日本代表とイタリア代表が対戦するブラジル東部、海岸沿いの商業都市レシフェにやってきた。

 ブラジリアから空路で約3時間。到着して荷物を受け取りにいくと、サンバのリズムが聞こえてくる。アコーディオン、太鼓、トライアングルを手にしたカナリア色の服を着た“サンバ隊”が我々を迎えてくれる。到着した日は同地でスペイン―ウルグアイ戦があったため、観戦者やメディアで空港はごった返していた。

 空港の外に出ると、ムッとした湿気の高い空気が襲ってくる。日本で言うと5月ぐらいに感じたブラジリアと違って、レシフェは明らかに夏(暦で言えばブラジルは冬だというのに)。タクシーで海岸沿いまで出ると、大西洋に面したビーチが広がる。バカンスに訪れた水着姿の人々と出くわし、計画都市で静かなイメージのあったブラジリアの町とはまるで違う雰囲気だ。

 思わず開放的な気分になってしまうのだが、ここレシフェは犯罪の多い町だとも聞いている。立ち並ぶ家々をよく見てみると、侵入者を防ぐために壁を高くし、壁の上には鉄ビシのようなものを置いているのだ。
携帯電話で地図を見ながらホテルの外に出ようとすると、ホテルのスタッフからは「携帯はきちんとポケットに入れてください。奪われてしまうかもしれないから」と注意もされた。警戒心をマックスにして、出歩かなければならなかった。

 物騒な町であることは間違いなさそうだが、近年は治安も改善されてきたという。おしゃれな新しいレストランを多く見かけ、実際、入ってみたイタリアンレストランは雰囲気も味も抜群に良かった。ホテルのスタッフを含め、ブラジル人は親切な人が多く、フレンドリー。そういった意味で、この町での生活も大きなストレスを感じることはあまりない。普通に生活をしている分には、特に問題なさそうだ(もちろん油断は禁物だが)。

 ただ、サッカーの観戦でこの町を訪れるとしたら、ちょっとした難点がある。それはスタジアムまでのアクセスがあまり良くないことだ。
 私はブラジリアから移動してきてホテルのチェックインを済ませた後に、スペイン―ウルグアイ戦を取材するために、町の中心街から18キロほど離れているアレナ・ベルナンブーコへ向かった。指定のホテルからスタジアムまで送迎してくれるメディアバスを使わずにタクシーで向かったのだが、渋滞に巻き込まれて大変だった。

 ブラジリアのように地下鉄が現段階で整備されているわけでもなく、観戦する人々もバスかタクシー、または徒歩ということになるのだろうか。海岸沿いの町だが、スタジアムがあるのは内陸部。歩くといっても大変だし、治安の問題もある。

 レシフェで予定されているグループリーグ3試合のうち、2試合が19時開始のナイター。テレビの放送時間ばかりでなく、暑さも考慮されているはず。しかし、来場者の観点に立てば夜遅くなっての移動は、危険も伴う。スペイン―ウルグアイ戦は特に問題が出なかったようだが、日本―イタリア戦も同じ19時開始。警察官が大量に動員されてはいるものの、この試合を訪れる人は警戒心を弱めないほうがいいとは思う。

 このレシフェのスタジアム付近は将来的にホテルやショッピングセンターなど商業施設を併設する計画があるのだという。しかしW杯1年前の現状では、広大な土地はあるものの、見渡した限りでは何かでき上がっているは様子はなかった。殺風景な場所に、ただただ大きなスタジアムがあるだけである。商業施設ができてくればにぎやかになるのだろうが、アクセスの問題から言ってもW杯本大会までにせめてホテルぐらいは必要だと思うのだが……。

 ただ、スタジアムは完成したばかり。見やすく設計されていて臨場感あふれるいいスタジアムだと感じた。

 ブラジルに0-3と大敗を喫したザックジャパンは、このレシフェでアルベルト・ザッケローニ監督の母国イタリアと対戦する。一体、どんなドラマが待ち受けているのだろうか。
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