北京五輪まであと70日を切り、そろそろオーバーエイジ枠について考えなければならいない時期になりました。私は率直に言って、オーバーエイジ枠は使わないほうがいいと思います。確かに経験豊富なベテランが入ることによって、チームに安定感が出てくるというメリットはあります。しかし、この機会こそ若手にチャンスを与えたり、国際舞台での経験を積ませるべきでしょう。若手が国際舞台での経験を積むことは、ひいてはA代表の裾野の拡大につながります。もちろん、勝負にこだわらなければいけない部分もありますが、まずは、U-23代表の選手たちでどう戦うかを詰めていってほしいですね。

 反町康治監督はオーバーエイジ枠の使用について、「何人呼ぶのか、あるいは(OA枠を)使わないかは6月中に決めたい」と語っていました。では、反町監督はオーバーエイジ枠を使用するのでしょうか。結論から述べると、このオーバーエイジ枠を有効に使ってくるでしょう。ここのところU-23代表はあまり結果が出ていません。ですから、五輪で上位を目指すためには枠を活用せざるを得ないと思います。

 オーバーエイジ枠で召集されそうな選手は誰か。今の段階ではまだ、それは読めません。ただ選ばれるとすれば、ディフェンスラインの軸に入って、周りのメンバーに安心感を与えられる選手になるのではないでしょうか。

 たとえば召集候補の筆頭に上がっているDF田中マルクス闘莉王(浦和)。攻撃もできるので攻守両面での活躍が期待できます。ただ、闘莉王がU-23日本代表にフィットするには時間がかかかると思います。ただでさえ6月はW杯3次予選が行われ、A代表に拘束される闘莉王の合流は早くて7月になります。また、闘莉王の特殊なプレースタイルを今のU-23代表にどう融合させていくかも、ひとつの課題になるでしょう。

 オーバーエイジ枠の選手たちに期待することは、与えられたポジションの仕事を確実にこなすことです。DFであればその選手を中心に、組織のコントロール、時間のコントロールができ、精神・メンタル的な安定を与えられること。そういった選手が最終的には選ばれるのではないでしょうか。

 今回、フランスで行われていたトゥーロン国際大会を見ていて、日本が弱いと感じた部分はディフェンスです。90分間の中で最後の詰めがまだまだだなと感じました。というのも、チリ戦で1点を取られた後のDFラインのバランスが悪かった。相手の技術、チーム戦術に対処する経験が足りないと感じましたね。もちろんまだ、23歳以下の選手たちですから、経験が少ないのは仕方ありません。

 ただ、相手選手への対応能力や組織でボールを奪うというチームの完成度を高めていかないと、北京五輪本番での上位進出は難しいでしょう。今のU-23代表のディフェンスを見ているとボールを持っている選手に対して、2人、3人と連動して奪いにいけていません。これをグループの戦術としてできるようになれば、もっと守備は良くなるはずです。

<W杯3次予選のテーマはチャレンジ>

 いよいよW杯3次予選が目前に迫ってきました。28日に発表されたメンバーではDF中澤佑二と闘莉王が揃い踏みで代表に選ばれましたよね。海外組も3人選ばれました。このメンバーをベースに今後、2010年の本大会に向けてしのぎを削っていくことになるでしょう。

 新生岡田ジャパンを見て感じたのは、守備意識の高さです。岡田監督のいう「オレ流」とは、まず守備に重きを置いて、しっかり戦うサッカー。24日のキリンカップ、対コートジボワール戦でそれがはっきりと見えました。

 では、今後のW杯4連戦はどのような戦いをすべきでしょうか。前述のようにしっかりとディフェンスが守った上で、相手に応じて巻誠一郎の高さをいかしたり、または玉田圭司、大久保嘉人のスピードをいかすといった選手の使い分けが求められます。そのためにもパスを供給するMFの働きが鍵になってくるでしょう。

 加えてゴール前での攻撃に幅を持たせるには、セットプレーが重要になってきます。そういった意味では岡田ジャパン初召集の中村のFKやCKは大きな武器になるでしょう。ただ、ケガをしているというのは少々気にかかります。先日のキリンカップ、対パラグアイ戦ではフル出場を果たしていましたが、彼の状況次第では日本は戦い方を変えなければならないかもしれません。

 最後にもうひとつ、日本代表に望みたいことがあります。それは攻撃の選手には個々の能力を伸ばす場としてどんどんチャレンジしてほしいということです。W杯予選でできないことをW杯の本番でいきなり出せるわけはありません。大きな大会でこそ自分の実力を試してほしいと思います。FWは失敗しても直接失点につながるわけではないですからね。

 これから先の戦いで選手に求められることは、当然ながらFWは戦う気持ちを出すこと、そしてDFは得点を与えないことです。これから厳しい戦いが続きますが、日本代表には気持ちを強くもって頑張ってほしいですね。

● 大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>
 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://business2.plala.or.jp/kheights/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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