愛媛県体育協会などが主催する「新春えひめスポーツのつどい2010」が3日、松山市内のホテルで開かれた。集まったのはボートの武田大作選手やダイキ弓道部員、ビーチバレーの佐伯美香さんなど、県内のアスリートやスポーツ関係者など約230名。ゲストには昨年のWBCで日本代表投手コーチとして侍ジャパンの世界一に貢献した山田久志氏も登場し、会を盛り上げた。出席者はお互いの親睦を深めつつ、新たな年のさらなる飛躍を誓っていた。
(写真:各競技のトップクラスの選手たちが多数出席した)
 この「新春のつどい」が開催されるのは、今年で5回目。スポーツ関係者が一同に会し、2017年のえひめ国体に向けて機運を高めようと2006年から毎年1月3日に行われている。会の冒頭で挨拶に立った県体育協会・大亀孝裕会長は「寅年やスポーツ愛する人が好き」と一句を披露。7年後に迫った国体への多方面の取り組みを発表した。えひめ国体では県内全市町で競技が実施される予定で、各開催自治体の盛り上がりが成功のカギを握る。県体協では、国体をきっかけに各競技が地域のスポーツとして定着することを目指しており、このためには地域の体協と一層の連携が必要だ。そこで昨年10月には連絡協議会を立ち上げ、定期的な意見交換を開始している。大亀会長は挨拶の中で、「地域の体協をいかに立ちあげていくか。各競技団体に問題はないのか。行政に問題はないのか。協議をしていかなくてはならない」と、全県をあげた議論の重要性を訴えた。

 愛媛県は昨年の「トキめき新潟国体」において、天皇杯(男女総合)順位は36位だった。国体成功には、県勢の活躍は欠かせない。大亀会長は「成年男女の成績向上が問題」と指摘しているが、昨今の経済情勢の中、県内の社会人企業スポーツは縮小の一途をたどっている。そこで求められるのが成年に分類される大学生の育成、強化だ。県体協では既に県内の各大学との提携を進めており、「ジュニアの高校までのように各種目を競合させるのではなく、各大学で担当種目を分け、持ち味を生かせるよう年明け早々から動きたい」と会長がプランを示した。
(写真:「今年も先頭に立って、スポーツの育成、強化にご協力を」と出席者にお願いする大亀会長)

 来賓紹介、祝電披露の後、登場したのが今回のゲスト、山田久志氏。山田氏は愛媛県内で名球会のチャリティーゴルフを何度も開催しており、その縁もあって「栄光に近道なし」と題し、講演を行った。山田氏は現役生活で284勝をあげた理由を2つあげ、成功するために必要な心構えを説いた。そのひとつは「準備の大切さ」だ。これは山田氏が入団2年目に結果が出ない時、当時の阪急(現オリックス)・西本幸雄監督から直接言われた言葉だという。「チームメイトから“なんで力のない投手を投げさせるんだ”という声が聞こえてくる。これほど悔しいし、情けないことはない。頑張っているのはその日だけじゃないのか。登板前日、2日前、3日前と頑張っている姿があれば、チームメイトは“あれだけ頑張っているのに勝てないのはオレたちのせいだ”と認めてくれるはずだ」。指揮官の鋭い指摘は、まだ20歳過ぎだった山田氏の心にズシリと響くものだった。

  もうひとつは「油断、過信をしない」ことである。1971年の巨人との日本シリーズ第3戦、山田氏は9回に王貞治から逆転サヨナラ3ランを浴びた。その試合、山田氏は8回まで巨人打線をわずか2安打に封じていたため、「今日は勝てる」と試合後のヒーローインタビューの内容を考えていた。結果的には、その心のスキを突かれた形になり、自らの甘さを痛感したという。「王さんのサヨナラ3ランは自分のバックボーンになっている」。痛恨の一発をきっかけに、山田氏は球界を代表するサブマリン投手へと進化を遂げたのだ。
(写真:「僕の野球人生は7連敗からスタートした」と振り返る山田氏)

 また日本代表投手コーチとして参加したWBCの舞台裏も披露された。その中では、イチローが好きなラーメンを半分も食べられないほど重圧を感じていたエピソードが明かされた。山田氏はイチローについて「彼は常に体を動かして、バットを振っていないと不安なタイプ」と分析。「一緒に飲んでいても、大先輩を差し置いて時間になったら帰ってしまう(笑)。それほど野球が好きでたまらない」とユーモアも交えつつ、ストイックな姿勢がメジャーリーグでの好成績につながっていることを強調した。そんな一流選手の思考法や姿勢に参加者全員が感心しながら聞き入っていた。

 その後は出席した各アスリートが壇上に上がり、昨年以上の活躍を参加者に約束。女子プロテニスプレーヤーの伊達公子選手、女子プロゴルファーの横峯さくら選手、巨人の越智大祐投手(今治市出身)らのサイングッズがオークションやお楽しみ抽選会に出品され、会場が最後まで盛り上がった。
(写真:他にも山田氏がWBCで実際に着用したキャップなどがオークションにかけられた)

 今回の「新春のつどい」を振り返って、県体協の藤原恵事務局長は「各競技団体や関係者が年の初めに集まることで、国体への意識をアップさせるだけでなく、良き情報交換の場として機能している」と評価する。さらには選手たちにとっても「大勢の前で抱負を述べることで励みになるし、応援されていることを実感できる」と意義は大きいようだ。一方でアスリートの多くは年末年始も合宿や大会などの行事が入っており、参加を呼びかけても出席できるのは一部にとどまる。出身選手が帰省して参加しやすい年末年始に合わせてスケジュールを設定したものの、まだまだ人数が少ないのが実状だ。愛媛スポーツを代表するメンバーが集まる会だけに、国体開催を盛り上げるためにも「できれば広くいろんな方にきていただきたいが、その広報にも費用がかかる」(藤原事務局長)ことも課題となっている。

「より多くの県出身選手に来ていただいて、参加者を300人くらいに増やしたい。できれば、今回の山田氏のように特別ゲストも来ていただけるといいですね」
 藤原事務局長は来年以降の「新春のつどい」のさらなる盛り上がりを期待する。今年の国体は9月25日から千葉県で開催される。愛媛県勢の目標は昨年の36位から順位を上げ、30位前後にステップアップさせることだ。そのためには選手、競技団体はもちろん、行政や支援企業、地元住民のバックアップが不可欠。2010年代に突入し、国体の存在意義も問われる昨今、愛媛ならではの大会開催を目指し、新しい1年は既にスタートしている。


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(石田洋之)
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