昨季、62勝77敗5分と借金を15もつくって5位に終わった千葉ロッテが開幕ダッシュに成功した。
 4月15日現在、15勝5敗1分。2位の埼玉西武に3ゲーム差をつけて首位を走っている。

 昨季と比較して、最大の違いはチーム防御率である。昨季は4.23とリーグ5位の成績だった。ところが今季は3.51でリーグトップ。変われば変わるものだ。
 ロッテ投手陣が生まれ変わった理由のひとつとして今季から1軍投手兼バッテリーチーフコーチに就任した西本聖の手腕をあげたい。
 ボビー・バレンタイン政権下ではキャンプ中のブルペンでの投げ込みは原則20分までとされていた。これは投手の肩やヒジを保護するという観点からみれば正しいことだが、レベルの低いピッチャーは練習不足となり、一向に上達しない。
 そこで西本は投手陣に「キャンプ中に2000球から2500球は放ってほしい」という要望を出した。
 ただし、それを強制したわけではない。無理をすると逆効果になりかねないからだ。

 西本の指導を受けて今季、大化けしそうなのが4年目の大嶺祐太だ。4月7日の福岡ソフトバンク戦では今季初勝利を自身2度目の完封で飾った。
 大嶺といえば、いわゆる“ハンカチ世代”。早大に進んだ斎藤佑樹や、東北楽天で岩隈久志と並ぶエースに成長した田中将大らとともに甲子園を沸かせた。
「甲子園で観た限り、マー君や佑ちゃんよりも素質では大嶺のほうが上」
 西本は早くからそう語っていた。
「初めて観た時から右腕の使い方が素晴らしく、体格的にも恵まれていた」
 プロに入ってまもなくして、大嶺はワインドアップをやめた。コントロールを安定させるため、セットポジションで投げるようになったのだ。
 それを西本は再びワインドアップに戻した。これにより高校時代の豪快さが戻ってきた。
「30歳を過ぎてコントロールを重視して投げるのならいいが、まだ21歳でしょう。小さくまとまる必要はない。ワインドアップに変えてから本来持っていたスピードに戻りつつある。スピードボールがあればチェンジアップ、カープがより生きてくる。将来的にはもっと伸びますよ」

 今季からクローザーに転向した小林宏之は昨季、先発で4勝13敗と苦しんだ。
 西本には気になる点があった。
「真っすぐがシュート回転したり、抜けることがあった。原因はフォームにあった。そのひとつが(投げる時の)立ち方。左足が右足より前に出ていた。つまりクロスして投げていたんです」
 本人と相談してオープン気味に立つように指導してからシュート回転や抜けるボールが減ったという。
 現役時代、職人芸的なピッチングでドラフト外入団では最多の165勝をあげた西本。ピッチャーを見る目の確かさには恐れ入る。

<この原稿は2010年5月2日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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