日本は大雪で被害が出ているようですね。香港も同じように寒波がやってきて、こちらでは珍しい1ケタ台の気温の日もありました。沖縄より南に位置する香港で、こんなに寒くなるとは思いもしませんでした。

 もちろん香港の人々は寒さには不慣れです。ダウンジャケットを羽織ったり、まるで真冬のような格好をしています。しかも、なぜか建物内では冷房がかかっているため、室内でも結構寒い……(苦笑)。暖房設備も十分ではありませんから、街なかで暖まれる場所があまりありません。

 そんな中、2月15日に開催されたサウスチャイナ戦は1-3の逆転負け。実はその1週間前に行われたユァンロン戦も1-3と同じスコアで敗れています。しかも、2試合とも前半に先制しながらゲームをひっくり返されているのです。いずれも後半のゲームの進め方が悪く、同じパターンでやられてしまいました。

 サウスチャイナ戦では前半ロスタイム、僕のゴールで先制しました。左からのFWウォン・ワイのコーナーキックがニアのいい位置に飛び、僕がうまく相手のマークを外してヘッドで合わせた得点です。

 本来なら、これで波に乗らなくてはいけないところ、後半は2点目を獲って試合を決めようとの思いが空回りし、チーム内のバランスが崩れてしまいました。1点リードしているのですから相手の出方をよく見て対応すればいいのに、自ら悪い流れをつくってしまったのです。

 現状、横浜FC香港は八百長問題で今季の残り試合参戦停止が決定したハッピー・ヴァレーとテュンムンを除けば、最下位に甘んじています。今後は23日にレンジャーズ、26日に太陽ペガサスとの連戦です。

 いくら若手が多いとはいえ、プロとして同じ負けを繰り返すことは応援してもらっているサポーターにも失礼でしょう。2戦連続の悔しい敗戦を糧に、選手ひとりひとりが意識を高め、いいパフォーマンスを出せるように促していきたいと思っています。

 結果が出ていないチームですが、この2月から新たな日本人選手が加わりました。MF井手口正昭。横浜FCから期限付き移籍でやってきました。阪南大時代は関西大学リーグでMVPに輝いた実績もあり、技術の高いボランチです。また運動量も豊富で、縦横無尽にピッチを駆け回り、相手のボールを奪って攻撃の起点となっています。

 彼にとって海外でプレーするのは初めて。香港にやってきた際には、僕にもいろいろと話を聞いてきました。僕が井手口に伝えたのは、「海外で成功するにはサッカーがうまいだけではダメ」ということです。

 サッカー選手であればプレーでアピールするのは当然の話。その前提としてチームにしっかり溶け込み、周りから必要な存在として認められなくてはなりません。自分の世界に閉じこもるのではなく、積極的にコミュニケーションをとれるかどうか。僕はここが活躍のカギを握るとみています。

 香港にやってきて約20日。井手口はその点で非常にうまくチームにフィットしています。自ら話しかけて考えをチームメイトに伝えることで連係を短期間で高め、試合での好プレーにつなげています。この姿勢には海外で何カ国もプレーしてきた僕でさえ感心するほどです。

 おそらく、これから彼は低迷中のチームにいい刺激を与えてくれることでしょう。香港で学んだことが選手、人間の器を広げ、一回り大きくなって日本に戻れるはずです。

 この2月は井手口の加入以外に刺激を受けた出来事が、もうひとつありました。前回紹介したFC東京の香港遠征です。2月1日、FC東京の選手たちと、香港在住の日本の子どもたちによる交流会が実現しました。当日は試合翌日のクールダウンをしていた選手たちの元を訪ね、サイン会や写真撮影で盛り上がりました。

 僕も当日は現場に行き、MF石川直宏やDF徳永悠平といった懐かしい面々と久々に再会しました。また香港まで応援に駆けつけた植田朝日さんらサポーターの皆さんとも話をすることができました。

 早いものでFC東京を離れてから、もう11年になります。在籍はわずか2年で、その間、誇れる成績を残せたわけでもありません。

 それでも、サポーターからは「今でもオマエのことは忘れていないぞ。どこに行っても応援しているから」と熱いエールを送られました。その言葉を聞いた時には胸にジーンとくるものがありましたね。

 またクラブの月刊誌では「レジェンド」として僕を取り上げていただくことになり、取材も受けました。10年以上経っても、所属した選手を大切にしてくれるFC東京というクラブと、サポーターには改めて感謝の気持ちでいっぱいです。

 いつも書いていることですが、僕ができる恩返しはゴールをあげ、最高のプレーをみせることしかありません。ゴールとチームの勝利だけに集中し、この2連戦を戦い抜くつもりです。次回こそ、いい報告ができるよう、精一杯頑張ります!

(このコーナーは第3木曜更新です)
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