25日、いよいよ日本女子ソフトボールリーグ2部リーグが開幕する。伊予銀行女子ソフトボール部が目指すのはもちろん、優勝および1部昇格だ。そのためにオフシーズンは厳しいトレーニングを積んできた。
 果たして、開幕を前に今、チームの状態はどうなのか。昨季を振り返りながら、リーグ戦に向けての意気込みを、川野真代キャプテンと中田麻樹副キャプテンに訊いた。
(写真:開幕に向けて練習に励む伊予銀行女子ソフトボール部)

 昨季は8勝9敗、9位に甘んじた伊予銀行女子ソフトボール部。その要因のひとつには、開幕前にキャプテンとエースがケガで戦線離脱したことが挙げられる。一昨年12月の合宿中にヒザの前十字靭帯を断裂し、手術をした川野選手はシーズンをほとんどリハビリに費やした。キャプテンに就任して1年目ということもあり、ケガをしたことへの責任感を感じずにはいられなかったという。

「キャプテンの私がケガをしたことで、チームの士気を高めることができませんでした。また、私に続いてエースの坂田那己子も前十字靭帯を断裂し、ギリギリの人数でやらなければならなくなった。そのことで、チームに余裕がなくなってしまったんだと思います」

 以前も同じ部分を痛めていた川野選手は、「これで自分の選手生命は終わった」とさえ思ったという。しかし、懸命なリハビリの結果、昨季は終盤から徐々に試合に出場し始め、今ではほぼ完治状態にある。エースの坂田選手の調子もよく、現在チームにはケガ人はいない。そして、「例年以上にコミュニケーションがうまくとれていて、まとまりがある。元気があって、とても雰囲気がいい」と川野選手はチームづくりにも自信をのぞかせた。

(写真:チームを盛り上げる新人の藤原捕手<左>と指揮官・大國監督)
 その一番の要因は今春チームに加わった4人の新人選手たちだ。今年は皆、元気いっぱいだ。なかでも早くもレギュラーの座をつかみつつあるキャッチャーの藤原未来には頼もしささえ感じているようだ。

「藤原は先輩にも遠慮なくズバズバ言える子なんです。普段の練習はもちろん、試合でも声を出してくれるので、バックで守っている私たちの士気も高まります。キャッチャーは守りで一番の要。そのポジションに藤原が入ってきたのは、チームにとって大きいと思います」(川野選手)

 昨季も新人選手の活躍が目立った。開幕から「5番・セカンド」に抜擢された中森菜摘選手は期待に応え、チームトップの打率をマーク。さらに外山裕美子選手は、「後半戦、投手では一番頑張っていた」と大國香奈子監督。二人とも、藤原選手のようにガッツを前面に出すタイプではないものの、試合では全く気後れすることなく、堂々としたプレーを披露した。藤原選手ら、今季の新人選手が自分を出せているのも、2年目の選手の存在が大きいようだ。

 こうしたチームの雰囲気のよさは、試合にも好影響を与えている。昨季までは点差が開くと、チームに諦めムードが漂っていたこともあったが、今季は違う。リードを奪われても、「みんなで諦めずに点を取っていこう」という気持ちが自然と湧いてくる。練習試合、すだちカップ、トヨタカップを通してチームの一体感はますます強まっている。

 1番打者がもたらす“粘り強さ”

「技術的には決して他チームに劣っていない」――昨年6月、前半戦を振り返った中田選手の言葉からはチームへの揺るぎない自信がみなぎっていた。そして、それは今も全く変わっていない。「自分たちは絶対に1部昇格できる」。もちろん、チーム全員がそう信じている。

 では、昨季は何が欠けていたのか。それは精神面での強さだと中田選手は言う。
「ここぞという時の粘り強さがなかった。もちろん、戦う気持ちを失ったことはありません。でも、一度リズムが崩れると、そこでズルズルといってしまったんです」

 今季、中田選手はチームの精神的支柱となり、自ら“粘り強さ”を発揮していくつもりだ。実は昨季まで4番に座っていた中田選手だが、ベテランの門屋美香元選手が現役を引退したことで、今季は1番を務めることになったのだ。

「4番と1番とでは役割が全く違います。これまではランナーを返すことが仕事でしたから、思いっきりのよさを大事にしてきました。でも1番バッターの最大の使命は出塁すること。だから内容はクリーンヒットでなくてもいいんです。四球でもなんでも……。とにかく粘り強さを大事にしたい」

 その中田選手を大國監督は“今季のキーマン”に指名した。
「1番の中田がどれだけ粘って出塁できるかで試合は変わってくるでしょうね。“絶対に出塁するぞ”という気迫を見せてもらいたいと思っています」

 昨季、チームに欠けていた“粘り強さ”を中田選手自らが先陣を切って実践することができるか。シーズンを戦ううえでの一つのポイントとなりそうだ。

「昨季は黒星スタートで、なかなかリズムに乗ることができなかった。今季は絶対に白星スタートでいい流れをつくりたい」と大國監督。開幕戦の相手はNECアクセステクニカ。昨季はエラー絡みの失点で1点差で負けた相手だ。雪辱を晴らし、優勝に向けて弾みをつけたいところだ。

 新生・伊予銀行女子ソフトボール部。今季はどんな戦いを見せてくれるのか。秋に朗報が届けられることを心待ちにしたい。


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