二宮: 実は大畑さんは、このコーナーにぜひお招きしたいと思っていたゲストのひとりです。昨年末に登場した上原浩治投手からも、大畑さんはお酒が大好きだと聞いていましたから(笑)。今日はブランデーのような深い味わいが特徴的なそば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」をご用意しました。早速ですが、飲み方はいかがしましょう?
大畑: では、ロックでお願いします。普段、焼酎はロックか水割りで飲むことが多いですね。この後は神戸に帰るだけなので、気持ち良く飲んで新幹線に乗り込みたいと思っています(笑)。


 グラウンドでも酒の席でも負けるな!

二宮: ラガーマンからはお酒にまつわる“武勇伝”も数多く耳にします。現役時代は、よく選手同士で飲み会を開いたのでは?
大畑: ラグビーは団体スポーツですから、お酒はコミュニケーションツールになっていましたね。お酒が入れば、普段、なかなか会話できないような若手とも腹を割って話せますから。

二宮: 最近はどのスポーツ関係者からも、“今の選手は昔ほど飲まなくなった”と聞きます。ラグビー界は?
大畑: 確かに量は僕たちの先輩方と比べると少ないですね。それでもまだ、比較的よく飲む人間が集まっていると思いますよ。

二宮: 大畑さんが若手の頃から、よく飲みに連れていてもらった先輩は?
大畑: 元木(由記雄)さんは代表でも一緒で付き合いが長かったので、よく飲みに行きましたね。それと今、神戸製鋼のチームマネジャーをしている藤(高之)さんが当時のチームでは一番の大酒飲みでした(笑)。体も大きくて、よく食べるし、良く飲む。ポジション的には体格のいいFWの選手のほうが飲む量が多い気がします。

二宮: スポーツ選手にとって勝利の美酒は、また格別の味だと思われます。大畑さんが印象に残っているものは?
大畑: 神戸製鋼に入って2年目に日本選手権で優勝した時に、試合に出ていたメンバーで祝勝会をしました。飲み進めるうちに一緒に飲んでいた小村(淳)さんが酔っ払って、その場で寝てしまったんです。会がお開きになって、小村さんを起こそうとしたんだけど、2リットルのペットボトルで叩いても起きない(笑)。なんとかタクシーには乗せたものの、ホテルに戻っても一歩も歩けない。仕方がないので、ホテルのボーイさんが持っている荷物を運ぶ台に乗せて部屋まで帰ってもらいました(笑)。

二宮: アハハハ。優勝した喜びもあって、飲みすぎちゃったんですね。
大畑: 小村さんもお酒には強い方ですけど、こういう席では無礼講。“若い僕らが負けてたまるか”という気持ちで、ここぞとばかりにお酒を注いだんです。僕はお酒が入ると、より攻撃的になる(笑)。それ以来、飲み会では“大介に気をつけろ”と言われるようになりました(苦笑)。

二宮: なるほど、お酒で先輩に勝負を挑んだわけですね。ラガーマンは根が熱い人が多いので、お酒が入るとヒートアップするケースも少なくない(苦笑)。
大畑: そうですね。ケンカが始まったり、ラグビー談議が延々と続いたり……。ちょっと付き合うのは、めんどくさいですけど(笑)、そういう熱さがあるのは悪くない。若手時代に“ベテランに負けるな”と思いながら飲んでいたように、年齢を重ねると今度は“若手に負けるな”という気持ちでしたよ。グラウンドでもお酒の席でも絶対に負けたらアカン(笑)。

二宮: 「那由多(なゆた)の刻(とき)」はいかがですか?
大畑: すごく飲みやすい。おいしいです。ホンマに洋酒みたいな香りとコクがありますね。焼酎と言われなかったら分からないかもしれない。どんどん飲んでしまいそうでヤバイです(笑)。

