先日、カープファンの同僚に声をかけられた。
「いやぁ、カープにはガックリですね……。何か希望はありませんか?」

 思わず考え込んでしまった。「ガ」と「クリ」のあいだに一呼吸あったのが、妙に耳に残る。
「うーん、ない……かな」
「ないの? そんなさびしいことを言わないでよ」

 肝心かなめの時に、まさかの8連敗。もはや、希望はないと言わざるをえまい。なぜ、こんなことになってしまったのか。

 ひとつの象徴的なシーンは9月16日の中日戦だと思う。
 先発ブライアン・バリントンは好投するも、中日・山内壮馬を打てず、0-2とリードされた8回裏。代打の安部友裕がヒット、赤松真人が四球で無死一、二塁のチャンスになった。

 ここで打者は東出輝裕。当然、送りバントで1死二、三塁として、まずは同点を狙うケースである。打順は3番・梵英心、4番・ブラッド・エルドレッドに回るのだから。

 ところが、ここで野村謙二郎監督は賭けに出る。なんと東出にヒッティングを命じたのだ。
 
 結果はショート前への鈍い当たりのハーフライナーとなって、これを井端弘和がワンバウンドで捕って二封。飛び出した二塁走者の安部も刺されて、最悪のダブルプレー。これが響いて、0-2のまま手痛い敗戦となったのでした。

 この頃から野村監督には「誰かが突破口を開かなければ」という趣旨の発言が目立つ。つまり貧打で連敗しているのだから、打って活路を見出す必要がある、ということだ。

 もちろん、それも一理ある。この場面の采配に別に正解はない。送りバントが普通だとは思うけれども、打ってはいけないという法律はない。
 
 むしろ重大なのは大局観の問題とでも言うべきだろうか。8月に東京ヤクルトに最大3.5ゲーム差をつけて3位だった時から、9月17日~19日の3連戦(マツダ)と10月4日(同)を挟んでの6、7日の2連戦(神宮)、このヤクルトとの直接対決6試合の勝負になると、おそらく多くの心あるファンは考えたはずである。

 だとすれば、9月16日は、最悪、引き分け狙いでも構わない。8回裏はまず同点という感覚になる……。

 いや、9・16はあくまでも象徴的な一例に過ぎない。

 たまたま6月に堂林翔太がよく打った、天谷宗一郎が2軍から上がった時によく打った。エルドレッドが来日間もない頃はよく打った、というだけであって、根本的な貧打は変わっていない。長年のチームの欠陥が勝負どころで、より露わになっただけとも言えるのである。

 この8連敗を見せつけられて、あらためて多くの人が気づいたのではないか。希望を見出すためには、このチームは変わらなくてはならない、ということを。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します)


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