開幕ダッシュに成功し、最大時で14もあった貯金が終わって見れば借金14の4位。昨季、巨人が坂道を転がり落ちていった背景にはイチにもニにも抑えの弱さがあった。
 締めくくり役がしっかりしないことには安定した成績は残せないのだが、巨人は同じ轍を踏んできた。自前で抑えを育てられないから外国人やFA選手に頼らざるをえなかったのだ。

 ところが今季は少々、様相が異なる。左太ももの故障で出遅れたエースの上原浩治がプロ野球史上は初の球団創設5000勝をマークした5月2日の中日戦にクローザーとして登場し、プロ初セーブをあげた。上原はこの2日後のヤクルト戦にも抑えとしてマウンドに上がり2つ目のセーブをあげた。

 球団創設5000勝目の記念のマウンドに、あえてあげたあたりに原辰徳監督の上原への期待の大きさが窺える。
 原監督ははっきり口にしないが「上原よ、このままクローザーでやってくれないか」というのが本音だろう。

 というのも、原監督は以前から上原のクローザー転向にご執心だった。02年、就任1年目で日本一を達成した際には河原純一(現西武)というクローザーがいたが、原監督が「後ろをやってくれないか」と最初に声をかけたのは実は上原だった。
 この時は「僕は先発でやらしてください」と上原がはっきりと断ったため、原監督の構想が日の目を見ることはなかった。しかし完全に諦めてしまったわけではなかったようだ。

 長い目で見れば、クローザー上原は本人にとっても球団にとってもメリットがあるのではないか。FA権取得後のMLB挑戦を目指す上原だが、その時には既に33歳。先発1本槍ではきついだろう。クローザーもできれば選択肢が広がる。北京五輪での金メダルを目指す星野仙一日本代表監督は「クローザー上原」に興味を示しているとも言われる。金メダルを手にしてのMLB挑戦――悪くない選択だと思うのだが……。

<この原稿は07年5月28日号「週刊大衆」に掲載されています>

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