「リオの風」は、株式会社アライヴンとのタイアップコーナーです。来年のリオデジャネイロ五輪、パラリンピックを目指すアスリートを毎回招き、アライヴンの大井康之代表との対談を行っています。各競技の魅力や、アライヴンが取り扱うインヴェル製品を使ってみての感想、大舞台にかける思いまで、たっぷりと伺います。
 今回はロンドン五輪の競泳で3つのメダルを獲得し、2大会連続出場を狙う鈴木聡美選手の登場です。


 メダルへの意識はなかった

大井: ロンドン五輪は僕も応援していました。メダルを獲得できる自信はあったのですか。
鈴木: メダルや記録への意識はあまりなかったんです。それよりも、その場を楽しんでいた感覚の方が強かった。「ここはオリンピックの会場だっけ?」と思うくらい、日本にいる時と同じ気持ちでした。

大井: では、大きな緊張もなかったと?
鈴木: そうですね。ワクワクするような、いい緊張感でレースに臨めました。

大井: 初の五輪で他の選手の泳ぎに圧倒されることは?
鈴木: それもなかったですね。周りのコーチから他の選手のタイムを聞かされても「あ、そうですか」という気持ちでした(笑)。自分のことで精一杯でしたから周りを気にせず、泳ぎに集中できた。それが結果的には良かったのかもしれません。

大井: 水泳を始めたのは何歳ですか。
鈴木: 4歳の頃から始めました。ジュニアの選手として本格的に競泳に取り組んだのは7、8歳の時からです。

大井: きっかけは両親の勧めでしょうか。
鈴木: いえ、私自身の意思で始めました。2つ上の姉が水泳を始めたので、私も「一緒にやりたい」とお願いしたんです。それで姉が選手になるというので、私も同じ道を進みました。

大井: 当時から、日本一、世界一を目指そうと思っていたと?
鈴木: 正直、大学に進学するまで、そんな目標を設定したことは全くなかったんです。高校までは記録もそこそこで並のレベル。ただ、納得いくまで競泳をやりたいと大学でも続けていたら、突然、記録が伸び始めました。一気に成長期が訪れた感覚でしたね(笑)。

大井: 急成長の要因は何だったのでしょう。
鈴木: 大学で練習環境が変わり、量も内容もすべてレベルアップしたことが大きかったと思います。急激に筋肉量が増え、体力がつきました。たとえば高校までは1日1回だった練習が大学では2回になり、ウエイトトレーニングまで入りました。1日に泳ぐ距離も、それまでは多くて5000メートルくらいだったのが、大学ではそれが当たり前の距離だったんです。

 水中の方が疲れない

大井: 今は練習で、多い日はどのくらい泳きますか。
鈴木: 追い込みの時期だと1日に12000メートルは泳ぎます。

大井: つまり12キロ! 途中で嫌になったりしませんか。
鈴木: もちろんつらいこともありますが、実際にやってみると楽しいし、かえって充実感が出てくるんです。昔から、その繰り返しで続けてきたので、ちょっと性格が変わっているかもしれません(笑)。

――それだけの距離を、どのくらいの時間で泳ぐのでしょう。
鈴木: 休憩も入れながら、3時間くらいで泳ぎますね。普段も2時間から2時間30分は泳いでいます。

大井: それだけ泳ぐと、かなり疲れも溜まるでしょう。
鈴木: トレーニング後のアフターケアはしっかりしていますし、栄養や睡眠も大切にしています。先日から寝る際にはアイマスクを使用していますが、フィット感が良く、外部からの光をよく遮断してくれる。落ち着いて休める環境をつくる上で最適だと感じました。

大井: インヴェル製品のアイマスクは、遠赤外線による保温効果で1日の緊張感をやさしくほぐしてくれます。ぜひアイマスクと一緒に、ベッドに敷くリチャージも使ってみてください。ゆっくり休んでリフレッシュしていただければと思います。

――競泳やシンクロナイズドスイミングの選手などは、陸上よりも水中の方が一番落ち着くとか。
鈴木: 水の中の方が楽ですね(笑)。何もしなくても浮いていられるから体への負荷が小さい。重力をあまり感じないから疲れないんです。

大井: もしかして前世は人魚だったのでは(笑)。ただ、水の中に長時間いると、女性としては肌荒れも気になるでしょう。
鈴木: アハハハ。放っておくと口の周りなどが一気に粉を吹いた感じになってしまうので(苦笑)、化粧水や乳液などをつけてケアをしています。今回、撮影用のメイクに「LIVEAGE」を使わせていただきましたが、クリームの肌触りが良くて、しっとりする。香りも爽やかで、とても良かったです。

大井: 最近、私は呼吸が浅い気がして、酸素が体中に行き渡っていない感覚があります。競泳選手は水中に潜っている時間も長いからきっと肺活量も多くて呼吸法も独特なのでしょうね。酸素を十分に取り入れるための秘訣があるのでしょうか。
鈴木: 呼吸法は日頃から意識しています。やはり鼻からゆっくり吸って、腹式呼吸で口から吐き出すといいのではないでしょうか。深呼吸するようにゆっくりと吸って、ゆっくりと吐く。私もトレーニング中、息が乱れた時には意図的に深呼吸をして落ち着かせます。普段の生活でも、ふとした時にこれを繰り返すと呼吸も深くなってリラックスできるのではないかと思います。

