二宮: ゴルフでは“19番ホール”の飲み会もひとつの楽しみとのことですが、やはりプレー後の一杯は格別だと?
小山: ラウンドの後もおいしいですが、その日まるまるオフの時に、温泉宿などで朝から飲むお酒は一番ですね(笑)。

二宮: 確かに。朝風呂から上がっての一杯はたまりませんね(笑)。
小山: 朝からお酒を飲める時は、もうその日は1日、何もしなくていい(笑)。その贅沢感がたまらないですね。「サンデーモーニング」の出演が終わって、家に帰ってきて近所でランチを食べながらお酒をいただく。この瞬間は最高ですよ。近くにそば屋があって、そこでそば焼酎をそば湯割りにして飲むこともあります。そばは体にいいので、このそば焼酎「雲海」も健康的な飲み物ですよね。

 最年少V・勝の独特なグリップ

二宮: 女子のゴルフ界を見てみると、10代の有望株が次々と現れています。4月のKKT杯バンテリンレディスオープンでは15歳の勝みなみ選手が史上最年少優勝を飾りました。タケさんの解説を聞いていて、なるほどと感じたのは、彼女のグリップです。野球のバットを持つように全部の指を使う「ベースボールグリップ」でショットしていますね。
小山: ゴルフのグリップには主に3つの握り方があります。最も一般的なのはオーバーラッピング。右手の小指を左手にかぶせるかたちで握ります。次がインターロッキング。右手の小指を左手の人差し指と中指の間に入れてロックする握り方です。ジュニアゴルフではベースボールグリップから始めるケースが多い。

二宮: 小さいうちは力もついていないので、ベースボールグリップだとしっかり握れるわけですね。
小山: そうです。ボールを狙った方向に飛ばすには、クラブの面をまっすぐ当てて、最後は右手を返す必要がある。この返す動作がベースボールグリップだとやりやすい。ただ、成長に伴って、右手の力が強くなってくると早く返りすぎて左へ曲がってしまう。だから、右手の動きを制限するためにオーバーラッピングかインターロッキングへとグリップを変える選手がほとんどです。

二宮: では、勝選手もいずれグリップを変えていくことになると?
小山: 彼女のグリップは独特で、むしろ左手の人差し指が外側に出ている“逆オーバーラッピング”のようになっています。あれで安定したショットが打てるのは、常識的に考えるととても不思議です。今後、成長するにつれて、彼女もグリップを変える時期がくるでしょうから、そこでうまく乗り換えられるかがポイントになりますね。

二宮: グリップがしっくり来なくて伸び悩む選手もいるのでしょうか。
小山: 実際にそういう選手もいます。スイングも全部変わりますから、本人に合ったかたちでうまくいくかどうか。彼女のスイングは非常に自然体です。小さい頃から練習を重ねてきて、自分のものになっているのでしょう。その良さが変わらないまま、うまく移行してほしいなと願っています。

二宮: オーバーラッピングとインターロッキングは人によって適性があると思いますが、時代によって流行もありますね。
小山: この変化は非常におもしろい。僕たちがゴルフを始めた頃はインターロッキングが主流でした。青木功さんも、この握りだったんです。ところが、ジャック・ニクラウスをはじめとして1980年代にはオーバーラッピングが一世を風靡しました。僕もその影響を受けてグリップはオーバーラッピングです。そしてタイガー・ウッズがインターロッキングで活躍すると、今度はそれを皆がマネするようになる。

二宮: この先、新しいグリップが開発される可能性は?
小山: 珍しいところでは左手と右手の位置を逆にクロスさせる握りでショットを打つ選手もいます。米国のジェフ・ブレイコーという選手はそのひとりです。彼は目の前で父親が打っているのをマネしているうちに、左右逆にするのが当たり前になってしまったとか。あとは極端なオーバーラッピングで左手の薬指まで右手にかぶせる選手もいる。グリップのかたちはあってないようなものなので、今後、新しいものが生まれるかもしれませんね。

二宮: 勝選手のほかにも高校3年の森田遥選手などがプロ顔負けの成績を残しています。この理由はどこにあるのでしょう?
小山: まず女子は成長が早い点があげられます。10代後半でも20代、30代の選手と体つきは変わらなくなる。ここは男子との大きな違いです。もうひとつは女子にはアマチュア選手に対する出場規制がありません。だから何試合でも挑戦できるのもプラスに働いていますね。しかも、現状の日本女子ツアーは選手層が薄いので、伸び盛りの選手だと上位に行ける確率が高い。不動裕里が全盛を誇っていた10年前や、その後の宮里藍、横峯さくら、古閑美保がしのぎを削った時代であれば簡単には勝てなかったはずです。裏を返せば、有力選手が海外に参戦して日本ツアーが空洞化した結果ととらえることもできます。

