をかすめながら、見事にゴールイン! コースが変化したために、相手GKも反応できなかった。

「逆転の準備が整った」とばかりに、サポーターは歓喜の雄叫びを上げ、スタンドが活気を帯びてきた。この同点ゴールで勢いに乗れると思えた。だが、わずか5分後の前半29分、セットプレーから、あっさりと2点目を献上してしまう。

 もちろん、愛媛FCも黙ってはいない。クロスバーに弾かれ、惜しくもゴールにはならなかったのだが、久しぶりに先発出場したMF青野大介選手の素晴らしいミドルシュートや江後選手のダイレクトボレーシュートなど果敢に反撃を試みた。しかし、同点に追いつくことはできず、前半は1−2のまま終了した。

(写真:お互いに闘志をぶつけあうゲームとなった) 後半の立ち上がり、愛媛FCは細かいパスワークで中央突破を図る。FWの動きも活発になってきた。
 後半5分には、ついに同点ゴールが生まれる。センターライン付近で相手のボールを奪い、中央をドリブルで駆け上がった大山選手が相手DFを引き付けつつ、右サイドのスペースに走り込む内村選手にパス。ボールを受けた内村選手が、ペナルティエリアの外からグラウンダーのクロスを折り返す。

 ゴール前に走り込んできたのはFWジョジマール選手。このボールを軽く押し込み、見事な同点ゴール! 流れる様な美しい攻撃だった。サポーターによる歓喜の舞が、スタンドを包んでいく。だが、後半11分、アーリークロスでGKを上手く引き出された隙に、ミドルシュートを決められ、またしても失点。なかなか、愛媛FCは先行することができない。

 しかし、それでも愛媛イレブンは闘志を失わなかった。江後選手のスルーパスからの内村選手のグラウンダーのシュートや大山選手のアーリークロスからのジョジマール選手のヘディングシュートなど、守備陣も果敢に攻撃参加して、相手を攻めに攻め立てる。

 そして、後半41分だった。MF赤井秀一選手が、右サイドタッチラインからフリースローを投入。そこから逆サイドにボールをつないで、宮原選手が相手DFを引き付けつつ、左サイドの高い位置に陣取るMF神丸洋一選手へ。同サイドをオーバーラップして、神丸選手から足元にパスを受けた青野選手が、味方選手の動きを確認しつつ、ゴール前に低い弾道のボールを供給。これをゴール前に詰めていたFW三木良太選手が、打点の高いジャンピングヘッドで右隅に流し込んだ。本日3度目の同点ゴール! 土壇場で追い着いた愛媛イレブンに向けて、スタンドから大歓声が送られる。途中出場の三木選手は、望月一仁監督の期待にゴールという形で見事に応えてみせた。

 その後も、愛媛FCは勝ち越しゴールを奪うべく、勢いに乗って攻め立てたが、時間は経過し、タイムアップ。3−3の引き分けに終わった。諦めずに3度追いついた愛媛FCの精神的な逞しさを感じる一戦だった。試合終了後、アビスパ福岡の選手たちは、がっくりと肩を落として、まるで試合に敗れたように見えた。愛媛FCにとっては、勝ちにも等しい試合だったと言えるのではないだろうか。

 ここにきて、愛媛FCは、失点はあるものの、得点数を伸ばしてきている。課題となっていた決定力不足を克服しつつあるようにも思える。様々な面で、精神的にも戦術、技術的にも成長の跡がうかがえる愛媛の若き戦士たち。残りわずかとなった今季リーグ戦において、大暴れしてくれそうな予感である。

松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
◎バックナンバーはこちらから