マッチこと近藤真彦さんが50歳にして「ITU世界ロングディスタンストライアスロン選手権」(スウェーデン・6月27日開幕)の日本代表に選ばれたというニュースが報じられた。この発表については一部のトライアスロン関係者には1週間ほど前から情報が入っていた。しかし、予想を上回る反響に驚くやら、感心させられるやら……。
 ちなみに近藤さんがトライアスロンをやっていることは、トライアスロン業界内では周知の事実だった。6年ほど前からトライアスロンを始めた彼は、国内外の大会に一般参加者として頻繁に参加していたからである。普通にエントリーして出場する。スターである近藤真彦らしくない、むしろ一般人のような振る舞いに、最初は戸惑ったが、「彼がそれを望むなら」と特別扱いされることもなかった。だからそこまで騒がれなかったものの、彼がトライアスロンをやっていることは認識されていたわけで、今さら驚くことではないとの思いがあった。ところが、実際に公に発表されると、そのことを知らない人は多かった。その反響の大きさも予想以上。テレビのワイドショーではすべて報道されたし、スポーツ紙も大きく取り扱っていた。あらためて近藤さんの存在の大きさを感じさせる出来事だった。

 今回、僕が一番気になったのは、どうしてここでジャニーズが発表することにしたのかだ。これまでは彼の意向もあり、トライアスロンでの取材は基本NGで、あくまで参加者の1人というスタンスを守ってきた。個人的には、これは近藤さん自身がトライアスロンを本当に大切にしているんだなと理解してきた。実際に会場で会う彼は少年のような顔をして、そこには芸能人っぽさは見られなかった。しかし、ここへきての発表。どんな意図があったのだろうか……。

「発表するいいきっかけだった」という見方もある。確かにそろそろ公式にトライアスロン関係のことを表に出さないと、中途半端になっていた感もある。知られているけど、知られていない。そんな中での世界選手権への出場。普通のトライアスロン大会出場よりニュースとしてはるかにインパクトもある。状況を整理するには、いい機会だったのかもしれない。

 一方で「競技団体のプロパガンダ」に協力した(させられた?)と見ることもできる。近藤真彦というスターを使ってトライアスロン、さらにはITUロングディスタンス世界選手権への注目を集めようという動き。もちろんそれは関係者なら望むところだが、そんなことで彼が動くとも思えない……。

 それに「話題作り」とは考えにくい。芸能活動をする身であるなら、世の中に定期的に話題を提供し、媒体に出る機会を作っておく必要がある。だが、彼の場合は本当に自分が好きで大切にやってきたというパターン。「ネタ作り」のひとつではないかという見方は、人気に陰りのある人ならあり得るが、無理やり話題を提供しなければいけない逆境にもない。これはないだろうと思っている。

 まぁ、真相は近藤さんに聞いてみるしかないわけで、ぜひ機会があれば聞いてみたい。いずれにしても、彼はこれからも純粋にトライアスロンを楽しんでいくのだろう。我々も、1人のトライアスリートとして、このスポーツを長く愛してくれることを望んでいる。
 ともあれ、まずは近藤さん、世界選手権をじっくり味わってきてね!

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール
 スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための新会社「株式会社アスロニア」の代表取締役に就任。13年1月に石田淳氏との共著で『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)を出版。
>>白戸太朗オフィシャルサイト
>>株式会社アスロニア ホームページ


◎バックナンバーはこちらから