後期シーズンは最後まで香川と優勝を争いましたが、3ゲーム差の2位に終わりました。前期の後半からチーム力は上向きだっただけに残念です。最終的には防御率1位(1.00)の近平省悟がヒジの手術で離脱したことが響いてしまいました。彼が万全でいてくれれば、あと5つは勝てたはずです。

 残り5試合の時点、愛媛と香川はゲーム差なしで競っていました。香川は全勝して一気にゴールに飛び込んだ一方、愛媛は2勝2敗1分。最後の最後で差が出たのはプレッシャーへの対処だったように思います。

 愛媛の選手は大事な場面で「ミスをしてはいけない」という気持ちが先走り、固くなってしまいました。特にその傾向は野手に多く見られましたね。送りバントの失敗や、好球に手が出ないなど、重圧に負けたような攻撃が続きました。優勝を決められた香川との直接対決では、わずか2安打。0−1で完投した浦川大輔を見殺しにしてしまいました。

 ただ、前向きに考えれば、昨年まで優勝争いにほとんど絡めなかった選手たちにとって、後期はいい経験ができました。やはり優勝争いの中での1試合は、通常のゲームの何倍もの価値があります。
「次の塁! 次の塁!」「1塁まで全力で駆け抜けろ!」
 僕がこれまで口うるさく言ってきた言葉が、自然と選手たちの間で飛び交うようになってきました。勝つ中で、選手たちの意識が変わってきたことは大きな収穫です。

 愛媛は年間勝率2位に入ったため、リーグチャンピオンシップで香川ともう1度、戦うチャンスがあります。香川には前後期連覇のアドバンテージとして1勝が与えられました。逆転で3勝して年間王者を狙うには、レギュラーシーズンと同じ戦いはできません。負けたら終わりのトーナメントの気持ちでぶつかります。

 香川との今季の対戦成績は前後期合わせて、8勝18敗4分。最多勝をあげた松尾晃雅に1勝7敗、防御率1.45、サブマリンの塚本浩二には0勝5敗、防御率0.43とまったく打てませんでした。この両者が先発の軸になることは間違いありません。2人を攻略しない限り、愛媛の勝ち目はないと言えるでしょう。

 5日の第1戦まで残された時間はわずか。打撃練習は2投手の攻略に絞り、対策を徹底したいと考えています。詳細は、ここでは明かせませんが、とにかく5日の第1戦を全力で勝ちに行きます。そのために先取点は欠かせません。愛媛は香川との30試合で21試合も先制を許しました。終盤に逆転したゲームも多かったとはいえ、やはり先に点をとって相手ピッチャーに圧力をかけたいところです。

 幸いにも第1戦はホームの坊っちゃんスタジアムで行われます。今季は10勝1敗2分と松山の皆さんの大声援を完全に味方につけることができました。チャンピオンシップは先手必勝。愛媛のみなさん、どうかレギュラーシーズンに増して選手たちを後押ししてやってください。よろしくお願いします。

 最後にもう1つ、声を大にして伝えたいことがあります。高知ファイティングドッグスが経営難で存続の危機に瀕している問題です。僕はどんな理由があろうとも、高知球団の活動休止に反対します。四国アイランドリーグを石毛宏典コミッショナーが立ち上げた時の理念を思い出してください。4県で切磋琢磨する中で未来のスターを育て、四国を元気にする。高知を切り捨てれば、アイランドリーグの存在意義が問われてしまいます。

 高知は初代チャンピオンに輝き、昨年も前期優勝。今シーズンは3位でしたが、後期はともに優勝争いを演じました。経営状態が苦しくとも、素晴らしいチームであることに変わりありません。この問題が報じられて以降、高知は優勝争いから脱落しました。選手たちに少なからず動揺があったのではと思わずにはいられません。

 4球団が分社化されたことで、各チームは独自の取り組みができるようになりました。その反面、球団格差が広がっています。今季、香川が連覇し、徳島はダントツの最下位に沈んだように戦力の違いは明らかです。もちろん、各球団の努力が必要であることは言うまでもありません。ただ、選手補強や獲得に関する最低限のルールを決めないと、この傾向はますます強まってしまうのではないか。現場サイドからみて、このことを非常に心配しています。

 競争と共存共栄。この両立が今のアイランドリーグには大切です。4県4チームがそろってこその四国アイランドリーグという大原則を、もう1度考えてほしいものですね。

沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを2位に押し上げた。




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