セ・リーグを、いや日本を代表する2人のセカンドについて話そう。ひとりはカープの菊池涼介。もうひとりはスワローズの山田哲人である。


 昨季は菊池がゴールデングラブ賞、山田がベストナインとタイトルを分け合った。

 言うまでもなく菊池の売り物は守備だ。昨季はセカンドで535補殺を記録し、自らが2013年につくった日本記録(528補殺)を更新した。
「もちろん今季も(自分の記録を)超えたいと思っています。“(補殺記録の)1、2、3位は全部オレじゃん!”みたいになればいい」

 開幕ダッシュに失敗したカープの連敗を7で止めたのも、この男だった。
 4月8日、本拠地での巨人戦。3対2と1点リードで迎えた9回表2死一、二塁。亀井善行が放った二遊間の打球を好捕したのだ。

 これが抜けていたら同点となり、カープの連敗街道は、さらに続いていたかもしれない。値千金のプレーだった。

 この菊池の異次元の守備力を評して、山田は語る。
「正直言って、菊池さんのいるほうには(打球が)飛んでほしくない。(打球に対する)一歩目が恐ろしく速いんです。打つと同時に動いている。大好きなバッティングなのに、打ちたくないという気分にさせられたのは菊池さんが初めてです」

 菊池が守備の人なら、山田は打撃の人だ。プロ入り4年目の昨季は、日本人右打者としては最多となる193安打を記録した。

 率を残すだけでなく、長打力もある。昨季は29本塁打、89打点。今季は一時、3番を任された。

 過日、山田にバットを提供するスポーツ用品メーカーの担当者から、こんな話を聞かされた。
「彼が1年に使用する本数は約4ダース(48本)。これは、他の選手と比較して少ない。技術が高いので、あまり折らないのでしょう」

 そんな山田を、菊池は「天才」と呼ぶ。昨季、3割2分5厘という高打率を残したバッターが「本当に感覚がすぐれている」と脱帽するのだから、規格外の才能の持ち主なのだろう。

 これまでセカンドというと、どこか地味でバイプレーヤーのイメージが強かった。「いぶし銀」「職人芸」が褒め言葉の定番だった。

 しかし、この2人に“縁の下の力持ち”の印象はない。タイプこそ違うが、2人ともスタープレーヤーである。この先、セカンドに憧れる野球少年が増えるかもしれない。

<この原稿は2015年5月15・22日号『週刊漫画ゴラク』に掲載されたものです>


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