サントリーサンゴリアスは、現在、日本最強のラグビーチームである。
 昨季は17戦全勝でトップリーグ、日本選手権の2冠を2年連続で達成した。全勝での2冠は2003年のトップリーグ発足以降、初の快挙だった。

 サンゴリアスを率いる大久保直弥は一昨季まで2年間、当時の監督だったエディー・ジョーンズ(現日本代表ヘッドコーチ)の下でFWコーチを務めていた。

 ジョーンズの指導者としての実績は輝かしい。01年、母国オーストラリアのブランビーズを率いてスーパー12で優勝。03年W杯では同国代表を準優勝に導いた。目標としていた世界一は南アフリカ代表のテクニカルアドバイザーとして07年W杯で達成している。

 前任者の“遺産”を継承しつつ、さらに上積みを図る――。大久保は、この難しい作業を、1年目できちんとやり遂げた。

「エディーには僕が選手時代から指導してもらっていたので、彼のラグビー観はよく理解していたつもりです。だから、まずはエディーがやってきたことを引き継ぐのが第一だと考えました」

 サンゴリアスの選手たちを見ていて思うのは、フィットネスの良さである。これはトップリーグ16チーム中随一だろう。

 大久保は続けた。

「これはエディーの2年間の成果です。最初の1年目、選手たちはまだまだひ弱でしたから、徹底的に走り込みをしました。2年目はそれにスピードもつけて、より強度が高く、実戦的なトレーニングを積ませました。

 そして昨季はウエイトトレーニングにも力を入れました。スピードとパワーは相反する部分があるのですが、ひとりひとりの数値を見ながら、両方のバランスをとる体づくりをしていきました。練習に関しては世界の強豪にも引けをとらない内容だと自負しています」

 スポーツファンの視線は、この9月7日に決定する20年夏季五輪・パラリンピックの開催都市ばかりに集まっているが、19年のラグビーW杯の開催国は既に日本に決定している。本国での大会を成功させるためには、まずその前の15年イングランド大会で列強との差を縮めておかねばならない。

 エディージャパンは、さる6月15日、世界ランキング5位のウェールズ代表を23対8で撃破するなど着実に力をつけている。日本が世界の上位8カ国・地域の代表を下したのは89年、宿澤広朗率いるジャパンがスコットランド代表を下して以来の快挙だ。

 大久保自身も99年ウェールズ大会、03年オーストラリア大会と、FWとして2度のW杯に出場している。世界の強豪と激突して「骨がきしむような感覚」
を身を持って知った男は指導者として新たな目標を設定した。

「代表スコッドの3分の1をサンゴリアスの選手で占めたい」

 リーディングチームを指揮する自負と自覚が、言葉の端々から感じとれた。今季のトップリーグは8月30日に開幕する。

<この原稿は2013年9月8日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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