「ラグビー界のiPhoneになる」
 気の利いた言葉を口にしたのはラグビー日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズだ。
 さる6月15日、世界ランキング5位のウェールズ代表を23−8で撃破した。
 いくら若手主体のメンバーとはいえ、欧州シックスネイションズを連覇中の強豪。日本が世界の上位8カ国・地域の代表を下したのは1989年、宿澤広朗率いるジャパンがスコットランド代表に勝って以来の快挙だった。

 ウェールズ戦の4日後には、世界ランキング13位のカナダを16−13で退け、歴史的勝利がフロックでないことを証明してみせた。

 やるじゃないか、エディージャパン!

 ニュージーランドで行われた2年前のW杯、ジョン・カーワン率いるジャパンは1分け3敗に終わった。

 どん底の日本ラグビー。白羽の矢が立ったのが監督就任1年目でサントリーを日本選手権優勝に導いたエディーだった。

「誇りに思うし、日本代表をトップ10にまで持っていく自信はある」
 就任にあたり、きっぱりと言い切った。

 エディーはオーストラリア人だが、母親は日系人、妻は日本人である。日本語も簡単な会話なら理解できる。

「日本サッカーの日本化」
 そう言ったのは元サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムだが、それにならって言えば、エディーがまず取り組んだのは「日本ラグビーの日本化」だった。

「日本人は外国の選手と比較して体つきでは勝てません。だから他国のコピーもダメです。しかし、これまで日本の指導者たちは世界のマネばかりしていました。クリエイティブな部分が不足していたんです。日本人は体が小さいのだからスピード、スキル、そして頭を徹底的に鍛えなければなりません」

 まさに目指すは、小型で高性能なiPhoneというわけだ。

 ウェールズ戦、日本は体格で勝る相手スクラムに押し込まれる場面が何度かあったが、突破を許さなかった。

「ディフェンスが素晴らしかった。(日本は)イヤなチームになった」と相手コーチから称賛されたほどである。

 次のW杯は2年後のイングランド。その次は日本開催が決定している。少なくとも、そこまで任せてみたい。そう思わせる指導者である。

<この原稿は2013年7月19日号『漫画ゴラク』に掲載されたものです>

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