 オールブラックスとの戦い方は是か非か

二宮: さて、去年のラグビーW杯前にお会いした際、大畑さんは「願望も含めて日本は3勝してほしい」と話していました。ところが現実は1分3敗。理想と現実のギャップはどこにあったのでしょう?
大畑: ニュージーランド戦を除いては、どう転んでもおかしくない試合だったと思います。たとえば今回、同組のトンガがフランス相手に番狂わせを起こしたように、日本のやり方がうまくいけば勝つチャンスは十二分にあった。でも結果的には尻すぼみで終わってしまいましたね。

二宮: そのニュージーランド戦ではジョン・カーワン(JK)ヘッドコーチ(HC)が残り試合をにらみ、主力メンバーを入れ替えて戦いました。これに対しては賛否両論があります。エディー・ジョーンズ新HCは「4年に1度しかないチャンスをムダにした」と批判していました。大畑さんの考えは?
大畑: もちろん4試合ともベストメンバーで戦ってほしい願望はありました。僕が選手の立場であっても、オールブラックスと真剣勝負できる舞台に立ちたいと思ったでしょう。ひとりのファンとしても、どんな試合になるのか見てみたいという気持ちがありました。でも、現実的に日本は「2勝」という目標を掲げていました。それを達成するには、チーム戦略上、残りの2試合を重視するのはやむを得ない。JKの判断は間違っていなかったと思います。これは結果論で、もしニュージーランド戦の後で2つ勝っていれば、批判は起こらなかったのではないでしょうか。

二宮: この問題は悩ましいですね。目先の勝敗を考えれば、JKの選択は正しかったのかもしれない。でも長期的視野に立てば、世界のトップ相手にどのくらい通用するのか、勝負してもらいたかったという思いも捨て切れません。
大畑: しかも今回、オールブラックスはホスト国で非常に気合が入っていました。そんな最強チームとW杯本番で戦う機会なんて、そうはありませんからね。

二宮: ラグビーのW杯ではランキング下位のチームは試合日程の間隔が狭いという問題点が指摘されています。ニュージーランド戦の場合、次のトンガ戦までは中4日でした。この過密日程では、やはりベストコンディションを保つのは厳しいものですか?
大畑: 中4日は若干キツイですね。逆に中5日であれば何とかなります。この1日の差は大きいかもしれません。大会が始まれば、もう新たに何かを練習することはありませんから、基本的にコンディションを高めることが最重要課題になる。中5日だと、試合翌日に軽く体を動かし、2日目と3日目で再び状態を上げる。そして試合前々日に1度休んで、前日調整に臨むという流れができます。中4日ではコンディションを一旦落として、再び上げるという作業が難しくなってきます。

 最大の敗因は経験不足

二宮: 日本にとって最も痛かったのは最終のカナダ戦です。前半を終えて10点リードを守り切れなかった。
大畑: 勝てた試合だったと思いますが、勝てなかった現実を見つめないといけないでしょう。前回もカナダとは引き分けでしたが、追いついてのドローでした。今回は追いつかれての引き分け。カナダ戦に限らず、日本は大会を通じて試合の流れを理解したプレーが十分にできていなかったように感じます。“なんで、この時間帯にこんなプレーをするんだ?”と疑問に感じたシーンが多かった。その最大の原因はやはり経験不足でしょう。確かに日本は直前のパシフィック・ネーションズカップで優勝するなど昇り調子でした。でも、世界の強豪とタイトなゲームをする経験がまだまだ足りなかったように感じます。

二宮: メンバー的には史上最強と言われていても、チーム力ではまだ世界の列強とは差があったと?
大畑: はい。純粋に個々の力は歴代の代表で確実にトップでしたし、普通にやれば、もっといいラグビーができたと思っています。でも、世界の強豪は経験豊富。うまく相手の力を消して、ゲームをコントロールしてくる。そういった点を大会前に学んで、本番に生かす機会があれば良かったなと。

