「熊本で、クワレスをやってもらえませんか?」
 この5月、キャンピングカーショーのイベントへの出演依頼で、熊本に行くことが決定した。プロレスの試合では、何度も行った熊本へ、まさかミヤマ☆仮面で訪れる日が来るとは思わなかった。

 実は……クワレスは、九州に何かと縁がある。ミヤマ☆仮面のマスクを作ってくれたのが、九州プロレスを立ち上げた筑前りょう太選手であり、クワレス特製リングを作ってくれているのは福岡在住の古賀邦博さんという方だ。

 古賀さんは、オオクワガタ採集名人として、地元・福岡では名が知れており、僕もレスラー時代からお世話になっている。九州の佐賀平野は、オオクワガタの三大産地のひとつで、僕も東京から足繁く通ったものである。

 そんな思い入れの強い九州行きに、今回、とても面白い話が持ち上がった。なんとキャンピングカーを運転して九州まで行くというのだ。『オートキャンパー』(八重洲出版)というキャンピングカー雑誌の取材も兼ねて、神奈川から九州を旅するというロマンあふれる企画である。

「ミヤマ☆仮面親子が、オオクワ採集にアタックするのも面白いですね」
 キャンピングカーは、確かにクワガタ採りには、もってこいの車かもしれない。採集ポイントそばで前泊できるのだから、朝一で行動するには、最高の環境だ。しかし、5月という日程は、クワガタ採集には少々早過ぎる。

 5月15日、いよいよ熊本へ向けて出発する日を迎えた。今回のルートは、自宅のある相模湖からスタートし、大阪の南港までキャンピングカーで走り、フェリーにて北九州の門司港へ入る。そこから再びキャンピングカーで福岡、佐賀、熊本と旅する日程である。

 キャンピングカーは、高さが3メートルもあるが、運転は思っていたほど難しくはない。道路が混んでいる時間帯は車内で寝て、空いている時に移動できるから、スイスイ行けるのがありがたかった。

 途中で疲れたら、足を伸ばしてフラットの状態で横になることができるのも大きい。車内には、ダブルベッドほどの広さの寝室が2つもあるから、家族で行ってもゆっくりできるのだ。ミヤマ☆仮面のイベントは家族総出で行なうため、広いキャンピングカーは本当に助かる。

 それに最近の高速道路のサービスエリアは、食事のおいしいお店がたくさん入っているし、シャワーやお風呂まで完備しているので、とても快適なのだ。

「なんか自由を手に入れた気分だ」
 時間に縛られない旅ができる点が、キャンピングカーの最大のメリットかもしれない。僕は興奮を抑えられないまま、九州へと上陸したのであった。

 福岡でもおいしいグルメに舌鼓を打った後、佐賀平野で古賀さんとおち合い、オオクワガタ採集にトライした。カメラマンやディレクターさんも密着しての9時間に及ぶ熱血取材であったが、残念ながらオオクワガタを目にすることはかなわなかった。

 しかし、この後に向かった熊本で大きな感動を味わうこととなった。
「垣原さん、見て下さい! 僕が25年前に苗木から植えたクヌギですよ」
 そこには立派に育ったクヌギ林が並んでいた。

 古賀さんは虫採り名人というだけでなく、オオクワガタが棲める森を作ろうと約1000本のクヌギを育てている熱い方なのである。
「クワレスのリングは、この木から作っているのですよ」
 クワレスで使用しているミニチュアのクヌギの台場は、古賀さんが手塩にかけて育てた木からつくっているのだ。

 今回、その場所に足を運び、クヌギの成長を見られたのは大きな収穫だった。
「25年という歳月が、ここまで立派な木を育てるのですね」
 僕は、樹皮をさすりながら、問いかけるようにつぶやいた。地道に続けることの大切さをこの木から学ばせてもらった気がする。

 熊本で行なわれたキャンピングカーのイベントも大成功で無事に終わり、帰路に向かおうとした時、ふと天草に行きたくなった。 
「よし、これから天草に行こう!」
 宿の心配がいらないから急遽、予定を変更できるのも、キャンピングカーの最大の利点だ。

 熊本から天草五橋を渡ると、そこは別世界のような素晴らしい大自然と、歴史が刻まれたお寺を数多く見かけた。僕は早速、息子を連れて、キリシタンの歴史や日本最大の一揆「天草・島原の乱」を学ぶために資料館を回った。天草四郎や隠れキリシタンの歴史を抱える天草にいると“自由”の有難さを強く感じる。

「やっぱり天草まで来たのだから、ミヤマ☆仮面のクワガタポーズを広めて帰りたい」
 地元の保育園にもお邪魔させてもらい、園児たちと交流をさせてもらった。突然のミヤマ☆仮面訪問に子どもたちは大喜びだ。

「クワガタポーズで、クワクワ~」
 園児たちとは昆虫体操や虫クイズ、綱引きなどを行なった。レスラー時代とはまた違う、エキサイティングで充実した旅は名残惜しかった。ちなみに今回の旅の模様は只今発売中の『オートキャンパー』7月号に掲載されている。

「子どもたちに虫を好きになってもらうべく、これからも日本中を回りたいな」
 これは、僕の野望である。キャンピングカーがあれば、実現は夢ではないかもしれない。8年目を迎えたミヤマ☆仮面の活動は、最高のパートナーを手に入れ、好発進したのであった。

(毎月10、25日に更新します)
◎バックナンバーはこちらから