長友佑都の“偉大なる目標”元アルゼンチン代表MFハビエル・サネッティが今季限りで引退するという。インテルでは1995年に加入して以来、公式戦で800試合以上をこなしてきた鉄人。アキレス腱断裂から今季復帰を果たしたものの、不惑の40歳はついにスパイクを脱ぐ決断に至るというわけだ。報道によれば引退後はインテルに残り、フロントに入ってクラブを支えていくようである。

    サネッティは1998年のフランスW杯にも出場し、日本とも対戦している。日本のファンにも馴染みのある選手である。
中盤、左右サイドバックをこなせるユーティリティーのプレーヤーであり、攻守のエネルギッシュな働きからイタリアでは「トラクター」との異名を誇った。そして何より彼を語るうえで外せないのがキャプテンシーである。国際色の強いチームを束ね、セリエA5連覇や欧州チャンピオンズリーグ制覇を成し遂げた。

   また、インテルに加入した長友が、彼から多大な影響を受けてきたこともよく知られている話だ。昨年、イタリアでインタビューした際も、ところどころにサネッティの存在が出てきた。

「サネッティは『チームのために戦うことで自分も安定したプレーを出せる』と言っていて、その言葉は自分の心に残った。僕自身も、いかにチームのために戦っているか、犠牲になっているかを常に考えている」

   チームのために尽くせているか、チームのために走ることができているか。長友がインテルでレギュラーの座を不動のものにできたのも、サネッティから学んだことが少なくないからだ。

   長友の野望と言えば、「世界一のサイドバックになる」だ。
   しかしこれはプレー面だけを指して言っているわけではない。サネッティのように周囲から信頼される人柄を含めてのことだ。

   長友は言っていた。
「もちろんプレーもそうですけど、人間的に成長していってこそ『世界一のサイドバック』がついてくるんじゃないかと僕自身は思っているんです。サネッティはやっぱりその象徴だし、僕ももっと見習わないといけない。インテルでサッカーをやっていくなかで、人間的な部分も成長させてもらっている」

   2月2日のアウェー、ユベントス戦で長友はキャプテンマークを巻いてフル出場している。試合途中から巻いたケースはあるが、スタートからは初めてだった。彼がいかにチーム内で影響を及ぼす存在になりつつあるかを証明するエピソードでもある。心身の充実によって、彼が思い描く「世界一のサイドバック」に一歩ずつ近づいていることは間違いないと言える。

   仲の良かったウェズレイ・スナイデル、アントニオ・カッサーノがインテルを離れ、クリスティアン・キヴ、そしてまたサネッティが現役を引退する。インテルの一時代が終わりを告げるとともに、気がつけば長友はキャリアのある一人になっていることに気づかされる。これからはもっと責任ある立場になっていくだろうが、「世界一のサイドバック」になるためには超えなければならないハードルなのかもしれない。

   またしても優勝争いに加われず、今季も悔しいシーズンとなったのは事実。インテルというビッグクラブで、チームを勝利に導ける存在になれるかどうか。サネッティの教えを胸に、長友はさらなる飛躍へと向かう。

(このコーナーは第1木曜日に更新します)
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