二宮: 「マヤンの呟(つぶや)き」、2杯目はぜひロックでいただきましょう。
舞の海: 氷を入れると、まろやかで甘さを感じます。舌をやさしく包んでくれます。


 変化で負ける力士を責めよ!

二宮: さすが、解説に定評のある舞の海さんらしい表現ですね。個人的にも舞の海さんの解説はテレビ、ラジオで楽しみにしているひとりです。大相撲の解説を聞いていると、十年一日のごとく「前に出るといい相撲」と考えている方が多すぎます。
舞の海: 電車道ほどつまらない相撲はないですね。あれではプロとは言えない。やはり力士は勝つことはもちろんですが、お客さんを楽しませることも必要です。どうやって体格の違う相手を仕留めるか。そのプロセスを大事にしてほしいと感じます。

二宮: 舞の海さんは「土俵を丸いことを考えて相撲をとってほしい」と発言していますね。そこに変化やひねり、投げといった工夫、技が出てくる。立ち合いの変化だって「卑怯だ」と怒る方もいますが、あれは野球で「隠し球はダメだ」と言っているようなもの。“小よく大を制す””柔よく剛を制す”が相撲の醍醐味なら、立ち合いの変化も認めないと大きい力士だけが勝つ世界になってしまう。
舞の海: 武士道精神、真っ向勝負の精神が間違ったかたちで解釈されていますね。武士だって戦いの時に、刀を持って真っすぐ突進していたかというとそうではない。相手の出方を見ながら、かわしたりすかしたりしながら戦っていたはずです。
 確かに昔も一気の攻めで相手を土俵の外に押し出す力士はたくさんいました。ただ、彼らはもし相手が変化しても対応できる足腰を鍛えていた気がします。今のように変化されてバタッと前に倒れてしまう相撲は少ない。

二宮: 変化するほうを責める前に変化されて負けたほうが稽古不足ではないのか。そんな指摘は今の相撲界では少ないですね。
舞の海: こんな話をすると、「オマエは特別だったんだよ」と言われます。でも、僕だっていつもアクロバティックな相撲をしていたわけではない。むしろ正攻法でオーソドックスな取り組みのほうが多いでしょう。ただ、人の記憶には珍しい動きをしているところにしか残っていない。

二宮: あの“八艘跳び”だって長い土俵人生の中でも試みたのは数回でしょう?
舞の海: そうです。しかも成功したケースはほとんどない。立ち合いに変化するのは、はたいて勝てる可能性があるからやるわけです。はたかれても多くの力士が残せるようになれば変化する意味がなくなる。はたくほうが体勢が浮いて、かえって墓穴を掘ります。そうなると立ち合いの変化も必然的に減っていくのではないでしょうか。

 心に残る親方の教え

二宮: 多くの解説者が協会内で親方を務めていることもあるのか、力士に対して批判的な発言が少ない点も気になります。
舞の海: やはりズバズバ言い過ぎると、他の親方に睨まれちゃうんじゃないかという意識が働くんでしょうね。でも、野球なら野村克也さんとか江本孟紀さん、サッカーだったらセルジオ越後さんと、外部からはっきりモノを言う方がいる。そのほうがファンもおもしろいし、相撲界の発展のためには必要だと思います。
 僕がそう考えるようになったのは師匠の影響が大きい。先代の出羽海親方(元横綱・佐田の山)は厳しい批評をする人に対して、「こういうことを書いてくれる人を大事にしろ」と語っていましたから。

二宮: 佐田の山さんは理事長時代に年寄株の改革を打ち出したり、考え方が内向きではない方でしたね。現役時代は大鵬と柏戸に挟まれて長く活躍はできませんでしたが、かいな力の強さは印象に残っています。
舞の海: ええ。入門した時に柱に向かってテッポウをしていると、師匠に「何やっているんだ。そうじゃない。ちょっと来い」と言って、僕の胸をバーンと突いた。その衝撃は今までくらったことのないものでした。当時はもう引退して20年以上経って、年齢も50歳を超えていたのに、こんなにパワーがあるのかとビックリした記憶があります。昔の力士の能力は相当、高かったんだろうなと感じましたね。

二宮: 親方の教えで印象に残っていることは?
舞の海: 負けた時にショボンとしながら下を向いて花道を引き上げたら、翌朝、師匠から「同情されてうれしいのか?」と言われました。それからは勝っても負けても堂々としようと心に誓いましたね。

