11月27日、女子ソフトボール界に衝撃が走った。経営悪化の影響でレオパレス21が女子ソフトボール部の廃部を発表したのだ。レオパレス21は今シーズン、1部リーグで3位、昨年の北京五輪にも2人の選手を派遣するなど強豪チームの一角を担っていた。自らも現役時代に廃部を経験している大國香奈子監督もショックを隠し切れない。しかし、この廃部で2部降格が決定していた伊予銀行が来シーズンも1部に残留することとなったこともまた事実だ。「青天の霹靂」ともいえるこの事態に、果たしてチームは今、どのような状況なのか。

「レオパレス21の選手のことを考えると、今回の1部残留は決して素直に喜べるものではありません。それに最下位のチームは降格するのがルール。それなのに、自分たちが来シーズンも1部でプレーしていいのかどうか……」と大國監督は複雑な心境を語った。これは川野真代キャプテンをはじめ、ベテラン選手も同様の反応を示していたという。「最下位だった自分たちが1部で戦うことができるのか……」と不安の方が大きかったようだ。

 しかし、泣いても笑っても現実は変わらない。来シーズンも伊予銀行は1部に残る。はっきりしているのはそれだけだ。だからこそ大國監督は言う。
「理由は何にしろ、1部でやれるのは自分たちにとってはチャンスでもある。だからこそ、絶対にムダにはできないんです。とにかくこのオフ、どう過ごすのかが重要。浮かれている暇など全くありません」

 最下位決定後、大國監督は個人面談を行なった。当時は2部に降格することとなっていたが、大國監督は目標を来シーズンの1部昇格に置いてはいなかった。1部昇格は絶対条件。指揮官の視線は2年後、1部でどう戦うかに注がれていたのだ。選手にも同じモチベーションを求めた。そこまでの覚悟がなければ、たとえ再び1部に昇格しても、また同じことを繰り返すことが大國監督にははっきりと見えていたのだろう。

 しかし、1部残留が決定し、まず一つ目の条件はクリアした。ではこのオフ、どのような取り組みが必要になるのか。
「今シーズンの戦いを通して、選手たちがそれぞれ感じていることがあるはずです。そうした気持ちが取り組む態度にも出てくると思います。いえ、そうでなければいけません。今シーズン、何を感じたのか、このことが選手の成長を促すからです。もしかしたら若手の中には単に『1部に残れる』と楽観的な考えをしている選手もいるかもしれませんが、そんな甘い考えでは通用しないことは明らかです。選手一人ひとりが自分が何をしなければいけないのかを考え、自発的に行動していってもらいたいですね」

 今シーズンを通して大國監督は攻撃陣については、1部でも十分に戦えると手応えを感じている。一方、大きな課題を残したのがピッチャー陣だった。特に前節は貴重な左の清水美聡投手が故障で戦線離脱したことが大きく響き、右のエース坂田那己子投手以外は、新人の末次夏弥投手や山田莉恵投手に頼らざるを得なかった。2部さえも社会人のマウンド経験のない2人に、勝敗を求めることはあまりにも酷だ。指揮官もこれには頭を悩ましたことだろう。

 しかしプラスにとれば、今シーズンの経験は末次投手と山田投手にとっては来シーズンへの大きな糧となるに違いない。そして将来エースを担うであろう2人がライバル心を燃やし、刺激し合うことで切磋琢磨していってほしい。大國監督はそう願っている。いずれにせよ、伊予銀行が1部で結果を残すには、2人の成長は絶対に欠かすことはできないのだ。

 今月20日からは1週間、行内のグラウンドで年末恒例の合宿が行なわれる。来春、入行が内定しているピッチャーと外野手の2名の高校生を含めた今合宿では、体力づくりがメインテーマだ。
「今シーズン、リーグ戦のほかに国体などもあって、5週間連続で試合という時期があったんです。その時は、さすがに選手も疲労を隠しきれませんでした。しかし、来年も世界選手権があるために前節は4週連続という過密スケジュールが組まれていると聞いています。ですから、早めに体づくりを行い、開幕に照準を合わせていきたいと思っています」

 今シーズンの目標は6勝をボーダーラインとする「残留」だった伊予銀行。だが、それは1部の未経験者が多く、翌年につなげたいという意向があったからこそのもの。来季は新人選手以外は全員、1部を経験していることになる。そのため、中間順位を狙っていくつもりだ。

 理由はどうであれ、伊予銀行が来シーズンも1部で戦うことが決定した。せっかくもらったチャンスをみすみす逃す手はない。勝負はこのオフから始まっている。


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