二宮: 8月は昼は高校野球、夜はプロ野球と野球ファンにとっては一番楽しみな季節です。今回は雲海酒造の地元でもある宮崎県出身の黒木知宏さんをお招きしました。「そば雲海 黒麹」とともに熱く野球を語りたいと思っています。
 さて、九州男児の黒木さんだけにお酒が強い印象もありますが、実際のところはどうなんでしょう?
黒木: 家系的にはあまり強くはないほうですね。でも社会人になって飲み会に参加して、ある程度は鍛えられました(笑)。


二宮: ロッテに入ってからは?
黒木: さすがに昔みたいに毎晩のように先輩方に連れ回されることはなかったです。でも、誘われたら断れない面はありましたね。

 「昔の仲間と焼酎」が楽しみ

二宮: 当時のロッテといえば、先日、亡くなった伊良部秀輝さんもお酒が強いと有名でした。
黒木: 本当に強かったですよ。ただ、いくらお酒が入っても話題は野球のことばかり。本当に野球に対しては真面目な人なんだなと感じました。それだけに亡くなられたのが残念でなりません。

二宮: 確かに世間的には“悪童”のイメージがありましたが、私も野球のことになると目を輝かせて話していたのが印象に残っています。他に当時のロッテでお酒にまつわる思い出は?
黒木: どちらかと言うと、お酒で失敗したことを思い出しますね(苦笑)。若い時はちょっと羽目を外し過ぎたところもあって、小宮山(悟)さんから、よくたしなめられました。「大丈夫か? 野球選手である前に一社会人としてみられているんだから、節度は守らなきゃいけないぞ」と。

二宮: でも、お酒の場だからこそ、先輩後輩の距離が縮まって言いたいことを言い合えた面もあるでしょう。
黒木: はい。今になって振り返れば、同じ盃を交わして、仲間意識を高められたのは良かったと思います。やっぱりお酒を飲むことで出てくる本音もあるでしょうから。
 今でも年に何回か宮崎に帰った時には、地元の仲間やお世話になった方と焼酎のロックや水割りを片手に、のんびりワイワイとやるのが楽しみですね。最初はビールで入っても、3、4杯目からはだいたい焼酎になります。

二宮: 宮崎といえば、今、千葉ロッテで指揮を執る西村徳文監督も串間市の出身です。西村監督もお酒が強い。
黒木: 西村さんもそうですし、他球団でしたが池田親さん(親興、宮崎市出身)ともよく飲みました。宮崎の先輩後輩の関係とあって、お酒の飲み方だけでなくプロとしての心得を教えていただきました。

二宮: さて、その西村監督ですが、昨季は就任1年目でリーグ3位から日本一。西村監督とロッテをよく知る黒木さんの目に、その戦いぶりはどう映りましたか。
黒木: やはり生え抜きの強みが出た優勝だったと思います。何よりロッテ一筋で選手の能力や気持ちをコーチ時代からしっかり把握していましたよね。ボビー(・バレンタイン)から監督を引き継いだ時点で、このチームに今、何が必要なのかがはっきり見えていたんじゃないでしょうか。だから、監督になってすぐに選手の力をうまく引き出すことができたのだと思います。
 選手から見ても、西村さんは「厳しい方」というイメージが浸透していましたから、ベンチの中で常に緊張感があったはずです。見た目は温厚そうでも、選手たちは最後まで気が抜けなかったでしょう。それがいい方向に転がったと感じています。

二宮: コーチ陣も打撃コーチの金森栄治さん、2軍監督の高橋慶彦さんと個性派ぞろいですが、西村さんがスローガンに掲げる「和」の力でうまく束ねているように映ります。
黒木: コーチ陣もそうですし、選手起用にもカラーがはっきり出ていますね。荻野(貴司)、岡田(幸文)、伊志嶺(翔大)……。俊足の選手を使った機動力重視の野球に転換しています。これも長年、チームにいて、その強みと弱みをよく分かっていたからこそ打てた手でしょう。

二宮: 今季は西岡剛(ツインズ)や小林宏(阪神)の移籍で苦戦を強いられていますが、まだAクラス入りは充分狙えます。
黒木: 福岡ソフトバンクと北海道日本ハムが飛びぬけていて、なかなか落ちてくる要素がない。これから1位を目指すのは難しいでしょう。でも3位なら可能性はある。去年だって3位から日本一になったのですから、2年連続の下剋上を達成するのもおもしろいのではないでしょうか。勝負事は強いものが勝つとは限りません。勝った者が強い。

 強い西武の秘密は球場の階段にあり!?

