一足早いオフに入って、このところカープのニュースは、コーチ人事に関するものが目立つ。

 まず大野豊チーフ兼投手コーチが退任。打撃コーチとしては、新井宏昌さんを招へいした。引退した石井琢朗さんも、コーチとして契約を結んだ。それから投手コーチとして古沢憲司さんが就任する。

 石井がカープに残ってくれたことはよかった。短期間に、しかも控え選手であることが多かったにもかかわらず、あれだけの人気を得た選手である。バッティングも内野守備も、石井の目が光っているというのは大事なことではないか。個人的には、将来は監督就任でいいと思っているのだが……。

 新井打撃コーチ。この方の打撃理論は、確かに傾聴に値する。カープ打線で昨季から、やたら目立ったのが初球打ちである。しかも、ストレートであろうが変化球であろうが、とにかく初球を打って出ているのではないか、と疑うようなシーンを何度も見た。その点、新井コーチのような理論派が入るというのは、おそらく打線にいい影響を与えるだろう。

 大野コーチに関しては、ちょっとしたピンチでも何度も、こまめにマウンドに足を運ぶ姿が見られなくなるのは少々さびしいですね。それよりも気になるのは、球団は9月の、あの大失速について、なにか分析したのだろうか。少なくとも、主たる原因は投手陣にはないと思うのだが。

 古沢投手コーチが、どのようにお考えになるのか、それはわからない。ただ、来季の投手編成のポイントは2つあると思う。ひとつは報道もされた福井優也の中継ぎ転向プランである。彼はコントロールがおかしくなって、今季は低迷した。しかし、もともとボールの力で勝負する投手である。再生への道として、中継ぎは適任だと考える。

 もうひとつは退団濃厚と言われるデニス・サファテである。みなさん、今季の姿を見て、もういらない、という感想をお持ちだろう。そんなことはない。今季はそもそも春先にクローザーをいきなりキャム・ミコライオに変更したりした監督采配もあってバランスを崩してしまった。

 しかし、抑えはミコライオと今村猛では決して万全ではない。私はサファテ再契約を主張したい。

 今回のコーチ人事というのは、いわば小手先の改革という印象をぬぐえない。来季への光は、いまだ見えず、というところだろうか。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します)


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