プロ野球は交流戦に突入します。今季から昨年までのホーム&ビジター2試合ずつの戦いから、3連戦の6カードと試合数は少なくなりました。しかし、わずか18試合でも交流戦が夏場以降の戦いを大きく左右することは変わりません。
 従来の2連戦方式では1勝1敗で終わるケースも多く、各チームの勝敗は上位と下位を除けば、それほど大差ありませんでした。しかし、3連戦方式では基本的に、どちらかが2勝1敗と白黒がはっきりします。全カードを勝ち越せば、6つ貯金がつくれるのです。3タテでもしようものなら、一気に貯金を増やせます。おそらく、この形式では極端に勝ち越すチームと、大幅に負け越すチームが出てくるのではないでしょうか。ペナントレースの流れが一気に変わることも予想されます。

 日程に余裕のあった昨季までとは異なり、6連戦が続きますから、ポイントとなるのは先発陣です。各カードの3戦目に投げる5番手、6番手の先発がしっかりしているところが勝ち星を伸ばしていくでしょう。その観点で12球団を見渡すと、やはりパ・リーグの方が先発ピッチャーが充実しています。

 たとえば北海道日本ハムの大谷翔平。無傷の6勝という結果はもちろん、ピッチング内容も文句のつけようがありません。彼のような絶対的な存在はセ・リーグにはいないと言っていいでしょう。またオリックスの金子千尋も復帰してきました。ソフトバンクも選手層が厚く、レベルの高いピッチャーが揃っています。

 パ・リーグ首位の日本ハムは得点がリーグトップと投打のバランスが非常に良くなっています。特に西川遥輝、中島卓也の1、2番コンビは足も使え、セ・リーグの各チームは抑えるのに苦労するでしょう。主砲の中田翔に、二刀流の大谷、打撃のよい近藤健介と厄介なバッターが揃っています。

 セ・リーグ勢が対抗するには打ち勝つ展開に持ち込むことです。その点では首位を走り、打線好調の横浜DeNAや、このところ打線が上向いてきた東京ヤクルトはおもしろい存在かもしれません。

 DeNAでひとつ気がかりなのは、逆転勝ちの多さです。ここまで29勝中、半分以上の15回が逆転勝ち。これは粘り強さの象徴とみることができる半面、試合途中までは先行を許している弱みともとらえられます。主砲の筒香嘉智が故障を抱え、慣れないパ・リーグ相手に得点力が落ちる可能性がある中、逆転勝ちに持ち込めず、黒星が増えていく危険も考えられます。

 今季はバッターサイドから「ストライクゾーンが広がった」との声をよく耳にします。ただ、僕が試合を観ている限りでは、特段、ストライクゾーンが変化したようには感じません。むしろ、ゾーンがまちまちと言った方が正しいでしょう。

 審判団も試合時間短縮を求められ、どこまでをストライクととるか戸惑っているのが実情ではないでしょうか。基準がはっきりしなければ、バッターは自信を持って見送ることができません。広島の丸佳浩、阪神の鳥谷敬、埼玉西武の栗山巧ら選球眼のいいバッターが、序盤に苦しんだのは、この影響も大きいでしょう。

 1度、狂ってしまった感覚を元に戻すのは大変です。今季はシーズンを通じて、バッターにとっては対応に苦労することになるかもしれません。それだけに対戦の少ない相手と対峙する交流戦では、ピッチャー優位の傾向が強まるはずです。

 交流戦は気分も一新し、波に乗り切れなかったチームには挽回のチャンス。何より重要なのは大型連敗をしないこと。過去にも交流戦でズルズルと負けてしまい、失速したチームがいくつもありました。連戦で切り替えるタイミングもないだけに、どうやって現有戦力を使って、うまく乗り切るか。例年以上にベンチワークも求められる18試合になるとみています。
 
佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。
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