二宮: 交流戦をみてもセ・パの実力差は明らかです。パ・リーグが強い理由はどこにあるのでしょうか?
黒木: やはり、よく言われるピッチャーの質の違いだと思います。セ・リーグのピッチャーは打席に立たなければいけないので、6回か7回の勝負どころで打席が回ってくると代打を送られるケースが増える。となると、あまり完投を考える必要がありません。でも、野球は27個のアウトをいかに取るかというスポーツですから、最後のアウトをどう奪うかを考えながら投げないとゲームを支配できないと思うんです。その点、パ・リーグはDH制で、自分の投球ができれば最後まで投げ切れます。試合の締めくくりまで考える分、ピッチャーが高いレベルに到達しやすいのではないでしょうか。昔ならピッチャーは先発完投が当たり前でしたが、今は中継ぎ、抑えとの分業制になっています。それは悪いことではないとはいえ、特にセ・リーグでは最初から完投を意識しているピッチャーが少なくなってきているのが、両者の差につながっている気がします。

二宮: もうひとつ、フィジカル面での違いをあげる意見もあります。中日からパ・リーグに移籍した東北楽天の山武司によると、「パ・リーグは北海道から九州まで移動が多い。まず体力がないとレギュラーにはなれない」とか。確かにセ・リーグの各球団は東京から広島までの新幹線移動圏内にある。しかも、関東には3球団が集中していますからね。パ・リーグは関東圏に2球団あるといっても、埼玉と千葉ですから、それほど近くない。
黒木: そう言われるとパ・リーグの選手は皆、たくましいのかもしれないですね。僕もプロに入って西武球場(現ドーム)に初めて行った時に、似たようなことを感じた記憶があります。あの球場はすり鉢状になっていて、選手たちはグラウンドに行くためには丘の上から長い階段を上り下りしなくてはいけない。練習や試合で球場を使えば、その階段を1日2、3往復はすることになるでしょう。それが知らず知らずのうちに西武の選手の体力強化につながるのではないかと考えたことがあります。西武が強い秘密は、この階段ではないかと。

二宮: なるほど。それは面白い見方ですね。他には球場の違いを指摘する意見もあります。パ・リーグのほうが全体的に球場が広いため、ピッチャーを中心としたセンターラインの強化に力を注いできたとも言えるでしょう。
黒木: 球場が広ければ配球も変わってきます。バッテリーは外角一辺倒ではなく、積極的にインコースを突いて攻めることもできる。その点でパ・リーグのバッテリーのほうがインコースの使い方をよく理解しているのではないでしょうか。

 後輩の唐川に敬語?

二宮: 今季の野球は低反発の統一球によって投高打低のシーズンになっています。ホームラン数も約4割減っています。ピッチャー出身の黒木さんとしては、このボールで現役時代にやりたかったのでは?
黒木: そう感じますね。万全な状態で、あの低反発球を使いこなせて、1年間フルに投げたら、どれだけの成績を残せるのかなって期待する部分は少なくないですね。僕はシドニー五輪で国際球を使った経験もありますが、意外と普通に投げられたんで、国際基準に近づけたという今回の統一球もすぐに適応できたのではないかなと思っています。

二宮: シドニー五輪の時のボールと感触は似ていますか?
黒木: いや、あの時の国際球と比べれば、質はかなり良いです。今年の統一球は握っただけですが、手にしっくりくる感じがしました。

二宮: 低反発に加え、ボールの縫い目の幅が大きいので、横の変化が大きくなるという効果も出ています。
黒木: 確かに綺麗なスピンがかかっていると空気抵抗を受けて、よく曲がりますね。あと、ピッチャーにとってはボールが滑る感覚があるため、どうしても指先に力が入る。それで曲がりが大きくなる側面もあるんですよ。今季は防御率1点台のピッチャーが多くて、久々に0点台が出る可能性がある。誰がその領域に達するか楽しみに見ています。

二宮: ロッテの後輩の唐川侑己も、今季は成瀬善久と並んでチームの柱になっています。スライダーのキレがアップしたので、インタビューで「新球の影響か?」と尋ねたら、「自分の実力だと思う」とズバリ言い切った。顔はクールですが、芯の強い子だなと感じましたね。
黒木: 侑己は1年目から活躍したとはいえ、1年間通じて戦うことができなかった。今年にかける思いは相当のものがあったはずです。体も強くなりましたし、その成果が出ているのではないでしょうか。