二宮: 初戦のフランス戦でも、一時は4点差まで迫りながら、最後に力尽きて突き離されました。あの試合をひっくり返して世界を驚かすには何が必要でしたか?
大畑: フランス戦に関しては、現状では100点の試合をしたと評価していいでしょう。正直、フランスとは競り合いには持ち込めても、勝つことはできない力の差がありました。日本にしてみれば前半をよくしのぎましたし、逆にフランスは出来が悪かった。彼らにとってグループリーグは、あくまでも通過点。その初戦ですから、まだ100%の状態ではなかったように感じます。そこにつけいるスキがあるかなと見ていたのですが、逆に日本のほうは常に100%で戦わなくてはいけない苦しさがありましたね。フィジカル、メンタルの両面をうまくコントロールする方法をチーム全体で共有できていなかった。そして、それができる核になる選手もいなかった。

二宮: 3試合目のトンガ戦ではミスが目立ちました。
大畑: あの試合は残念でしたね。W杯となると相手もすごいプレッシャーでボールに向かってくる。日本国内でいくらしっかりプレーできていても、世界レベルのプレッシャーのかけ方はひとまわりもふたまわりも違う。それがミスを誘発した面は否めません。タックルひとつとっても、「速く低く」というテーマに対し、トップリーグではそこまで徹底しなくても相手を止められる。そういう環境に慣れている選手たちが、急に「速く低く」と言っても限界があります。たとえばウェールズの選手たちを見ると、日本人よりはるかに体が大きいのに、足元に低いタックルを仕掛けていました。日本はこういう方向性を目指すべきというお手本を示してくれたように映りました。

二宮: JKは現役時代、オールブラッグスでW杯優勝も経験した指揮官でした。世界での戦い方を熟知しているだけに、今、話題に出たような日本ラグビーの足りない部分を埋めてくれると期待した面もあったのですが……。
大畑: 結果的には世界でしっかり戦えるチームになっていなかったわけですから、JKが責任をとるのは仕方がないでしょう。でも、僕自身はJKはいいヘッドコーチだったと認めていますよ。代表で選手とHCの立場になったのは少しの時間でしたけど、すごくコミュニケーションをとってくれました。日本に対する思い入れも強く、何より、あれだけの短時間で日本語をかなり習得しました。他のスポーツを見ても、日常会話が不自由なく日本語でこなせる外国人指揮官はそういないと思います。だからこそ、大会前から大いに期待していましたし、ひとつでも勝って欲しかった。結果が出なかったのはすごく残念です。いろいろ振り返ってみれば、すごくもったいないW杯でした。

(後編につづく)

<大畑大介(おおはた・だいすけ)プロフィール>
 1975年11月11日、大阪府生まれ。現役時代のポジションはWTB、CTB。東海大仰星高を経て、京都産業大時代から日本代表を経験。98年に神戸製鋼入社。99年の香港セブンスでは100メートルの独走トライを決めて日本を勝利に導き、大会MVPを獲得する。01年にはオーストラリアのノーザンサバーブスクラブでプレー。02年にはフランスのモンフェランへ移籍する。03年より神戸製鋼に復帰。06年5月にはテストマッチでのトライ数世界記録を更新。以後、69トライまで伸ばす。10−11年のシーズン限りで現役を引退。日本代表キャップ58は歴代4位。ワールドカップ2回出場。現在は神戸製鋼ラグビー部アンバサダー。

★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

長期に渡り、樫樽の中で貯蔵熟成した長期貯蔵の本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」。豊かな香りとまろやかなコクの深い味わいが特徴。国際的な品評会「モンドセレクション」2011年最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)受賞。

提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
味街道 五十三次
東京都港区高輪4−10−30 品川プリンスホテル
TEL:03-5421-1114
営業時間:
昼食 11:30〜15:30(L.O.15:00)
軽食 15:00〜17:00(L.O.16:30)  
夕食 17:00〜22:00(L.O.21:30)

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 大畑大介さんの直筆サイン色紙を長期貯蔵本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」(720ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「大畑大介さんのサイン色紙希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、大畑大介さんと楽しんだお酒の名前は?





 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)
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