日本代表が3連覇を目指すアジアカップが間もなく始まります。オシム監督にとっては代表監督就任後初のビッグタイトルだけに結果が問われる大会になりそうです。オシム監督自身も「内容か結果かで言えば、結果を重視する」と言いきっていますからね。

 意気込みが強いのか、オシム監督は短期合宿(24〜27日)の招集日を1日繰り上げました。大会までの準備期間の少なさを補うためにやむを得なかったのでしょう。18日の会見の席上でも、アジアカップ参加国の中で日本は唯一リーグ戦をやっている国と皮肉を言っていましたからね。

 また、中村俊と高原がオフで日本にいる期間を有効に使いたいという思いもあったはずです。オシム流の戦い方を選手に浸透させるためには、時間は多ければ多いほどいいですからね。

 日本が1次リーグで対戦するのはカタール、UAE、ベトナムの3ヶ国です。カタールは昨年末のアジア大会を制覇したチームで侮れない相手ですし、力の落ちるベトナムも地元だけに油断はしないほうがいい。気の抜けない戦いが続きそうです。

 しかし、一番気になるのはコンディションです。開催場所は東南アジア、しかも季節は夏。高温多湿に慣れた日本人にとっても厳しい環境になるはずです。体力面を技術や組織でカバーする必要があります。直前まで個々のスキルアップを図ってほしいですね。

 6月上旬に行われたキリンカップを振り返ると、オシム監督は戦術面の確認というより駒を確認するためのテストとして考えているようでした。まだまだメンバーは流動的だという印象を受けましたね。

 センターラインのGK川口、DF中澤、阿部、MF鈴木、中村憲、中村俊、FW高原はチームの中心として固まりつつありますが、その他は決まっていない状態です。対戦相手によってシステムを変えながら、サイドを意識して攻撃する。キリンカップは、そのためにテストしている段階のように見えました。

 選手個々でいえば、コロンビア戦の後半から出場してチームを活性化させた羽生の動きが光りました。オシム監督がスーパーサブとして羽生に期待しているものがよくわかりましたね。終了間際に高原と交代出場した播戸も与えられた時間で何かをしてやろうという意欲を感じさせる動きでした。キリンカップは優勝という結果以外にも収穫のある大会だったと思います。

 話をアジアカップに戻しましょう。今回僕が日本代表に期待することは、タイトルを死守するとともにオシム流の動くサッカーの形、方向性をみせるということです。オシムジャパンが発足して1年が経とうとしています。これまでの活動の集大成としてアジアカップをオシム監督が考えているサッカーを体現する場にしてほしいですね。

<中東への移動がU-22を苦しめる>

 最後にU-22代表についても触れておきましょう。先日、北京五輪最終予選の組み合わせが決まりましたね。日本と一緒になったのはサウジアラビア、カタール、ベトナム。サウジアラビアは言わずと知れた強豪、カタールも力を付けている曲者です。

 そしてなにより中東の2ヶ国と同組になったことが、この組の厳しさを増加させています。中東への移動、厳しい環境を乗り越えて勝ち抜くことは容易ではありません。前回のアテネ五輪予選時も中東遠征で複数の選手が体調を崩すアクシデントがありましたからね。

 厳しい予選になることは間違いありませんが、ここを突破できなければ五輪本大会に出場しても何もできずに終わってしまうはずです。出場権を獲得するのが目的ではなく、本大会で何ができるか、どこまでやれるのか。選手たちには高い目標を持ちつつ、目の前の試合に集中して予選に臨んでほしいですね。

● 大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>
 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://business2.plala.or.jp/kheights/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


◎バックナンバーはこちらから