二宮: 米国ツアーでは最年少優勝を果たしたリディア・コーに対して、「まずは学業を優先すべきでは?」との意見もあったとか。海外では若くしてトップに立つことには慎重な考えもあるようですね。
小山: 米国ではプロフェッショナルとアマチュアがきっちり分かれていますから、アマチュアの選手が通常のプロツアーに出ることが日本ほど多くありません。その意味ではアマチュア選手がプロと交じってプレーし、かつ上位に入るというのは日本特有の現象と言えるでしょう。

 若洲を五輪会場にするメリット

二宮: 2年後のリオデジャネイロ五輪からはゴルフが正式競技として復活します。6年後には東京五輪も控えていますから若手の台頭自体は喜ばしいことです。
小山: その2020年の東京五輪に向けて、ひとつ訴えたいことがあるんです。開催計画ではゴルフの会場は霞ヶ関カンツリー倶楽部になっていますが、これを臨海部の若洲に変更したい。この運動に本腰を入れたいと考えています。

二宮: 若洲を推す理由は?
小山: 霞ヶ関といえば、知らない人はおそらく官公庁が立ち並ぶ都心のゴルフ場を思い浮かべるのではないでしょうか。確かに皇居の中にはかつて馬術コースを改良したゴルフコースがありました。しかし、実際に霞ヶ関のコースは埼玉県川越市にあります。都心からは50キロも離れています。選手は朝早くからプレーしなくてはいけない可能性もあるのに、移動が大変です。若洲は選手村からも近い。しかも東京都の管轄ですから、これを活用しない手はありませんよ。

二宮: IOCは各会場へのアクセスや利便性も評価項目にいれていますよね。
小山: ゴルフは今度のリオで112年ぶりに復活する競技。だからIOCも競技をどのように実施すればいいか、レギュレーションがまだ明確になっていない。現状は国際ゴルフ連盟(IGF)に丸投げしている状況です。このIGFは全米ゴルフ協会(USGA)と、日本ゴルフ協会(JGA)が中心になって立ち上げた組織。だから東京五輪の開催地に関してもJGAの意向が強く反映されているのでしょう。

二宮: 招致に失敗した2016年五輪の計画では若洲が候補地になっていました。
小山: そうなんです。確かに霞ヶ関は日本で初めて国際大会も開催された由緒あるコースです。日本ゴルフの中枢といってもいい。ただし、ここでプレーするには会員になる必要がある。つまり誰にでも開かれたコースではないんです。五輪後、同じコースでゴルフをしたくても、それができないところに問題点がある。こんなことは他の競技でありません。

二宮: よく五輪のレガシー(遺産)を後世に伝えることが大事だと言われます。その継承ができにくいと?
小山: 霞ヶ関ではゴルフ界全体を考えた時に五輪後のメリットが少ない。前回の1964年の東京五輪後、選手たちが試合をした体育館やプールなどの施設は皆が使えました。国立競技場はその後もラグビーやサッカー、陸上など、数々の名勝負が繰り広げられて聖地になったんです。でも、霞ヶ関だと、ゴルフファンの大半は中に入ることもできずに一生を終えてしまうのではないでしょうか。ゴルフに携わっている人間のひとりとして、後世に財産を残すにはどうすればいいか。その観点からも、誰でも利用可能な若洲で競技を実施すべきだと考えます。

二宮: ただ、若洲で行うとなると整備が必要になるでしょう。費用面から他の競技で計画の見直しも取り沙汰されている中、現実的に変更は可能なのでしょうか。
小山: コース自体は現状でも十分、競技は可能です。ただ、会場の基準として、36名が一度に打てる360ヤードの練習場を備えることが条件になっていますから、それをクリアすればいい。練習場を設けるだけなら、莫大な資金はかからないはずです。もうひとつ、立地面を考えても真夏の暑い時期に内陸部の川越でゴルフをしたら、選手は熱中症になってしまいますよ。臨海部で海風の吹く若洲のほうが選手のコンディション面からも適しています。

