12月7日のリーグ戦で今年の公式戦は終了となりました。次の試合は新年1月18日。今季から始まったプレミアリーグは、9クラブと奇数のリーグ戦のため、どこか1つは必ず休みになる変則日程です。開幕もアジア大会の代表に選手が招集されていた関係で3試合延期になっており、まだリーグ戦は5試合しか消化できていません。

 次戦まで間が空くため、チームは少し早いウインターブレイクとなりました。1週間、練習はオフだったのですが、僕はその期間、ある準備にいそしんでいました。

 それは講演です。香港の日本人学校に招かれ、小学1年~6年生と先生、保護者を対象に話をすることになりました。時間は1時間。テーマは「僕が海を渡った理由」です。
(写真:学校では「熱烈歓迎」とモニタに表示して迎えてくれた)

 サッカースクールで小学校低学年を相手にすることはあっても、講演は初めて。どうすれば飽きずに聞いてもらえるか、何を話せば、うまく伝わるかをずっと考えながら、内容をまとめていました。

 迎えた当日はスライドを流しながら、これまでの道のりを紹介しました。生い立ちから、プロ入り、そして世界に飛び出すまで。亡くなった母からもらった「好きなサッカーで世界に胸を張れる選手に」というメッセージも紹介しながら、なぜ、僕が海外でプレーをし、今もサッカーを続けているのかを話しました。

 子どもたちは皆、将来の夢を持っているはずです。では、それを叶えるにはどうすればいいのか。僕なりの答えは、こうです。

「自分の夢をどんどん周りに発信しよう」

 夢を語り続けていれば、自ずとそのことを日々、意識するようになります。すると、夢を叶えるために、今、何をすればよいのかを考え、行動に移すようになるはずです。夢を聞いた人たちも、きっと応援してくれるでしょう。どうすればいいかをアドバイスしてくれるかもしれません。

 夢は心の中に抱いているだけでは夢のままで終わってしまいます。実際に言葉にして、動き出すことで、夢は現実に変わるのではないか。僕はそう考えています。

 先月は日本人を対象にした学習塾にも招かれ、受験生に話をしてきました。相手は日本の中学校や高校を受験するために勉強をしている小学6年生や中学3年生。勉強のことは何も彼らに教えられませんが、試験と試合は良い結果を出さなくてはいけない点では共通しています。そこで僕のサッカーでの経験を踏まえ、本番に向けて、どうやって緊張や不安を乗り越えればよいのかを話しました。

 勉強もサッカーも大切なのは基本です。そして、準備が重要だと感じます。基本を積み重ねて、しっかり準備をしておけば、どんな応用問題が来ても慌てず、対処できるのではないでしょうか。

 こうして皆さんの前で話をする経験は、自分の考えを整理し、次のステップに進む上で、とても役立ちます。当たり前過ぎて忘れかけていたこと、分かったつもりになっていたことを、再認識させてくれるのです。

 たとえば、今季の僕は昨季と比較すれば、なかなかゴールが奪えていません。その原因は自分なりに分析できています。ひとつは、上がってくるクロスの数が今季は少ないことが挙げられるでしょう。昨季とメンバーが入れ替わり、クロスの質が変わったため、なかなかゴール前でのチャンスがつくれていません。

 しかし、「クロスが来ないからゴールを決められない」と言っていては成長はありません。練習からチームメイトとクロスを合わせる回数を増やし、実戦で数少ない機会を決める。その準備を怠ってはいけないと感じます。

 得点が決まれば、ボールの出し手も自信がつきます。「どんどんクロスを上げよう」と積極的な気持ちになってくれれば、いいボールが来る頻度も高まるはずです。それがゴールにつながる好循環を生み出します。

 そして、クロス以外のパターンを増やすことも大切です。たとえば、こちらがオフ・ザ・ボールの動きで、相手の裏をとり、そこにボールが出てくれば、ゴールの確率はアップします。

 では、どのように動き出すのか。まずは基本に忠実になることでしょう。ボールを持っている味方がルックアップした瞬間、一気に加速する。これはボールをもらう上での原理原則です。

 味方が下を向いている時に、いくら動いてもボールは出てきません。顔を上げたタイミングを逃さず、相手の裏をとる。この基本を貫いていれば、ボールが来る回数は増えていきます。ルックアップする直前に逆方向に動き、相手を誘い出すといった応用もできるようになるでしょう。

 基本と準備をおろそかにしない。これが受験生同様、僕が現状を打破する上でも重要なテーマになっています。幸い、まだ試合消化も少なく、挽回の機会はたくさん残っています。1カ月の中断期間は、チーム内でコミュニケーションを密にする時間と前向きにとらえていいでしょう。
(写真:いつも声援を送ってくれるサポーターに結果で応えたい)

 年内最後のユンロン戦は2-1の勝利で締めくくることができました。僕は後半途中で交代し、代わりに入った外国人が追加点を決めています。個人としては複雑な心境であることは確かです。ただ、ベンチメンバーが結果を出せるのはチーム状態が上向きとも言えます。今度は僕がゴールをあげて、勝利に導きたいとの気持ちは一層、強くなりました。

 年末年始は中国では盛大にお祝いをするのは旧正月のため、おそらく、ほぼ普段と変わらず、練習の予定が入るでしょう。元英国領だった影響かクリスマスの方が盛り上がっているかもしれません。

 我が家もテレビの横に小さなクリスマスツリーを飾っています。子どもたちはサンタクロースに手紙を書いて欲しいプレゼントをお願いしているようです。一番下の娘はレジのバーコード読み取り機のおもちゃが欲しいみたいで、しきりにアピールしていますね(笑)。

 最近はサンタクロースも予算があるらしく、あまり高価なものはプレゼントできないようですが(笑)、今年もクリスマスの朝には枕元に贈り物が届くことでしょう。

 僕が皆さんにプレゼントできるのはゴールです。クリスマスは過ぎてしまいますが、新年から心機一転、たくさんのゴールをお届けきるよう、チームメイトとともに頑張ります。 

(このコーナーは第3木曜更新です) 
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