日本は大雨で被害が出ている地域もあると聞きます。皆さんの地域は大丈夫でしょうか。

香港は連日、晴天が続き、気温は30度超え。しかも湿度が高く、外にいるだけで汗が噴き出てきます。そんななか、僕たちは練習場の関係で、昼間に炎天下でトレーニングをせざるをえません。練習中は、こまめに水分を摂り、熱中症にはならないよう気をつけています。

リーグ戦は今月末の開幕予定が、リオデジャネイロ五輪を目指すU-21香港代表の試合が9月上旬に組まれた関係で、約1カ月延期となりました。日本なら、リーグ戦の開幕が、この時期になって変更されるのはあり得ない話です。試合チケットを前売りする習慣がないからこそ、良く言えばフレキシブルに日程を動かしても問題ないのでしょう。

 なんだか肩すかしにあった気分でしたが、今は開幕が延びた分、しっかりと準備ができると前向きにとらえています。先日はフィジカル強化の一環でフェリーで30分ほど離れた島に渡り、軍隊のブートキャンプのようなトレーニングをしてきました。大きなタイヤを持ち上げたり、ロープをつけて引っ張ったり、重い砂袋を背中に乗せたり、ハンマーを振り上げて下ろしたり、吊輪にぶら下がって懸垂をしたり……。なかなかキツい内容ながらも、皆で楽しく取り組めました。

今季のチームは運営会社が変わり、チーム名もYFCMDに変更されました。監督は昨季までと変わらないものの、外国人が僕も含めて7人となり、多国籍な陣容になりました。

内訳はスペイン人が3人、ブラジル人が1人、ガーナ人が1人、そしての日本の僕とMF井手口正昭です。香港リーグにも外国人枠はあり、同時にピッチに立てるのは4人まで。香港で長年プレーして外国人扱いとはならないガーナ人を除く6人で4枠を争うかたちとなります。

新加入の選手は持ち味をアピールして早く信頼を勝ち取る必要がありますから、練習はいい意味での緊張感が漂っています。僕も昨季は結果を残したとはいえ、気は全く抜けません。こういった競争は、開幕に向け、僕自身はもちろん、チーム全体のレベルアップにつながるはずです。

各選手の母国語も多様なため、チーム内での練習中の指示は英語がメイン。それを各言語ができる選手が訳して伝えていきます。僕は井手口の通訳担当です。

ただ、井手口は積極的に自ら話しかけるタイプのため、英語がみるみる上達しています。時々、おかしな英語を使って、周りからいじられることもありますが、それも含めて、チームによく溶け込めています。

僕たち日本人は英語を受験科目として習ってきたため、どうしても「正しく使って、間違えてはいけない」ととらえがちです。でも、僕はいろいろな国を渡り歩いてきた経験上、「言葉は間違えてナンボだ」と考えています。

とにかく失敗を恐れず、話しかけてみる。これがコミュニケーションの第一歩です。伝えたいという思いが全面に出ていれば、少々、文法や表現が間違っていても相手は意図を読み取ってくれます。ヘンな言葉遣いになって笑われても、逆にお互いの距離を縮めるきっかけになるのです。

僕は、これまで行った先々では、現地語を少しでも話せるように努力してきました。日本もそうでしょうが、やはり、早く受け入れてもらうには、相手の言語で話すのが一番です。香港といえば広東語。日本から移り住んで1年半、広東語もある程度の日常会話ができるレベルになってきています。

最初は旅行者が使う「指差し会話帳」や漢字の筆談でのやりとりから始まり、チームメイトに教えてもらいながら、徐々に知っている名詞と動詞の数を増やしていきました。「食べる」「行く」といった動詞と、地名や食べ物の名前を覚えていけば、その組み合わせで、なんとか会話は成立します。

また、歌を聞くのは、曲とセットで言葉も覚えられますから、言語を覚えるにはいい方法です。徐々に言葉が分かり出すと、テレビを見たり、歌を聞いても音の羅列でしかなかったものが意味を持って聞こえてきてうれしくなります。

 あとは日々、分からない単語や表現に出会ったら、調べたり、聞いたりして、自分のものにしていく。こうして今は、日本語に英語、スペイン語、広東語と4つの言語を操りながら、香港でサッカーをしています。加えてポルトガル語もスペイン語に近いため、ブラジル人選手にはカタコトのポルトガル語で話しかけることもありますね。おかげで今回、新しくやってきた外国人とも、すぐに仲良くなれました。

小さい頃から英語には興味があり、実際の成績も良かったものの、当時は、まさか、いろいろな言語を僕が発せるようになるとは思いもしませんでした。正直、複数の言語を使い分けるのは、非常に頭を使う作業です。練習が終わると、体も頭もクタクタ(笑)。でも、いろんな国の言葉を覚え、話せることは、現役を終えた第二の人生においても大きく役立つと信じています。

今月末からは中国本土でキャンプの予定です。暑さで体調を崩したり、ケガをしたりしないよう、1日1日を大切にしながら、100%の状態で開幕を迎えたいと思っています。

(このコーナーは第3木曜更新です)
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