二宮: しかし、開催を見越して既に動き始めている霞ヶ関カンツリーの関係者や地元自治体は簡単には納得しないでしょうね。
小山: 埼玉県や川越市は周辺のインフラ整備ができますから、変更になると困るでしょうね。ただ、霞ヶ関カンツリー内では必ずしも実施に全面的に賛成というわけではない。五輪に合わせてコース改造も必要で、その整備費は自分たちで捻出しなくてはならないんです。若洲であれば、たとえば照明設備をつけることだって可能です。暑さ対策や放映権を握っている米国のテレビ局の放送時間帯を考慮すれば、早朝、もしくは夜間に競技を行うことも想定されます。格式高い霞ヶ関では、そういった対応をとることは難しいでしょう。

二宮: 競技会場の変更については、コスト面も含め、柔軟に考えるべきでしょうが、あまり残された時間はありません。
小山: 後世の子どもたちに有益なレガシーを残すためにも、2020年への僕のミッションとしていろいろな人に声をかけて賛同の輪を広げていきたいと思っています。五輪後の管理維持費用が大変なら、民間に運営を委託してもいい。五輪会場となれば、人気も出るでしょうから使用料収入も見込めます。羽田空港やディズニーランドにも近いので、観光がてら全国から人を呼ぶことだってできるでしょう。

 ゴルフは遊戯ではない!

二宮: ゴルフは、まだまだ発展の余地がある競技だと私はみています。少子高齢化が進む中、ゴルフは老若男女、誰でも楽しめるスポーツです。まさに生涯スポーツには最適と言っていいでしょう。しかし、それには大きな障害がある。ひとつはゴルフ場利用税の撤廃です。娯楽施設利用税は消費税導入で撤廃されたにもかかわらず、ゴルフだけは別の名称に変わって二重課税の状態になっています。
小山: 国会では超党派の「スポーツゴルフ確立のための議員連盟」が撤廃を訴えていますが、地方自治体にとっては大きな財源だけに一筋縄ではいかない。

二宮: 逆転の発想が地方自治体には求められるでしょうね。利用税を撤廃し、むしろ安くプレーできるようにしたほうが、高齢者もゴルフ場に行きやすくなる。これが健康増進のきっかけとなり、ゆくゆくは医療費の削減にもつながる。このほうがメリットは大きいはずです。
小山: そもそも役所の位置づけでは、ゴルフはスポーツではなく遊戯と一緒ですからね。国家公務員倫理規定でも利害関係者とのゴルフが名指しで禁止されています。接待ゴルフの歴史があったとはいえ、五輪競技にもなっているスポーツを禁ずるのは世界的にも恥ずかしい話ですよ。

二宮: これだけ日本人選手も世界で活躍する時代になったのですから、ゴルフに対する認識も改めていかなくてはなりませんね。
小山: かつてはゴルフクラブが奢侈品とみなされ、物品税を課されていました。僕がゴルフを始めた頃はクラブを買うと、物品税の対象になるステッカーが貼られていたんです。いわゆる宝石や毛皮と同じ扱いになっていた。さすがに物品税は廃止になり、「ゴルフ=贅沢」という時代はとっくの昔に終わったはず。それこそ、日本の現状には「喝!」を入れなくてはいけないですよ(笑)。

二宮: アハハハ。いいオチができました。ゴルフの地位向上のため、この後も20番ホール、21番ホールと、そば焼酎「雲海」のSoba&Sodaを飲みながら議論しましょう(笑)。
小山: また、いつでも一緒にラウンドしますよ。Soba&Sodaは本当に爽快感があって、おいしかったです。家でも晩酌で試してみます。今度は他の仲間も呼んできて、二宮さんと楽しく酒飲みトークを展開したいですね(笑)。

(おわり)

<タケ小山(小山武明 こやま・たけあき)プロフィール>
 1964年7月7日、東京都出身。中央大卒業後、蛇の目ミシン開発・蛇の目スポーツプラザ高尾の所属プロゴルファーとしてレッスン業務に携わる。89年に米国フロリダグレンリーフリゾートの所属プロとして渡米し、米ツアーを中心に各国の大会を転戦する。01年からはザ・ゴルフチャンネルの専属解説者に。07年に帰国して日本チャレンジツアーに参戦。08年からは早稲田大学大学院に入学し、スポーツビジネスを学ぶ。TBS系列「サンデーモーニング」、インターFM「GREEN JACKET」などに出演し、ゴルフ解説を中心に幅広くメディアで活躍中。最近の著書は『ゴルフは100球打つより見てなんぼ!』(ゴルフダイジェスト社)、『今の技術でベストスコアを叩き出す! タケ小山のセルフマネジメントゴルフ』(マイナビ)。
>>オフィシャルブログ

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昼(月〜金) 12:00〜14:00(L.O.13:30)
夜(月〜土) 18:00〜26:00(L.O.25:30)
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◎クイズ◎
 今回、タケ小山さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)


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