来年3月に開催される第2回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の体制検討会議が27日、都内で開催され、巨人・原辰徳監督に日本代表監督への就任要請を行うことが決まった。加藤良三コミッショナーは「実績、経験、世代交代、もろもろの要素を総合してお願いするのがベスト」と原監督を推薦した理由を語った。正式な要請は近日中にも行う予定。会議に参加した王貞治コミッショナー特別顧問は「球界のためという意識は持っているはず。苦しい選択になると思うが理解してもらえると思う」と就任受諾への期待感を示した。
(写真:巨人・原監督への代表監督就任要請を発表する加藤コミッショナー(右)と王顧問)
 注目の監督人事はコミッショナーの鶴の一声で決まった。北京五輪代表監督・星野仙一氏の就任辞退で紛糾が予想された今回の会議。出席者から具体的な監督候補がなかなか挙がらない中、コミッショナーが原監督の名前を口にした。「原君の名前が出てきて、それがいいとなった。その話が出てからは時間はかからなかった」(王顧問)。会議は前回より短い1時間強で終了した。

 会議には加藤コミッショナー、王顧問をはじめ、星野氏、東北楽天・野村克也監督、東京ヤクルト・高田繁監督、野球評論家の野村謙二郎氏が出席。前回と同じメンバーが顔を揃えた。
 会議前には「日本シリーズ優勝監督を」との意見も出ていたが、埼玉西武・渡辺久信監督が難色を示したことや、選手選考の日程などの問題もあって、この案は事実上消滅。また、就任要請があれば「やってもいい」と前日のテレビ番組で発言していた野村監督は「オレはいいよ」と会議で“辞退”を表明した。

 結局、「現役(監督)にも、現役でない人にも“オレがやりたい”という人がいなかった」(王顧問)中、苦し紛れの“原代表監督”案が飛び出した。加藤コミッショナーも「現職の監督にお願いするのは、リスク、負担が大きい。しかし、この段階において、現職の監督を視野に入れざるを得ない」と苦渋の決定だったことを認めた。

 原監督に関しては「リーグ優勝3回、日本一も1回ある。今回のクライマックスシリーズにも勝った」と加藤コミッショナーが、実績を高く評価。「若くて元気がいい人という観点で、選手たちに号令ををかける立場としては適任」(王顧問)と、そのフレッシュさも要請の決め手となった。またWBCの1次予選アジアラウンドの主催者が巨人の親会社である読売新聞社であることも考慮されたと思われる。代表監督になった場合、シーズン開幕前のキャンプ、オープン戦の期間中、チームを離れることになるが、巨人の滝鼻卓雄オーナーは就任容認の考えを示した。

 当事者となった原監督は「要請があった場合は、オーナーの指示に従いたい」とのコメントを発表し、受諾は確実な情勢。加藤コミッショナーは「日本シリーズを前にして監督を騒がせることは本意ではないが、日本野球の発展のためやむを得ない」と日本シリーズ前にも就任要請を行うことを明らかにした。また王顧問は「彼が受けてくれれば」と前置きした上で、「私の経験を参考にしてもらえるなら、何でも話をしたい」と最大限のサポートを約束した。

 今回の監督人事を巡る混乱は、北京五輪で指揮を執った星野氏のWBC代表監督“続投”ありきで話が進んでいたことが原因だった。会議では、2013年に実施予定の第3回WBCについて2年程度の時間をかけて準備することが決まったものの、もし原監督が就任を固辞した場合はどうするのか、といった次善策を協議した様子はみられなかった。

「2009年WBCは誰が指揮をとっても厳しい戦いになる」。加藤コミッショナーは前回会議と同じ言葉を発した。しかし、一連のドタバタぶりをみていると、WBCで結果が出なかった時の言い訳のようにも聞こえかねない。今回せっかく開催されたトップ会合も、現時点で今後の実施予定はないという。首尾よく“原ジャパン”が誕生しても、球界一丸となって万全の体制を敷くことはできるのか。監督の方向性が決まっただけで一件落着では、代表監督や選ばれる選手たちは本当に「厳しい戦い」を強いられそうだ。