 五輪後の葛藤と試行錯誤

――メダル獲得で一躍、脚光を浴び、注目されることへの戸惑いはありませんでしたか。
鈴木: ものすごくありました。メディアや大会に出た時の紹介も「平泳ぎの女王・鈴木聡美」と言われたり、書かれたりしますから。私自身は「え、女王なの?」という思いでした(笑)。プライベートでも歩いていると「あれ、あの人……」という目で見られますし、声をかけられる。なかなか慣れませんでしたね。

――もう五輪は過去の出来事なのに、いつまでも当時のことが話題になり、比較される。「もう放っておいてほしい」と思うこともあったのでは?
鈴木: それだけ五輪は注目される舞台なんだと実感しましたね。それはそれで、ありがたいことだと思っています。ただ、個人的には「終わったことだから次に進みたい」という感覚でしたね。

大井: こういった質問も、おそらく何百回とされているんでしょうね(苦笑)。葛藤を乗り越えられた実感はありますか。
鈴木: 昨年あたりから、徐々に切り替わってきたのかなと思います。五輪後しばらくは、「メダリストだから記録を出さなきゃ、結果を出さなきゃ」という気持ちだけが先走って、泳ぎに力みがありました。一番いい記録を出した時の自分をイメージし過ぎて、現実とのギャップに落ち込むこともありましたね。「なんでだろう?」といろいろ思い返してみると、ロンドンの時のようにレースを楽しめていない自分がいたことに気づいたんです。その場の雰囲気を楽しんで、いつも通り泳いだ方がリラックスできて、結果もついてくる。今年は、そういった心境になれるように気持ちを持っていきたいです。

――次のステージに進むために、精神面のみならず、フォームも試行錯誤していたと聞きます。
鈴木: 海外の選手は非常にテンポの速い泳ぎをしているので、一昨年、昨年とチャレンジしていました。50メートルに関しては完全に最初からスピード勝負なので、この泳ぎ方は合っていたと思います。でも、100メートル、200メートルは50メートルとは“別物”です。やはり、100メートル、200メートルでは後半もしっかりとスピードに乗れる伸びのある泳ぎをすべきだと考えています。

――伸びのある泳ぎとは、具体的には?
鈴木: これまでもメインにしていた泳ぎ方ですが、ゆっくりとかき始め、かき終わりを速くして勢いをつけて伸びる。私自身の強みはやはり、キック力。距離が長くなるにつれて、キックをきかせて、なめらかに伸びる泳ぎが一番合っていると感じました。

――自分の持ち味を再認識する上では、テンポの速い泳ぎに挑戦したことも悪くなかったと?
鈴木: 泳ぎの確認としては非常にいい経験だったととらえています。正直、新しい泳ぎに取り組むのは不安で、実際に記録も伸びず、苦しみました。でも、合っているか合っていないかはやってみなければわからない。速いテンポで泳ぐ中で、どうすればしっかりと水をつかめるか、進めるのか。やっていくうちに感覚をつかんで、50メートルでは結果を出せました。これを100メートル、200メートルにうまく生かしたいですね。

大井: 50メートルでは昨年、日本記録を更新してアジア大会でも金メダルを獲りました。リオに向けて上り調子とみていいでしょうか。
鈴木: アジア大会の金メダルは素直にうれしかったです。いろいろ不安があっても、「もう、やるしかない」と、いい意味で自分の泳ぎに集中できました。予想以上のタイムで優勝できましたから、今年は五輪種目である100メートル、200メートルでもしっかり泳げるようにして、記録を更新していきたいですね。

大井: 私たちから見ると、五輪でメダルを獲る人やノーベル賞を受賞する人は、普通の人とは何かが違うような気がします。生まれながら持っているものが違う、と自覚する点はあるのでしょうか。
鈴木: うーん(笑)。もちろん、自分が持っていた原石はあったのかもしれませんが、それらをいろんな方がうまく磨いてくださったことの方が大きいでしょうね。巡り合わせや環境といったものが重なってくれたからこそ、今があると考えています。

大井: ぜひ、リオで最高の泳ぎができることを期待しています。
鈴木: 平泳ぎは国内のレベルが高いので、まずは今年の日本選手権で世界選手権(ロシア・カサン)の代表に選ばれることが第一です。皆さんの期待を重圧ではなく、力に変えて楽しみたいですね。チャレンジャーとしての気持ちを思い出しつつ、頑張っていきます。

(おわり)

鈴木聡美(すずき・さとみ)プロフィール>
 1991年1月29日、福岡県生まれ。ミキハウス所属。4歳から水泳を始める。九州産業大学付属九州高時代までは全国的に無名だったが、山梨学院大進学後に急成長。1年時(09年)の学生選手権100メートル平泳ぎで当時の日本記録を樹立して優勝する。翌10年の日本選手権では50メートル、100メートル、200メートルの3冠を達成。12年の日本選手権でも100メートル、200メートルで優勝してロンドン五輪代表に選ばれる。ロンドン五輪では、100メートルで銅メダルを獲得。続く200メートルでは日本タイ記録で銀メダルに輝く。さらに女子400メートルメドレーリレー決勝では第2泳者として銅メダル獲得に貢献。日本競泳女子では初めて同一大会で3つのメダルを手にした。14年の日本選手権では50メートルで日本記録を更新。秋のアジア大会では50メートルで優勝を収めた。168センチ。

(写真/金澤智康、進行役・構成/石田洋之)