<椅子に座ります。(バイオラバーを使用しない状況で)片足ずつ順番にひざをまっすぐ上にあげてみます。バイオラバーで足のつけ根をこすります。バイオラバーでおしりのほっぺをこすります。(写真:図1)
→もう一度片足ずつあげてみると、とっても楽に、まっすぐにあがります!>
 この夏、バイオラバーを使った体操が誕生した。その名も「バイオラバーヘルシーエクササイズ」。使用する道具は1辺14cmの正三角形のバイオラバー1枚のみで、手軽にいつでもどこでもできる点が好評を博している。

 高い赤外線を発し、血流が良くなる効果が実証されているバイオラバーは、前回、前々回で取り上げた水着のみならず、さまざまなスポーツで活用されている。あるサッカーJ1のクラブでは、ウォーミングアップ時にバイオラバーのマットを敷いてストレッチを実施した。すると、通常の場所で行うよりも筋肉の動きが良くなり、ストレッチに要する時間が約3分の1に短縮された。またバイオラバー素材を使ったトレーニングウェアを着て、減量に役立てているボクサーもいる。

 このような効果に着目したのが、医療現場だ。骨格のゆがみにより、さまざまな障害が生じている患者や、内臓疾患が病気を引き起こしている患者にバイオラバーを身につけてもらうと、症状が改善した。
「痛みが出たり、内臓に疾患を抱える可能性は誰にでもある。症状が出る前に、最低限これだけはやっておけば、というものを作れないかという話になりました」
バイオラバーを製造する山本化学工業の山本富造社長は「バイオラバーヘルシーエクササイズ」が生まれた経緯をこう明かす。試行錯誤の結果、10種類のエクササイズが編み出された。

 たとえば、こんな内容だ。
<2人1組になってみましょう。背中(肩甲骨)に両手を当ててみて下さい。どちらか出っ張っていませんか? 手首の甲側をこすってみましょう。(写真:図7)
→肩甲骨の出っ張りがなくなり、首や背中が楽になっているはず!>

<お腹全体をバイオラバーでなでましょう。(写真:図8)
→冷えに、内臓のために、毎日続けましょう!>

<耳の後ろ、あごラインをバイオラバーでなでましょう。
→インフルエンザ対策に! 扁桃腺を守ってあげましょう!>

<頭のてっぺんをなでましょう。ついでに頭の前頭部、後頭部もなでてみましょう(写真:図10)
……

 どれも決して難しいものではない。ひととおりやってみても要する時間は約10分。これだけ短い時間のエクササイズにもかかわらず、効果はてきめんだ。
「たとえば、足のつけ根をバイオラバーでこすると、エクササイズの前に足を上げた時と、やった後で足を上げた時では全然、感覚が変わる。今はいろんな健康グッズが出ているが、効果が良く分からないというものも多い。やはり人間、体感、実感が伴わないものは基本的にダメ。体感できると、続けようという気になりますよね」

 山本社長によると、このエクササイズを10日間続けると、低体温で悩んでいた人も血流が改善し、最適とされる36.5℃に近づいてくるという。おなか全体をこする内容も含まれているため、臓器の働きも良くなる。
「臓器の働きが良くなると基礎代謝が上がる。基礎代謝が上がれば、同じものを食べても血糖値が上がらない。一般的に代謝が落ちて、消費されずに体内に残ったものが多くなるから血糖値が上がるわけですから、このエクササイズは糖尿病の予防にもつながると思っています」
 便宜上、エクササイズには順番があるが、決してその通りにやる必要はない。10種類をすべて行う必要もない。気になるところがあれば、そこだけを重点的に行ってもOKだ。

 何より、このエクササイズには病気の患者さんでも、これまでの治療を継続しながら行える利点がある。
「バイオラバーは外部接触のみですから、薬のように併せて飲んで副作用を起こす心配がない。普通、新しい方法を試すとなると、これまでの治療は中断しなくてはいけない。しかし、このエクササイズなら“引き算”をしなくていい。“足し算”でプラスアルファとして行えるんです」
 病気の人が元気になり、元気な人も元気になれる――それがバイオラバーヘルシーエクササイズの特徴なのだ。

「最初はこのエクササイズを老人ホームや病院などで広めていければと考えていました。ところが実際には我々の予想を超える広がりがあったんです」
 実際にエクササイズを関西学院大学の学生たちの協力の下、兵庫県宝塚市で試したところ、参加者からある共通した感想が寄せられた。
「手軽でええけど、これだけのために出かけるのはたいそうや。買い物したついでにできるような場所があるとええな」
 人間、年齢を重ねるにしたがって、どうしても外出がおっくうになる。とはいえ、買い物は生活する上で、ほぼ毎日欠かせない行動だ。ならば、買い物に出かけた際に、エクササイズも合わせてできれば、無理せず続けることができる。意外だったが、的を射た声だった。

 そこで、この10月より宝塚市内のあるショッピングセンター内で学生ボランティアの指導の下、バイオラバーを貸し出してエクササイズを行うことになった。これは、今後の展開によっては一石三鳥とも言える試みである。まずエクササイズにより、買い物客がより健康的になる。サポートする学生にとっても、貴重な社会経験の場が生まれる。場所を提供するショッピングセンターにもメリットは少なくない。
(写真:エクササイズで使用するバイオラバー)

 たとえば、店員は「そういえば、奥さん、足痛い言うてたね」とか、「御主人、体調悪い言うてたね」といった会話をきっかけに、エクササイズを勧めることができる。それで実際に調子がよくなれば、「この間、勧めてくれた体操を始めてから体調ええわ」といった会話が店内で弾むだろう。

 素材メーカーとショッピングセンター、そして大学、一見、何の交わりもないようなところが、このエクササイズでつながろうとしている。そのシナジーにより、お客さんは喜び、お店はにぎわう。学生と年配者との世代間コミュニケーションもできる。最終的には地域全体が元気になる。

 先の政権交代に伴い、日本のスポーツ政策も変化が予想される。民主党はその政策集の中で、<地域密着の拠点づくり>を掲げており、「老若男女、障がいの有無にかかわらず、誰もがスポーツに取り組めるよう、生涯スポーツの拠点として、地域に根ざしたクラブスポーツの確立や、学校施設等の複合利用の推進が不可欠です」とうたっている。このような地域に根ざしたショッピングセンターとスポーツのコラボレーションは、新政権が目指す方向性を先取りするものと捉えることもできる。

 人々の健康増進と地域活性化――1辺14センチの小さなバイオラバーは、これからさらに大きな役割を担うに違いない。


 山本化学工業株式会社