サッカー日本代表が「決定力不足」と言われた頃の話。NHKのラジオ番組でサッカー解説者のセルジオ越後さんと対談する機会があった。「シュートよりもパスで終わる方が責任を取らなくてすむ。日本人のメンタリティーがピッチに反映されている」と話すと、セルジオさんは「その意見には賛成だけど“決定力不足”という言い方はどうかな」と苦笑した。

「じゃあ、何と呼べばいいのでしょう?」と私が返すと、セルジオさんはあっさり、こう斬り捨てた。「実力不足ってことですよ。シュートを打つ体力、技術、戦術眼、すべて含めてフィニッシュの場面に表れるんですよ」

 8月31日までは4位・東京ヤクルトに2ゲーム差をつけての3位だった。しかし9月に入ってボロボロになり、目下カープは3位・ヤクルトに6ゲーム差の4位(9月19日現在)。CS出場に赤信号が灯っている。

 ピッチャーはそこそこ好投しているのに、打線が火を噴かない。チャンスに1本が出ない。「決定力不足!」と言おうとして、セルジオさんの顔が頭に浮かんだ。正しくは実力不足と言うべきなのだろう。

 昨季も8月31日のまでは借金1と健闘していながら、9月の声を聞いた途端に勝てなくなり、終わってみれば60勝76敗8分けの5位だった。

 ケガ人続出で苦しみながらも、しっかり9月の戦いに照準を合わせてきたヤクルトと8月で燃え尽きてしまったカープ。経験、体力、技術、ベンチワーク……すべて含めて、これが実力の差なのだろう。残り12試合、最後まで意地を示すことで、ヤクルトを苦しめて欲しい。来季につなげるためにも。

(このコーナーは書籍編集者・上田哲之さんと交代で毎週木曜に更新します)


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