今年4月1日、トレーニング、テニス、アウトドアの3つのラインナップで全世界同時発売された「climachill(クライマチル)」。酷暑環境下でもアスリートがパフォーマンスを最大限に発揮できるよう、「adidas史上かつてない快適性」を実現したウェアだ。今回はそのclimachillに搭載された最新テクノロジーに二宮清純が迫った。

(写真提供:adidas)
 アルミニウムでクーリング

「clima」とは天候や気候を意味する「climate」からきている。adidasでは衣服と肌との空間のことを“衣服内気候”と呼び、climaにはその空間をより快適なものにしたいという思いが込められている。では、スポーツシーンにおいて、最適な“衣服内気候”とは、パフォーマンスが最も上がる運動最適体温37度をいかにキープできるか、である。そのコンセプトの下、衣服内気候に冷涼感(chill)を生み出そうと開発されたのがclimachillだ。

 climachillには、特徴的な2つの機能がある。「クーリング機能」と「通気性・速乾性」だ。これらを実現するために搭載された最新テクノロジーを紹介しよう。

(写真:アイコニックなデザインにもなっているアルミニウムドット。熱い体に冷涼感を与えてくれる)
 1つ目は、背中上部の裏側に配置された「3Dクーリングアルミニウムドット」だ(写真)。高い接触冷感を実現するため、筋肉や骨格の構造、衣服内の通気性構造、放熱・発汗箇所や作用などを徹底分析し、約2年半もの歳月をかけて開発されたテクノロジーである。

 採用された軽量のアルミニウムは、航空機やロケットの素材にも使用されているものと同質で、熱伝導性が高く、熱が冷めやすいという特徴をもつ。そのため、アルミニウムドットは肌から離れた瞬間に外気温まで温度が下がり、再び肌に接触する時には、熱くなった身体をクーリングしてくれるのだ。

 アディダスマーケティング事業本部Men’s/Techfitビジネスユニットカテゴリーマーケティングマネージャーの高嶋佑輔氏は、アルミニウムドットによる効果をこう語る。
「“ヒートゾーン”と言われ、最も熱がこもりやすい首筋から背中上部にかけてアルミニウムドットを配置しています。これは実際に身体の熱を冷ますのはもちろん、メンタル的なクーリング効果もあるんです」

 メッシュ以上の通気性を実現

 2つ目は、吸汗速乾と熱拡散の2つの機能を生み出した新開発特殊糸「SubZero yarn(サブゼロヤーン)」だ。断面が異型扁平な形状となっており、4つの突起(四つ山)がついている。そのため生地と肌の接触面が大きく、汗をスピーディに吸水し、放出することができる。

 また、SubZero yarnの糸1本1本には、微粒子のチタンが埋め込まれている。チタンには熱を伝導するスピードが速いという性能があり、瞬時に熱を拡散していくという効果を生み出している。そのため、生地に汗がとどまりにくく、快適性が持続する構造となっているのだ。

 実は、SubZero yarn開発には日本の素材メーカーが深く関わっているという。日本の技術が世界のスポーツシーンに寄与している代表的な例でもある。

 これまで春・夏用のスポーツウェアには、通気性を考慮したメッシュ製が多く採用されてきた。しかし、climachillにはメッシュはまったく施されていない。その理由を、高嶋氏はこう語る。

「SubZero yarnでつくられた生地自体が、メッシュよりも通気性が高いんです。ドイツ本社の研究機関の分析によれば、メッシュ製の当社従来製品の約3倍の通気性があるという結果が出ています。着用していただければ、すぐにわかると思いますが、サラサラしていて、本当に着心地がいい。しかも、この快適性が持続する。パフォーマンスを落とさないためのアイテムとして、アスリートからも好評を得ています」

 テニスではアンディ・マレー(英国)やジョー・ウィルフリード・ツォンガ(フランス)といった世界トッププレーヤーが愛用している。climachillのアンバサダー、デイビッド・ベッカムも「過酷な気候条件でも、プレイヤーがフィジカルやメンタル面で快適な状態に保つことができるため、高いパフォーマンスを発揮できる」と絶賛している。

 climachillの活用はスポーツシーンだけにとどまらない。例えばビジネスマンがシャツの下に着るアンダーウェアとして、あるいはポロシャツはクールビズとして着用する、など日常生活にも適している。また、ポリエステル100%のため、簡単に洗濯することができ、汚れも落ちやすい。子どもをもつ親にとっても、嬉しいアイテムとなる。

「特に蒸し暑い日本の夏にclimachillは、絶大な効果を発揮することでしょう。ぜひ、今夏はclimachillで快適な夏を過ごしてほしいですね」と高嶋氏。adidasの最新テクノロジーが凝縮されたclimachillの活用シーンはさらに広がりそうだ。

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(写真/斎藤寿子)
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