セ・リーグもパ・リーグもペナントレースは風雲急を告げてきた。
 セ・リーグの優勝は一時は「阪神で決まり」と思われていたが、巨人が猛追し、優勝の行方は混沌としてきた。

 クライマックスシリーズの出場権がかかった3位争いとなると中日、広島、東京ヤクルトが2ゲーム以内(9月7日現在)でひしめき合う大混戦。どこも決め手を欠くだけに最後までもつれそうだ。
 パ・リーグに目を転じると、2位に6ゲーム差をつけた埼玉西武は何とか逃げ切りそうだが、2位オリックス、3位千葉ロッテ、4位福岡ソフトバンク、5位北海道日本ハムの4球団は猫の目のように順位が入れ替わる。こちらも目が離せない。

 出だしは悪かったが中盤以降、ゆっくりと順位を上げてきたのが2位の巨人とオリックス。この2球団には共通点がある。重量打線だ。
 重量打線ゆえ火がつくのには時間がかかるが、一度火がつくと手が付けられない。技を力でねじ伏せているような印象だ。
 メジャーリーグの影響を受け、一時プロ野球には「スモールベースボール」が流行した。機動力を重視した効率のいい野球を目指すこと自体、間違いではない。
 しかし、それだけでは勝てない。はからずも、それを証明したのが北京五輪の星野ジャパンではなかったか。

 星野ジャパンは表彰台に上がった上位3カ国(韓国、キューバ、米国)に対し0勝5敗だった。投手力や守備力、機動力ではほぼ互角だった。
 大きな差があったのはパワーだ。それを実感したからこそ星野仙一監督は「パワーで押さえ込むものが備わらなければ国際試合では勝てない」と語ったのだろう。
 近年、この国には「日本には日本のやり方がある」と言ってパワー野球を軽視する指揮官が増えていた。だが軽量級を揃えただけでは勝てない。ここ一番で頼りになるのは、やはりハードパンチャーである。

<この原稿は2008年9月29日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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