マエケンこと前田健太が球団提示の2億1千万円を保留した。本人が要求する2億3千万とは2千万円の開きがあった。

 気になったのは金額の開きではない。査定の中身に対する考え方の違いだ。球団は「一昨年は9回を投げ切ったのが8回あった(完投数は6)。今年は3回(完投数は5)」と1試合を投げ切った数の減少を問題にした。

 これに対しマエケンは「(完投は)僕が決められる範疇ではない」と反論した。

 客観的に見て、私はマエケンに軍配を上げる。というのも、もし完投数の多寡で年俸が決まるのなら、スターターは終盤、誰もマウンドを降りようとしなくなるのではないか。

 マエケンが言うように完投させるか、リリーフに後を託すかは、あくまでも監督が決める問題であり、そこにスターターの意思が介在するようになれば、継投策は無茶苦茶になってしまうだろう。

 しかも、カープは打線が弱い。楽に完投できるゲームは、年にそう何度もあるものではない。相手をロースコアに抑えながら味方の援護を待つカープのスターターの心労は察して余りある。

 2012年のシーズンは4月にノーヒットノーランを記録するなど14勝をあげた。球団史上最高の防御率1.53での最優秀防御率に加え、3年連続200イニングもクリアした。「カープだから(年俸が)上がらないと思われるのは嫌だ」とのマエケンのコメントがいじらしい。

(このコーナーは書籍編集者・上田哲之さんと交代で毎週木曜に更新します)
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