2015年最初の試合、タイポ戦(18日)は5-2の勝利。この試合で僕はハットトリックを達成しました。個人としてもチームとしても、いい新年のスタートが切れましたね。

 ハットトリックは本当に久しぶりです。メキシコのイラプアトにいた時以来と記憶していますから、実に10年ぶり。今季はなかなかゴールを決めきれなかっただけに、たまっていたものが、ちょっとだけ出た感覚です。

 前回も書いたように、僕は12月中旬から約1カ月のインターバルを、自分自身のプレーをもう一度見直し、鍛え直す時間に充てました。チームメイトと密にコミュニケーションをとり、味方のクロスにうまくタイミングを合わせることに加え、裏への抜け出しなど、オフ・ザ・ボールの動きにも磨きをかけました。

 自分の持っている引き出しを可能な限り、生かして増やす。タイポ戦での3得点は、その取り組みの成果が出てきたように感じます。

 1点目は、まさに裏への抜け出しから生まれたものです。僕がゴール前で先にボールに触れ、シュートを打とうとしたところ、GKに倒されてPKを獲得。これを決め、1-1からの勝ち越しゴールとなりました。

 2点目は右足でのボレーシュートによるゴールです。相手サイドバックがクリアしようとしたボールがミスキックとなり、僕の頭上へ。狙いを定めて叩きこみました。

 そして3点目はループシュート。ボールを持っていたMFフェルナンドがペナルティエリアの中央で相手2人に囲まれ、僕のいた左サイドが一瞬フリーになりました。

「チャンス」と思った瞬間、ここしかないというところにフェルナンドからのパス。GKが飛び出したのを見逃さず、右足でこすり上げるようにボールを浮かせ、ゴールマウスの中に入れました。

 動き出しや味方との連携といった課題をクリアしての得点で、かつ勝利に貢献できた点は素直にうれしく感じます。ただ、喜びはあくまでも一瞬のもの。ハットトリックという結果が出たからこそ、次の試合では真価が問われます。

 実は、この試合は延期になった開幕戦の振替日程で行われたため、次節(24日)も同じタイポとの対戦です。相手はやられているだけにやり返しに来るでしょう。マークもきつくなることは間違いありません。

 その中で結果を出すには、より強い気持ちとアグレッシブさを持つ必要があります。「同じ相手だからやりやすい」と安易にとらえていては、きっと仕返しをされるでしょう。

 良かった時こそ、切り替えてやるべきことをやる。それがプロとして長く活躍し続けるためのポイントだと僕はみています。おそらく、これがサッカーに限らず、他の世界でも一緒ではないでしょうか。

 ですから、僕も24日に向けてハットトリックのことは、もう頭から切り離しています。クラブは先日、ギニアからバリー・ママドー・ハディというストライカーを獲得しました。香港の他クラブでも活躍しており、得点力不足を解消しようとしているのは明らかです。

 助っ人として外国人枠(出場は4人まで)がある以上、成績が伴わなければ、来季の契約はありません。残り10試合、5月頭までの残り3カ月ちょっとで、どうやって生き残るか。試合のみならず、練習からすべてが競争です。

 リーグ戦に限れば3連勝とチーム状態は悪くありません。どうすれば勝てるのかチーム全体でイメージが共有できていなかった昨季と比較すれば、今季はベースの部分はしっかりしています。あとは個の力を加えて、いかに勝利を増やすか。僕もその一員として試合に出て勝負をかけたいと考えています。

 アジア杯は練習と重なって、なかなかリアルタイムで試合を見ることができませんが、同世代のヤット(遠藤保仁)の活躍には刺激を受けました。日本では本田圭佑の発言が審判批判ととられ、罰金を命じられたことが議論になっているようですね。

 サッカーを人間が裁くものである以上、審判との関係は永遠のテーマです。いろいろな国でプレーしていると、審判も国・地域によって傾向があることに気づきます。香港の場合、レフェリングがその場の勢いに流されがちです。ファウルされた側が猛抗議をすると、その勢いに押されて、警告レベルとは言えないプレーでもイエローカードを出すケースを何度か見てきました。

 もちろん、しっかりとした基準でジャッジする審判もいますから、一概に「ダメだ」と決めつけるのは良くありません。僕は、どんな審判であれ、いいジャッジに対しては「今のは良かったよ」と声をかけるようにしています。

 褒められて気を悪くする人間はいません。審判も人間ですから、こちらが感情的になれば、相手も同様の対応をするようになります。イライラして集中力を欠けばパフォーマンスにも影響が出ます。

 アジア杯は決勝トーナメントに突入します。負けたら終わりの一発勝負は些細なことが明暗を分けます。審判にはリスペクトの心を持ち、うまく意思疎通を図りながら、敵に回さないことが重要でしょう。

 日本の連覇に期待しつつ、僕は香港で、またいい報告ができるよう、今できることを精一杯やっていきます。2015年も引き続き、よろしくお願いします。

(このコーナーは第3木曜更新です) 
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