二宮: そういう意味でも相撲界で親方の存在は大きいですね。でも現在の制度では弟子は一度入門すると、親方が退職したり、亡くなったりした場合を除いて、他の部屋には移れない。となると力士の教育の前に親方の教育が重要になるのでは?
舞の海: 確かにそうですね。相撲界の内部にいる人間に、もっと相撲を深く研究して伝えていただきたいという思いはあります。ただ、実際にどう親方を教育するかとなると難しい。外部の人がいくら言っても「じゃあ、オマエは相撲をとったことあるのか」と突っぱねられてしまう。 

 階級制で勝てるとは限らない

二宮: それができるのは舞の海さんだと思います。そのためには協会を離れた人間がまた復帰できるように制度を変える必要がありますね。舞の海さんもあと身長が10センチあって、体重が30キロ増えていたら、もっと上の番付を狙えていたのでは?
舞の海: 横綱、大関になれたかどうかはわかりませんが、一度、身長180センチで相撲を取ってみたいなとは思っていました。体重も日馬富士くらい(約130キロ)あれば、打倒・貴乃花を目標にいろんな相撲ができたと思います。

二宮: 近年、“小兵”と呼ばれる力士は何人もいますが、身長は180センチくらいで、体重も130キロある。舞の海さんと比べれば充分、“巨漢”ですよ。
舞の海: 90キロ台で相撲をとった身としては簡単に小兵という言葉は使ってほしくないですね(笑)。だけど、自分で「小兵」って言っているケースも多い。先程の話ではないですが、「頑張ってますよ」ということをアピールして同情されたいのかなと感じます(苦笑)。

二宮: でも、相撲がもし階級制だったら、間違いなく頂点に立っていたでしょうね。
舞の海: いや、これが相撲の難しくておもしろいところで、大学時代は体重別で負けたこともあります。同じような体つきと対戦するのは結構イヤだったんです。

二宮: 確かに体型が同じだと、取り口も似てくる。簡単には決着がつかないですよね。お互いが見合ったり、土俵際でもつれる勝負が増えそうです。
舞の海: レスリングみたいになるでしょうね。アクロバティックな動きも増えて、行司泣かせの一番が続くと思います。

二宮: お酒もだいぶ進みましたね。あらためて「マヤンの呟(つぶや)き」はいかがでしょう。
舞の海: 飲めば飲むほど、口当たりが丸くなっていきますね。体内にある水分にしみわたってなじんでいく感じがします。ぜひ、また相撲の深い話をしながら、お酒とともにご一緒できればうれしいです。

(おわり)

<舞の海秀平(まいのうみ・しゅうへい)プロフィール>
1968年2月17日、青森県生まれ。木造高を経て日大相撲部で活躍し、高校教師での採用が内定していたにもかかわらず、周囲の反対を押し切って大相撲入りを決意。当時の新弟子検査基準に身長が届かなかったため、頭にシリコンを入れて合格する。出羽海部屋に入門し、90年5月場所に幕下付出しで初土俵。91年3月場所で十両に昇進。同年9月場所に新入幕を果たす。100キロにも満たない小兵ながら「猫だまし」、「八艘飛び」などを繰り出し、“技のデパート”の異名をとった。以後、99年11月場所での引退までに技能賞を5回受賞した。最高位は小結。通算成績は385勝418敗27休。現在はNHK大相撲解説者を務めるほか、スポーツキャスターとしても幅広く活躍中。ちゃんこ鍋やラーメンなどのプロデュースもしている。
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★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

樫樽の中で歳月を重ねることで味わいに深いコクとまろみを加えた、アルコール度数38度の長期貯蔵本格そば焼酎「マヤンの呟(つぶや)き」。国際的な品評会「モンドセレクション」2011年最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)受賞。

提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
極上串焼 銀座 匠
東京都中央区銀座6−8−7 香詢ビル4階
TEL:03-5537-7702
営業時間:
ランチ  11:30〜15:00
ディナー 17:00〜23:00(月〜金)、16:00〜22:00(土、日、祝日)

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舞の海さんの直筆サイン色紙を長期貯蔵本格そば焼酎「マヤンの呟(つぶや)き」(720ml、アルコール度数38度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「舞の海さんのサイン色紙希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、舞の海さんと楽しんだお酒の名前は?


 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)
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