10月7日まで行われた「チャレンジ! おおいた国体」で愛媛県勢は総合42位に終わった。2017年に実施予定の愛媛国体まで残り9年。スポーツをめぐる環境整備と、普及、育成、強化の取り組みがこれまで以上に求められている。愛媛県体育協会会長も務めるダイキ株式会社・大亀孝裕会長に愛媛スポーツの現状と課題を訊いた。
(写真:大分国体成功の立役者、大分陸上競技協会の濱本理事長(右)と)
――大分国体では男女総合の天皇杯順位が42位。昨年の成績を上回ることができませんでした。その原因は?
大亀: 今回はサッカー、ハンドボール、ソフトボールなどのチーム球技が出場できず、得点を稼げませんでした。また、これまで好成績を収めていたボート、柔道などで思ったほど成績が伸びなかった。ただ、バスケットボール少年女子がベスト4、フェンシング少年女子が準優勝、馬術成年男子が3位に入るなど、これまでとは異なる競技での健闘が光った大会でした。

――愛媛県は「スポーツ立県」を目指していますが、現状では全国大会での成績が伴っているとは言えません。
大亀: やはり競技力を向上させていくためには、優秀な指導者と充実した練習環境が不可欠です。愛媛にも可能性のある子どもたちがたくさんいますが、指導者や環境の問題で中学や高校から他県に流出してしまうケースが多い。施設に関しては行政との兼ね合いもありますが、指導者の確保は我々ももっと努力していかなくてはいけないと思っています。

――大分国体を現地で視察されて、参考になる点はありましたか?
大亀: 大分は豊後水道を隔てた土地ということもあり、愛媛とのゆかりは深い。愛媛出身者も多く暮らしています。それはスポーツ関係者も例外ではありません。たとえば大分県の陸上競技協会の理事長をされている濱本俊夫さんは八幡浜市出身。日本文理大の陸上部の監督をされている福山一夫さんは内子町出身です。福山さんは大分県の体協でも長年、地域スポーツの活性化に尽力されてきました。
 福山さんは県内であまり普及していない競技に力を入れ、優秀な指導者を招きました。たとえばカヌー。20年前に島根県より堀田育子監督を呼び、若い高校生の指導をお願いしました。地道な育成は、今年、カヌー競技での総合優勝という実を結びました。
 従来、大分も国体の順位では愛媛と似たような下位にいました。それが今回、天皇杯を獲得できたのは、マイナーだった競技に力を入れ、優秀な指導者を招いたからです。これは愛媛も大いに見習うべきところでしょう。

――今後、具体的に取り組んでいきたい施策は?
大亀: 現在、「トップリーダーサミット」と称し、各競技の指導者を一同に集めた意見交換会を実施しています。また県教委では指導主事を4人から6人に増やして、現状と課題をあげてもらっています。指導主事は将来的には10人にして、より情報交換を密にしていくと聞いています。県も競技力向上対策基本計画を策定していますが、行政、地域、各競技団体がコミュニケーションをとりながら、一丸となって育成、強化を図らなくてはいけません。
 私は国体が単なる一時的な催し物であってはならないと考えます。国体をきっかけに、地域にそのスポーツが根付いてほしい。五輪期間中の朝日新聞に「過疎の町が今、五輪で燃える」という投書がありました。舞台は島根県奥出雲町。人口約16,000人の町から女子ホッケー日本代表選手が2名誕生し、町中が活気にあふれているという内容でした。なぜ、小さな町から2人も代表選手を送り出すことができたのか。それは1982年の国体でホッケー会場になったことをきっかけに、奥出雲町が“ホッケーの町”になったからです。現在、町内にはナイター施設付きのホッケー場が完備され、子どもたちがホッケーに親しむ光景が見られると新聞には書かれてありました。
 これこそが理想的な国体のあり方でしょう。9年後の愛媛国体でも県内各地で競技が実施される予定ですが、開催を契機にふるさとのスポーツとして地域活性化につなげてほしいものです。それが愛媛のスポーツの発展にもつながっていくはずですから。

――かつての大分県が「一村一品運動」を起こしたように、愛媛県は「一村一スポーツ運動」を立ち上げるとよいかもしれません。
大亀: そうですね。「一町一技運動」とでも言えばいいでしょうか。特に南予地方は過疎化が進んでいますが、かつては山泉和子さん(宇和島市出身)、小野誠治さん(西予市出身)と世界で活躍する卓球選手を輩出した土地柄です。ならば卓球をふるさとスポーツとして育ててほしい。

――ふるさとスポーツ振興のためには、まずジュニア世代への普及、育成が不可欠ですね。
大亀: もちろんです。今度の愛媛国体で主力となるのは、今の小学生や中学生。我々は12年前から「ひめっこ募金」と称したジュニア育成のための募金活動を実施しています。このような早期の取り組みは全国でも初めてでした。当初の目標金額は6億円。ところが現在、おかげさまで9億円が集まりました。この資金を有効に活用していけば、大きな成果が生まれると期待しています。
 先程もお話しましたが、今の愛媛には彼らジュニア世代が他県の有力校へと流れてしまう現状があります。地元でも高いレベルで競技を続けられるよう、指導者の確保はもとより、今後は選手たちの就職口などを各企業がサポートしていく体制づくりも大切になるでしょう。

――その点、ダイキ株式会社はビーチバレーやボート、弓道といったスポーツを支援してきました。「大亀スポーツ振興財団」も立ち上げて、県出身の優秀なアスリートや指導者の表彰も行っています。
大亀: 今後はそういったスポーツ支援の輪をより広げていきたいものです。学校単位や競技単位、地域単位でバラバラになっている後援会組織をもっと包括的なものにしたい。そうすれば、資金が不足している競技をサポートすることももっと可能になるでしょう。愛媛のスポーツを官民一体となって盛り上げていけるよう、これからも尽力していくつもりです。
(写真:3月に開催された大亀財団スポーツ賞表彰式)

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