香港は旧正月を1月31日に控え、新春を迎える華やかなムードに包まれ始めています。日本では大晦日にカウントダウンをして盛りあがりますが、こちらの節目は旧正月。そのため、香港での年越しは普段と変わらない感覚でした。

 日本人学校に通っている娘たちは冬休みだったものの、現地の子どもたちは元日を除き、普通に学校があったようです。お店も通常営業しており、僕たちも練習が新年早々にありました。

 旧正月前のにぎやかな街中とは裏腹に、香港のサッカー界では暗いニュースが飛び込んできました。今季から1部に昇格したハッピー・バレーというクラブが八百長に関与したとして、選手とチーム幹部が逮捕されたのです。

 香港はサッカー人気は高いものの、多くのファンの関心は海外に向いています。そのため、リーグ戦自体の観客は決して多くありません。クラブは資金力のあるオーナーによるワンマン経営で、選手の待遇は恵まれていないのが実情です。

 ただし、サッカーくじではヨーロッパリーグやJリーグの試合に加え、僕たちのリーグ戦も対象になっています。かつて香港のサッカーくじは非合法の賭博として行われていた歴史もあり、ここからは推測ですが、そういった複雑な事情が八百長の引き金を引いてしまったのかもしれません。 

 しかし、スポーツに関わる人間として試合で手を抜いたり、相手を利するプレーをするのは、あるまじき行為です。それで一時的に懐が潤っても、得られたお金はすぐになくなってしまうでしょう。残るのは一生消えない心の傷です。

 目の前のお金に走らず、一生懸命プレーしていれば、もっと大金を手にした可能性だってあったでしょう。好きで始めたサッカーで、選手としての道を台無しにしてしまったことは本当に残念でなりません。

 この騒動で新年最初に予定されていたハッピー・バレーとの試合は中止になってしまいました。八百長問題はテレビ、新聞でも大きく報道され、イメージダウンは避けられないでしょう。
 
 この24日には2014年最初で、旧正月前最後のゲーム(対ユァンロン)が行われます。他クラブのこととはいえ、僕たち選手は一生懸命プレーしてファンの信頼を取り戻さなくてはいけません。

 横浜FC香港は昨年末、テュンムンを2-1で破って、ようやく初勝利をあげました。僕もヘディングシュートを決め、勝ちに貢献できてうれしかったです。1カ月以上、試合間隔が空いてしまいましたが、連勝で旧正月休みに突入したいものです。

 公式戦はなくても、調子はいい状態をキープできています。こちらは日本ほど試合数が多くありません。だから、試合はない時は練習や紅白戦で追い込み、メリハリをつけるようにしています。香港に来て、ちょうど1年。そういった調整も自分の中でできるようになってきました。

 旧正月でリーグ戦が中断している間には、「AET CUP」という国際大会が開催されます。地元のシチズンに、ポルトガルとロシアのクラブが参加。そして日本からは古巣のFC東京がやってきます。

 FC東京を離れて早11年。当然のことながら選手はかなり入れ替わりましたが、当時から在籍するスタッフもおり、再会が非常に楽しみです。

 せっかくの機会だけに何かできないか。香港で20年近く選手、コーチとしてサッカーに携わっている鶴田壮一郎さんと協力し、FC東京の選手たちと香港在住の日本の子どもたちが交流する場を設けようとのアイデアが生まれました。

 早速、FC東京在籍時にお世話になったスタッフの方にお願いし、試合の翌日にこの試みが実現しそうです。当日は70~80人くらいの子どもたちが集まるとか。僕も練習などのスケジュールが重ならければ、ぜひ行きたいと思っています。

 こういった交流を通じて、香港にいる子どもたちが、よりサッカーを好きになり、目標に向かって努力するきっかけが生まれれば本当にうれしいです。

 国が違っていても、同じサッカーという“共通語”でコミュニケーションがとれるのがスポーツの良さ。残念な出来事があった今だからこそ、その魅力をうまく生かし、香港の人たちにもプレーでメッセージを伝えていければと考えています。
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