第3回WBCの頂点に立ったのはドミニカ共和国だった。1次ラウンドから決勝のプエルトリコ戦まで8戦全勝。堂々の“横綱相撲”ならぬ“横綱野球”だった。

 過去2大会は「実力的にはナンバーワン」と言われながらも一体感を欠き、決勝まで残れなかった。
 ところが今回はMVPに選ばれたヤンキースの主砲ロビンソン・カノを中心にチーム一丸となって優勝に突き進んだ。

 いかにドミニカが今大会に賭けていたかは、クローザーのフェルナンド・ロドニー(レイズ)が8試合全てに登板したことでも明らかだろう。
 昨季、チーム新の48セーブをあげたロドニーは同時にア・リーグのカムバック賞と最優秀救援投手賞を受賞した。あのイチローが最も苦手(通算12打数2安打)とするピッチャーのひとりである。

 36歳という年齢を考えれば、WBCへの参加はリスクを伴う。しかも彼は昨季、76試合に登板し、74イニング以上も投げているのだ。
 聞けば監督の連投要請にも嫌な顔ひとつしなかったという。その動機は愛国心以外の何物でもあるまい。

 これはドミニカと優勝を争ったプエルトリコについても同じことが言える。プエルトリコは米国の自治領だが、2次ラウンドで“支配国”である米国を倒した際の歓喜は“祖国愛”にみちあふれていた。

 現地のジャーナリストによれば「ドミニカもプエルトリコも野球以外には、これといって誇るものがない。だから野球で米国に勝ちたいという気持ちは、どこよりも強いんだろう」

 初めてベスト4に進出したオランダも、主力のほとんどはカリブ海に浮かぶキュラソー島の出身。その意味で今回は“カリブの大会”であったともいえる。

 恐るべし、カリブ勢。これまで日本はWBC参加の意義を「野球の本場でルーツ国の米国を倒すこと」に求めていたが、今後はカリブ勢を打倒の対象にすべきかもしれない。

<この原稿は『週刊大衆』2013年4月15日号に掲載されたものです>

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