サッカーJ1の「アルビレックス新潟」が「アルビレオ新潟FC」と名乗っていた頃、「新潟にJクラブを」というシンポジウムに参加したことがある。来場者はほんの数名。サッカー熱が高まるには相当な時間が必要だと思ったものだ。
 ところが今やアルビレックスは1試合で平均約3万7000人を動員するJリーグを代表する優良クラブである。その立役者が著者でもある池田弘会長だ。
 この池田氏、愛宕神社の宮司にして新潟総合学院理事長という変わり種である。なぜ宮司が学校やサッカークラブの経営に乗り出したのか。そこを訝る向きもあるが、実は「地域密着」というコンセプトに照らせば、すべて公益性の高い事業であることがわかる。
 ヨーロッパではどんな小さなまちにいっても教会とオーケストラとスポーツクラブは必ずある。いわばそれは“心のライフライン”とも呼べるもので、上下水道の整備や教育・医療機関の拡充同様、そこに住む人々が生きていく上でなくてはならないものなのである。
 スポーツクラブの創造、発展なくして地域の再生はありえない。著者のようなリーダーが他の地域にも必要である。
「奇跡を起こす人になれ!」(池田 弘 著・東洋経済新報社・1400円)


 2冊目は「世界がもし全部アメリカになったら」(勝谷 誠彦・藤原 俊彦 著・アスコム・800円)。「グローバルスタンダード」とはいうものの、その本質は超大国アメリカのルールや文化を唯々諾々と受け入れることに他ならない。世界のアメリカ化に警鐘を鳴らす。


 3冊目は「『できる人』の極意」(齋藤 孝 著・マガジンハウス・1300円)。できる人とできない人ではどう違うのか。勝つ人と負ける人はどう違うのか。人生を楽しんでいる人と苦しんでいる人はどう違うのか。読めばわかる。


<この原稿は2005年6月23日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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