香港はようやく朝晩が涼しくなり、湿度も下がってサッカーをするには適した季節になってきました。

 僕たちYFCMDも9日のリーグ戦で、ようやく今季初白星をあげることができました。相手は2部から昇格した黄大仙。前半にあげた2点を守り抜き、2-0の勝利です。

 無失点勝ちはチームにとって何より自信がつく結果です。なんといっても昨季からここまで、僕たちは公式戦で1試合も相手を0点に抑えることができませんでした。早々に2点をリードした後、うまくゲームをコントロールし、確実に勝ち点3を獲得したことは大きいでしょう。

 僕自身、開幕戦以来のフル出場。前線へのロングボールを収めて攻撃の起点をつくり、リードしてからサイドに持ち込んでファウルを誘うなど、相手陣内での時間を増やすことができたと感じています。正直、このところは途中交代や途中出場が続き、「もっとできる」という思いがありました。それだけに試合後、監督からは「いいプレーをしてくれた」との言葉をもらい、個人的にも充実感のある1勝になりましたね。

 昨季もそうでしたが、YFCMDは若手が多く、成績を残すことがチームを成長させる一番の手段です。ひとつ勝ったことが手応えとなり、組織の連係はもっと高まっていくことでしょう。2勝、3勝と続けて結果を出すことで、互いが「これで行ける」という雰囲気をもっともっとつくっていきたいと感じています。
(写真:チームメイトとの食事会も開き、結束を高める)

 僕はここまで1得点。開幕2戦目のイースタン戦で先制ゴールをあげました。ブラジル人MFのフェルナンドが左サイドを駆け上がり、マイナスにグラウンダーのクロスを入れてくれたのを右足のインサイドで流し込んだものです。

 この得点は、うまく駆け引きに勝って奪ったゴールと言えます。ペナルティエリアに入るか入らないかのところでバックステップを踏み、相手DFのマークをうまく外せました。その結果、フリーでいいボールが入り、ジャストミートでシュートが打てたのです。フェルナンドの上がりに合わせて、「オレがオレが」とゴール前に突進していたら、きっと得点にはならなかったでしょう。

 イースタンは開幕前から優勝候補の一角とみられていた強敵。相手に押し込まれる展開が続いていただけに、先制弾で流れを変えられた点は良かったです。後半に追いつかれ、最終的には引き分けでしたが、シュートがポストをかすめる好機もつくり、価値ある勝ち点1になりました。

 ただ、次に欲しいのは勝利につながるゴールです。来週はHKFAリーグカップでユァンロン(26日)、トーナメント方式のカップ戦である香港シニアシールドでイースタン(30日)と再び激突します。シニアシールドは一発勝負ですから、勢いに乗れば、一気に勝ち上がることも可能です。イースタンに今後は勝って波に乗りたいと思います。

 またユァンロンには昨季までのチームメイトFW吉武剛が既に3ゴールをあげ、好調です。チームは別々でも、香港は狭いので彼とは時々会って話をする仲。ピッチ上での対決を楽しみにしています。

 香港に来て2年弱。日々の暮らしにもすっかり慣れ、最近は試合や練習の合間にサッカーの楽しさを現地で伝える活動にも力を入れられるようになってきました。先日は香港在住日本人の子どもたちにサッカー教室を開催しました。
(写真:上級生にはサッカーに打ち込む上での心構えも説いた)

 集まってくれたのは小学校1年~6年までの少年少女40名ほど。年齢もレベルも異なるだけに、僕がまず大事にしたのは、「サッカーを好きになってもらう」ことです。

「好きこそ物の上手なれ」との言葉もあるように、まずは何事も好きにならなくては上達しません。好きだからこそ、「もっとうまくなりたい」「こんなプレーをしてみたい」という目標もできるのです。どんなに能力があっても、イヤイヤやっていては伸びないでしょう。

 僕もボールを蹴り始めた時から今まで30年近く、ずっとサッカーが大好きです。だからこそ、ここまで現役を続けられているのだと思います。きっと、それはこれからも変わらないでしょう。

 香港はサッカー熱は高いものの、リーグ戦の観客は少ないのが実情です。お客さんが増えなければリーグは盛り上がらず、プレーの質も高まりません。香港には約2万人の日本人が駐在していると言われています。こうした活動を通じて、少しでもサッカーに興味を持ってもらい、スタジアムにも足を運んでくれるとうれしいです。

 日本ではシーズンも最終盤となり、現役引退を表明する選手も出てきました。シドニー五輪の予選を一緒に戦った主税(MF藤本主税、ロアッソ熊本)もそのひとりです。彼とは2年前の指導者ライセンス講習会もともに受講し、いろんな話をしました。

 引退セレモニーでは「必ず監督になって帰ってきます」と宣言したそうですが、考え方もしっかりしていますから、いい指導者になるでしょう。第2のサッカー人生が非常に楽しみです。

 また名古屋時代にチームメイトだった直志(MF中村直志)もユニホームを脱ぐことになりました。名古屋一筋で14年。ひとつのクラブで、ずっとプレーし続けるのは簡単なことではありません。

 それだけ直志にはチームに不可欠な存在感がありました。しっかりとボールをキープでき、ドリブル、キック、当たりの強さ、どの要素をとってもレベルが高い。監督としてみれば、「使ってみたい」と思わせる力を持っていました。

 加えて、直志自身、何が強みで、チームに何ができるのか、己を知っていたように感じます。僕の経験上、サッカーでチームに必要とされるために、一番重要なのは「自分自身をよく知ること」。持ち味を理解し、「これができる」「こうしたい」と周囲に明確にアピールすれば、相手も良さを生かしてくれます。好結果を生めば、互いの信頼感にもつながるのです。

 その意味では、今年のチームで僕はまだまだ存在感を示せていません。僕も周囲も、100%の信頼関係ができていないように感じます。

 頼りにされるには、練習から入念な準備を行い、得点という成果をあげることが第一です。ゴールと勝利。繰り返しになりますが、この両方を突き詰めて、チームの大きな柱になれるよう頑張ります。 

(このコーナーは第3木曜更新です)
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