10日のリーグ最終戦は1-4の敗戦。僕も前半途中で負傷交代し、最後をいいかたちで締めくくれませんでした。

 交代したのは右ふくらはぎを痛めてしまったからです。最初に違和感が出たのは試合2日前。対人の練習をしていてステップを踏み、ジャンプした時に少しバランスを崩したかたちで着地してしまいました。その日は雨が降っており、人工芝がスリッピーだったので少し滑ってしまったのでしょう。

 翌日は大雨で練習が中止となり、試合当日はぶっつけ本番。アップの際にコーチ立ち会いの下、状態を確認したところ、走ってボールも蹴れたのでスタメン出場することになりました。

 雨季に入った香港はこの日もあいにくの天候で、試合開始の頃には雨が降り始めました。ピッチはぬかるんでおり、若干、不安を抱えてのキックオフです。

 相手は優勝を決めたキッチー。最後に一泡吹かせて終わりたいところでしたが、いざ試合が始まると足がつったような感じになってしまい、満足のいくプレーができません。これではチームに迷惑をかけると、自ら交代を申し出ました。

 今季は良いコンディションをキープし、13得点をあげて得点王争いにも絡むことができました。ところが、ラストで待っていたのは落とし穴。これはサッカーの神様が「まだまだ」と言っているのでしょう。来季へ大きな課題ができました。

 幸い、歩くことはでき、日常生活には支障ありません。来季に備えてケガをしない体づくりをするように、との“忠告”だととらえ、オフシーズンを過ごすつもりです。

 クラブとしても今季は事実上の最下位に沈みました。八百長騒動でシーズン中に2チームがリーグ戦不参加となったため降格を免れたものの、個人もチームもレベルアップしなくては来季の上位浮上は望めません。

 まだ契約合意には達していませんが、クラブからは残留の方向で話をいただいています。来季こそは勝利につながるゴールを量産できるよう、オフも気を緩めることなくしばらくしたらトレーニングを再開させたいと思っています。

 プロの世界はオフになると残念な知らせも飛び込んできます。2シーズン、ともに頑張ってきたFW吉武剛が来季は契約を結ばないことが発表されました。彼は僕が香港にやってきて右も左も分からない中、現地のことをいろいろと教えてくれた良き相談相手でした。

 またピッチでは同じFWの選手として良きライバルであり、刺激し合える仲間だったと感じています。32歳ですが、昨季はベストイレブンにも選出され、まだまだ飛躍できる選手です。香港で他クラブに移籍するのか、それとも日本を含めた違う国のリーグで現役を続けるかは分かりませんが、お互いに活躍して再会できることを期待しています。

 さて、日本代表メンバーが発表になり、いよいよW杯へのムードが高まってきました。今回のザックジャパンでは、FW大久保嘉人の選出が「サプライズ」と報じられていますが、僕は発表前から彼が選ばれる確率は高いと予想していました。

 大久保は単にゴールをあげ、好調というだけでなく、前回の南アフリカW杯で主力を張り、国際試合でも活躍しています。スペインとドイツでプレーもしていました。経験があり、なおかつ結果を出しているのですから、大舞台には必要なメンバーです。彼が代表入りしたのはチームにとって大きなプラスとなるでしょう。

 また、マナブ(FW齋藤学)も代表入りを果たしましたね。すぐに「おめでとう。でも、ここからだぞ」と連絡すると、「フクさんが言うように、ここからが勝負です」と返ってきました。彼にとって、このW杯は世界へ羽ばたくためのスタートラインです。

 このステージで、いったいマナブがどこまでやれるのか。彼自身も今の位置を知りたいでしょうし、その存在を世界に知らしめたいと思っていることでしょう。ACLの広州恒大戦(4月22日)では右サイドから内に切り込んで、豪快なミドルシュートを決めましたが、あのレベルでできれば世界でも十分通用するはずです。

 もちろん、世界は決して甘くないでしょう。普段とは全く異なる緊張感の中、長距離移動しながら試合で100%の力を発揮するのは容易ではありません。本番で世界の厚い壁を感じ、悔しさを覚えることもあるのではないでしょうか。

 その肌で感じた“世界”をマナブには大切にしてほしいと願っています。それが次のステップに進むための課題となり、モチベーションとなるからです。24歳のマナブには大きな可能性があります。このブラジル大会を足がかりに日本を代表する選手へとステップアップしてくれることを楽しみにしています。

 20代の選手が多い中、34歳のヤット(MF遠藤保仁)が選ばれたことも個人的には刺激を受けました。彼とはシドニー五輪の最終予選などで一緒に日本代表として戦ってきた同士です。日本では30代に入ると、選手として下り坂とみる風潮が強い中、同じ世代の人間が代表の主力で活躍しているのはうれしいことです。

 世界を眺めれば、今季限りで引退するハビエル・サネッティが40歳、シーズン途中から選手兼任でマンチェスター・ユナイテッドを率いたライアン・ギグスも40歳、フランチェスコ・トッティは37歳と、トップクラスの30代後半から40代の選手がたくさんいます。Jリーグでも今季7ゴールを決めているマルキーニョスは38歳ですが、全く動きに衰えを感じません。

 おそらく今回のW杯でも僕と同年代の選手が各国から出てくることでしょう。サッカーを知り尽くしたベテランが、どんなプレーをみせてくれるのか。僕もW杯から、さらなる成長のヒントを見つけたいと考えています。

 引き続きしばらくは香港に滞在し、シーズン中にできなかった家族サービスもするつもりです。娘たちがやっているサッカーの練習を観に行ったり、時には指導もできればと思っています。

 また香港のクラブに在籍する日本人選手を集めての食事会も開催します。これは移籍当初から他の選手に声をかけていた企画で、ようやく実現の運びとなりました。

 現在、香港では僕も含めて7人の日本人選手がいます。年齢も違えば、歩んできた道のりも異なります。しかし、この香港で出会ったのもひとつの縁です。まずはお互いに食事をしながらつながりを深め、切磋琢磨し合える関係を築ければうれしいです。

 今のところ、帰国は6月20日前後を予定しています。日本でトレーニングを続けつつ、久々に愛媛にも行けたらいいなと思っています。

 シーズン中、日本から僕のことを気にかけてくださった皆さん、本当にありがとうございました。皆さんの思いにもっと応えられるよう、来季も今季以上の成績を目指します。引き続き、福田健二をよろしくお願いします。

(このコーナーは第3木曜更新です)
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