4期連続優勝までマジック1。野手は昨年の優勝メンバーがほとんど残ったとはいえ、投手陣は松尾晃雅(レッドソックス傘下)、天野浩一(BCリーグ・福井兼任コーチ)が抜け、今年の開幕はこれまでになく不安でした。計算できたのは
塚本浩二だけ。ここまでは新人や2年目以降の選手を含め、全員がよく頑張ってくれました。
中でも4月から入団した
福田岳洋は先発要員して今後も期待が持てそうです。13日の徳島戦では6度目の先発で2安打完封勝利を収めました。持ち球はまっすぐ、スライダー、カーブ、フォーク。そのうちストレートは140キロ台が出ますし、フォークが縦に鋭く落ちます。このコンビネーションが彼の有効な武器です。
ただし、欠点は制球難。その原因はフォームにありました。投球動作にムダがあり、後ろに引いた手が背中より後ろに入り込んでしまっていたのです。後ろの動作(テイクバック)が大きく、前の動作(リリース)が小さい。これではリリースポイントは安定しません。背負い投げのようになっているため、肩・ヒジにもかなりの負担がかかります。
後ろを小さく、前を大きく。これが理想の投球フォームです。そのためにはどうすればよいか。あれこれ試行錯誤をしていると、勝呂壽統コーチからおもしろいアドバイスをいただきました。
「手こきボードをこぐイメージで腕を使ったらどうかな?」
ボートをこぐ時にはヒジを曲げ、腕をしっかり引き付けます。その動作がテイクバックに入る時と同じというわけです。ヒジを引き、そこから腕を引き上げていく。これによりムダなくコンパクトにトップの位置をつくることができます。
それから彼は夜間練習も含め、投げ込みを繰り返し、フォーム改造に取り組んでいます。まだ完成形とはいえませんが、だいぶピッチャーらしい投球フォームになってきました。
前期は投手陣がうまく機能したものの、これから夏場の戦いを考えると、まだまだ不安は尽きません。現在、チーム最多の18試合に登板している抑えの
高尾健太をはじめ、リリーフ陣にややバテがきています。フォームを崩しかけている選手もいますから、後期は前期のようにうまくいかないでしょう。コーチとしての能力が問われる時期がやってきました。
崩れかけた調子をいかに戻すか。正しい方向付けをしないと、選手たちは好不調を行ったり来たりでなかなか安定した成績を残すことができません。もちろんいい状態をキープするには選手ひとりひとりの自覚も求められます。いくらこちらがチェックポイントを伝えても、それを自分で気づき、考えてくれなければ、行動に移せません。
今年から寮生活になり、選手たちは昼夜問わず行動をともにしています。野球と四六時中、向き合わなければ上のレベルに到達することは不可能です。ぜひ、今の環境を最大限生かし、どんどん選手同士で野球の話をしてほしいと思っています。
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加藤博人(かとう・ひろと)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
1969年4月29日、千葉県出身。87年ドラフト外で八千代松陰高からヤクルトに入団。2年目の89年に6勝9敗、防御率2.83(リーグ8位)の成績を挙げて一軍に定着。故障で戦列を離れた年もあったが、貴重な中継ぎサウスポーとして95年、97年のチームの日本一に貢献した。分かっていても打てないと評された大きく曲がり落ちるカーブが武器。01年に近鉄に移籍後、02年には台湾でもプレーした。日本球界での通算成績は27勝38敗、防御率3.85。05年にスタートした四国アイランドリーグで香川のコーチに就任。現役時代に当時の野村克也監督から学んだ“野村ノート”や自らの故障経験を活かした丁寧な指導で高い評価を受けている。
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