5月6日(水)に行われたJ2リーグ第12節、愛媛FC対コンサドーレ札幌の一戦において、DF村上佑介選手がニンジニアスタジアムに子どもたち50名を招待することになった。
 これは、2児の父親でもある村上選手が 『多くの子どもたちに、プロのサッカー選手同士が真剣勝負を展開する試合をスタジアムで生観戦してもらい、もっとサッカーを好きになってほしい』という想いから、「ゴールデンウィーク最終日のホームゲームにおいて、中学生以下の子どもたち50名をバックスタンドA席に招待する」企画が持ち上がり、実施されることになったのである。

 参加者募集は、ホームページなどを通じ、4月の後半から開始された。村上選手の人気も相まって、観戦を希望する問い合わせが殺到した模様で、1週間ほどで定員に達し、好評のうちに応募が締め切られることになった。

 当日、スタジアムに招待された子どもたちは、J2の公式戦を観戦するだけではなく、試合開始前に開催された愛媛FC選手によるサッカー教室に参加したり、キックオフ前のピッチ内練習時に選手たちとハイタッチを行った。試合終了後には、選手と記念撮影もでき、夢のようなひと時を楽しんでいたようだ。

 このイベントが行われる前日、クラブ事務局から私のところに連絡が入った。
「村上選手の希望なのですが、明日、スタジアムに招待される子どもたちへ、試合前に応援のレクチャーをして欲しいのです」
 村上選手のイベントへの協力依頼であった。

 普段から愛媛FCへの協力は惜しまないつもりであるし、それも村上選手からの要望とあっては無視できるはずもない。二つ返事で引き受けることにした。

 当日を迎え、試合前のサッカー教室が終わった頃、子どもたちも時間が空き、そのタイミングで応援練習を行うことになった。選手たちやスタッフの皆さんが誘導してくれて、私の周囲には多くの子どもたちが集まってくれた。

 愛媛FCサポーターズクラブ「ラランジャ・トルシーダ」のメンバーとともに、子どもたちに挨拶しながら、チャント表を配って応援のレクチャーを始める。最初はキョトン……と私たちのお手本を、ただ見守っていた子どもたちも次第に馴染んで、私の太鼓に合わせて手拍子を打ったり、チャント表を見ながら歌ったりしてくれた。

 その場に立ち会ってくれた村上選手やFW表原玄太選手、GK大西勝選手も、一緒になって応援練習を盛り上げてもらった。最後は、皆で「エヒーメ・エフシー!」と基本コールを大合唱して練習を終えた。10分間ほどのレクチャーだったが、少しでも応援の楽しさが伝わってくれているとうれしく感じる。今回、声を掛けてくれた村上選手や、お手伝いしてくれた表原選手や大西選手には感謝の気持ちをお伝えしたい。

 現在、ホームゲームにおける入場者の数が昨シーズンに比べ、減少傾向にある。観客動員増に向けて、事務局やスポンサー、自治体やサポーターもいろいろな取り組みに励んではいるが、未だ大きな成果は得られていない。
 
 そんな中、今回は愛媛FCの選手である村上選手がスタジアムへの招待イベントを企画してくれたのだ。本当にありがたいことであるし、地域の子どもたちへ夢を与えてくれる素晴らしい試みだったと思う。

 参加した子供たちはきっと喜んでくれているだろう。今後、リピーターとしてスタジアムへ足を運んでくれるかもしれない。将来的な集客にも期待が持てるものだ。

 だが、同時に想うのは、観客動員に関して選手たちへ心配をかけてしまっているという事実。クラブとして健全な状況とは言い難いし、サポーターとしても非力さを痛感している。

 今すぐにでも、選手たちにはオレンジ色に染まった満員のホームスタジアムで存分に試合をさせてあげたい。プロのサッカープレーヤーとして、たくさんのお客様の前で試合することで気合が入り、モチベーションも向上すると思う。チームとしての力も発揮できるだろう。

 しかし理想と現実には、大きなギャップが存在する。そのギャップを乗り越え、選手たちへ良い環境を提供することは容易ではない。ただ、今回のようなイベントを提供してくれた選手たちへの恩返しのためにも、仲間と試行錯誤しながら集客に向けて努力を続けたいと感じている。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>
 1967年5月14日、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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