ここ2試合の愛媛は、いずれもロスタイムの失点で試合の結果が大きく変わってしまいました。ホームでの水戸ホーリーホック戦はは勝ちが引き分けに、アウェーでの京都サンガF.C.戦では引き分けが負けになってしまいました。

 日本でも欧州でも南米でも、ロスタイムは試合が大きく動く時間帯です。それは選手の疲労だけでなく、メンタル面が大きく関係していると感じます。どうしても勝利や引き分けといった結果を目前にして平常心を保てず、スキが生まれてしまうのです。

 また勝負どころの時間だけに、意思疎通も結果を左右します。ピッチ上の選手、ベンチが、何を目指して試合を終わらせるのか。これが一致しないと望んだ結果にはなりません。

 お互いにコミュニケーションをしっかり取った上で、自分の役割を理解し、集中してプレーする。当たり前と言えば当たり前ですが、これがロスタイムの失点を防ぐ一番の方法でしょう。

 選手は誰しも勝利を求めて、入念な準備をし、ピッチに立っています。勝てば、その瞬間は天国ですし、負ければ地獄です。特にロスタイムで試合の結果が変わると、地獄から生き返ったり、天国から叩き落とされたような気分になります。

 試合の90分間も大事ですが、ロスタイムの数分間は、まさにやってきたことすべてが凝縮される時間帯と言っていいでしょう。そこで2試合連続で失点をしてしまったことは、チーム全体で大いに反省しなくてはなりません。もう終わったことは取り戻せませんから、これを教訓に最後まで勝ち切れるチームに成長する必要があると考えています。

 僕自身は水戸戦でベンチ入りし、途中出場でピッチに出る寸前に交代を取り消されてしまいました。交代直前のプレーでケンゴ(石井謙伍)が先制ゴールを決め、1点を守る態勢にシフトしたためです。

 それまでの状況は0-0。僕が試合に出ることで流れを変え、あわよくばゴールも決めるつもりでしたから、実際にプレーできなかったのはとても残念です。

 しかし、これも次なるチャンスのためのエネルギーと僕は前向きにとらえています。試合に出られなかった思いをしっかりと心に刻み、今度こそはピッチで溜まりに溜まったエネルギーを爆発させる。今はその一心で日々の練習に取り組んでいます。

 さて、いよいよロンドン五輪が開幕しました。サッカーのみならず、世界のトップ選手が第一線で命を削って戦う姿は観ているだけで大きな刺激を受けます。

 個人的にはテレビ番組で一緒に出演したやり投げの村上幸史さんや、最年長(71歳)で五輪に出場する馬術の法華津寛さんの活躍に期待しています。4年に1度の大舞台で、どのようにここまでの時間を過ごし、どんな勝負を挑むのか。同じアスリートとして、そんな部分に注目しながら観戦したいです。

 おそらく、多くの選手は五輪まで順風満帆な道のりばかりではなかったでしょう。時には大きな失敗も味わったはずです。しかし、挫折を成長の糧とし、くじけそうな自分に打ち克って競技を続けてきたからこそ、今、晴れの舞台に立てているのでしょう。

 僕自身も昨季、今季と思うような働きができず、苦しい時間を過ごしています。ただ、それでも僕を見捨てず、時に励まし、時には相談に乗ってもらえる仲間がいるのは本当にうれしく、ありがたいことです。

 いつも支えてくれる家族、応援してくれるファン……多くの人のおかげで僕はサッカー選手ができています。その方たちのためにも、挫折は成長への一里塚と信じて、これからも頑張ります。

 ぜひ、一回り大きくなった福田健二を観に、またスタジアムへ来てください。よろしくお願いします。

(この連載は毎月第2、4木曜更新です)


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