ここ数年、再びゴルフへの注目度が高まっている。男子では全英オープンに出場した石川遼、女子では上田桃子、宮里藍、横峯さくらなど、人気を牽引するのは10〜20代前半の若きゴルファーたちだ。そんな未来のスターを育成するため、この2月、ダイキジュニアゴルフスクールが愛媛に誕生した。現在、小学校2年生から中学校3年生までの男女19人が連日、レッスンに励んでいる。
 スクールの発案者はダイキ株式会社・大亀孝裕会長だ。愛媛はアマチュアゴルフの大会で上位に入賞するなど、その実力は高いものがある。しかし、レベルを下支えする若い選手たちの育成環境は恵まれているとは言いがたい。県内の高校でゴルフ部があるのは数校で、有力なジュニア選手は愛媛を離れて進学するケースが目立つ。

 2017年の愛媛国体での優勝を目指し、その時に主力となるような子どもたちを育てよう――構想が具体化したのは、昨年の春からだ。ちょうどビーチバレー佐伯美香選手が昨季限りで第一線を退いたこともあり、松山市内の室内練習場をゴルフ仕様に改造し、スクールの拠点にした。

 「もともとビーチバレーの練習場だったこともあり、立派な施設になりました。打席は中央にネットを張れば両面で18カ所から打つことができます。ネットを外して片面だけで使えば、20ヤードほど距離も確保できるので打った球筋の確認も可能です。室内の練習場では日本有数ではないでしょうか」
 自身もシングルの腕前で、スクールのゼネラルマネージャー(GM)を務める宮崎順氏(株式会社ダイキアクシス監査役)は、そう胸を張る。
(写真:施設内にはパット、バンカーの練習打席もある)

 練習は基本的に平日が16時〜20時まで、土日は9時〜12時まで。だが、学校や学習塾などの関係で、遅れてくる生徒もいれば早退する生徒もいる。「その点は子どもたちの自主性に任せています。何より練習は短期間で集中してやることが大切。ダラダラ何百球を打っても上達しませんから」。こう語る宮崎GMは練習場を「神聖な場所」と位置づけ、生徒以外の利用を禁じている。週1ペースでコースに出かけるというGM自身も、自分のための練習は絶対にしない。子どもたちのレッスンを妨げない最大限の配慮がなされているのだ。

 入校に際しては面接を行い、子ども自身のヤル気を重視している。「ゴルフ人気の影響で、親が熱心な家庭もある。でも、本人にその気がなければ続かない。本当にゴルフで国体に出たい、プロゴルファーになりたいという夢があれば、初心者でも歓迎しています」(宮崎GM)。また、有望選手の流出を防ぐため、県内の高校に進学することも入校条件のひとつとなっている。

 それだけにスクールへやってくる生徒たちの意欲は高い。入校から1日も休むことなく、練習場に足を運ぶ子どももいる。ゴルフ未経験ながら半年間でみるみる力をつけ、大会に出られるレベルに達した女の子もいる。「土日は親と一緒にゴルフ場でラウンドしたり、個人参加で大会に出る生徒もいます。こちらが1から10まで言わなくても、それぞれが独自に取り組んでくれる」。開設半年で手探りの部分も多いスクールだが、宮崎GMは手ごたえを感じている。

 いよいよ8月にはスクールとして初の大会となる愛媛県小中学生ゴルフ大会(5日、松山ゴルフ倶楽部)、小中高校生ゴルフ大会(20日、高原ゴルフクラブ)へ出場が決定した。50〜100名が参加する大会でスクール生の上位進出が期待される。夏休みで平日も日中に練習ができるため、大会に備えたコース練習も計画中だ。

 今後の課題はさらに生徒を増やすこと。当面は30名以上の子どもたちを集めることを目標にしている。「このスクールは初心者から、もう何度も大会を経験している生徒までレベルの差が大きい。人数を増やすことで同じ力の選手が何人か出てくれば、競い合って更に上達できる」。目的である国体選手の育成のためにも、まずはゴルフに取り組む子どもたちを増やさなければ、ダイヤモンドの原石は出てこない。将来的にはこのスクールが愛媛ゴルフの普及、育成の拠点となることを目指す。
(写真:スイングの正しい軌道を身につけるための練習器具)

「プロゴルファーになる」
「賞金女王を目指す」
「石川遼に勝つ!」
 練習場には生徒たちの夢が大きく張り出されている。ダイキジュニアゴルフスクールから日本、そして世界の舞台へ――。その日を夢見て、今日も子どもたちはボールを打ち続ける。

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(石田洋之)
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