サンフレッチェ広島は、いよいよ優勝をかけた大一番が迫ってきた。東洋工業(!)時代から、なんとなく応援してきた身としては、ぜひ優勝してほしいものである。

 今季のサンフレッチェの成功を語るとき、もちろん、さまざまな要素がありうるだろう。ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督の功績も大きいだろうし、森保一監督の手腕も見逃せまい。

 ただ、個人的には、やはり佐藤寿人の存在が大きいという、おそらくはかなり常識的な感慨をもたざるを得ない。

 J2に降格したときもチームを去らず、自分のスタイルで点取り屋の役割を貫く姿には本当に頭が下がる。そして、あらためて思うのだ。カープにも佐藤のような存在がほしい。そうすれば、チーム力全体が底上げできるのではないか。少なくとも念願の3位を目前にして、今季のような大失速など起きないのではないか。

 たしかに、投手陣には前田健太がいる。しかし、毎日出場する野手に、そういう存在がほしい。
 本来だったら、栗原健太だったのかもしれない。あるいは梵英心か。ただ2人とも故障もあって、柱にはなりきれないでいる。

 とすると、チームの将来を考えれば、やはり堂林翔太ということになるのだろうか。

 日本代表(侍ジャパン)とキューバ代表の強化試合を見ましたか? 第2戦、代打で起用された堂林は、その初球、真ん中高めのストレートをものの見事に打ち返して、センターオーバーの大三塁打を放った。彼らしい大きな当たりだった。

「さすが、広島のプリンス!」と評判もよかったが、気になるのは次の最終回の打席である。キューババッテリーも、高め、ストレート系は危険だと判断したのだろう。低めの変化球で攻めてきた。結果は……三振である。彼のこういう形の三振は、シーズン中にもさんざん見せられた。

 野村謙二郎監督は、「三振してもいいから振りきれ!」と教えているのかもしれない。しかし、来季もこれを繰り返したら、あまりにも芸がないのではないだろうか。少なくとも、キューバ戦の内容は、シーズン中から成長したとは言えない。

 しかし、見まわしてみて、今後、「カープの佐藤寿人」になりうるのは、今のところ堂林しかいない。だとすれば、低めの変化球は打てないまでもファウルにして、高めは1球でしとめるような、そういう姿に、そろそろ変わっていくべき時期ではないか。それが、さらなる成長というものだろう。期待をこめて、そう念願する。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します)
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