二宮: タイプ的には気持ちを全面に出して投げた黒木さんと正反対ですね。常にポーカーフェイスで22歳とは思えない落ち着きがある。
黒木: 僕は不器用で喜怒哀楽が自然と出てしまう人間でしたからね。それをファンの方が「いい」と認めていただいたのはありがたかったのですが、本来なら調子の良し悪しや感情は表に出さないほうがいいのでしょう。それがスキを見せないことにつながりますから。侑己は、若くしてそれができているので、感心しながら見ています。実は彼の1年目にインタビューさせてもらったのですが、あまりにも大人びていて後輩なのに敬語を使ってしまったほどなんです(笑)。こちらが緊張してタジタジになってしまうほどの雰囲気を持っている。
 ただ先程、二宮さんも言われたように、心に秘めたものはものすごく熱い。だから、そういう選手がたまに感情をみせた時が解説をしていて一番グッと来ますね。そのくらい目の前の1球にかけていることがヒシヒシと伝わってくる。ファンの皆さんも、ここに着目して見てみると野球がもっと面白くなるかもしれません。

 ヤクルト新人・七條は実戦向き

二宮: 宮崎の後輩も頑張っていますね。青木宣親(東京ヤクルト)はもちろん、寺原隼人もオリックスに移籍して2ケタ勝利をあげました。
黒木: 高校(延岡学園)の後輩になる草野大輔(東北楽天)も頑張ってほしいですね。バットコントロールは天才的ですから、常時、試合に出れば、必ず結果はついてくるはずです。それからヤクルトの先発で好投を続けているルーキーの七條祐樹も延岡の出身ですね。最初はバカボンに似ているとか、チリガミ王子とか話題優先の感もありましたが、実際のピッチングを見ると、かなり実戦向きでした。だから僕は結構活躍するのではないかと見ていましたよ。ただ、宮崎出身の割には言葉がなまっていないのが気になりますが(笑)。

二宮: 黒木さんも、そんなになまっているようには聞こえませんよ(笑)。
黒木: 結構、努力して直そうとしているんですよ。でも、嫁も高校の先輩なので家の中ではもっぱら宮崎弁になってしまう。子供も「パパー、パパー、今日ご飯何食べると?」ってなまっていますからね(苦笑)。

二宮: アハハハ。青木も宮崎なまりが残っていますかね?
黒木: 厳密に言うとなまっています(笑)。この前のオールスターゲームで会った時に、ちょうど、その話になったら本人は「いや、僕はなまってないです」って必死に否定していました。

二宮: 今、黒木さんのイントネーションを聞いていて感じたのですが、「アオキ」と言う時に「オ」にアクセントが来ますね。標準語だと「ア」にアクセントが来るはずです。
黒木: 本当ですか? 全然気にしたことなかったです(笑)。でも、それで話していて青木自身、違和感がなかったわけだから、やっぱり彼もなまっているということでしょうね(笑)。

二宮: さすが宮崎出身とあって、「そば雲海 黒麹」の飲みっぷりも素晴らしいですね。
黒木: 僕は昔から焼酎の中では、そばが一番好きなんです。そばはすごく香りがいい。香ばしいというか甘みのある柔らかい匂いがするんです。世間的には焼酎といえば、芋のイメージが強いかもしれませんが、個人的にはみなさんにぜひ、そばを試してほしいと感じています。

(後編につづく)

黒木知宏(くろき・ともひろ)プロフィール>
1973年12月13日、宮崎県出身。延岡学園高、王子製紙春日井を経て1994年ドラフト2位でロッテに入団。小宮山悟、伊良部秀輝らとともにローテーションの一角として活躍する。98年には13勝9敗で最多勝と最優秀勝率の2冠。00年には日本代表としてシドニー五輪にも出場。気合を全面に押し出すピッチングスタイルと「ジョニー」の愛称でロッテファンのみならず、多くの野球ファンに親しまれた。その後は故障に泣かされ、07年オフに球団から戦力外通告を受けて引退した。現役時代の通算成績は199試合、76勝68敗1S、防御率3.43。現在は野球解説に加え、「ジョニープロジェクト」を立ち上げ、野球の更なる発展、普及活動に力を入れている。著書に『54「もう、投げなくていい」からの出発』(?ロングセラーズ)がある。
>>オフィシャルブログ「NO BB,NO LIFE」
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月〜木    11:00〜23:30
金・祝前日 11:00〜4:00
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◎クイズ◎
 今回、黒木知宏さんと楽しんだお酒の名前は?


 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)
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