二宮: 今回は古い付き合いのセルジオさんと、そば焼酎「雲海」を酌み交わしながら、サッカー談義を繰り広げたいと思っています。
セルジオ: いいね。僕、お酒はなんでも飲むんですよ。そば焼酎も好きだよ。

二宮: そば焼酎「雲海」のソーダ割り、Soba&Sodaを用意しました。いかがでしょう?
セルジオ: あっ、おいしい。スッキリするね。

二宮: 辛口のセルジオさんからお褒めの言葉が(笑)。
セルジオ: お酒の良いところは、種類が豊富で飽きないところ。今は、昔よりお酒を楽しむ上では贅沢な社会になったんじゃないですかね。昔は、そば焼酎のソーダ割りなんてなかったもん。

二宮: 確かに。
セルジオ: 焼酎自体、昔は限られたところでしか飲めなかった。僕が日本に来てからでも、ものすごく変わったね。日本の酒文化はすごいよ。

 監督自身が混乱?

二宮: さて、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表は、W杯アジア2次予選で初戦のシンガポール戦を0−0で引き分け、2戦目のカンボジア戦は勝利したものの3得点と苦しみました。アフガニスタンには6−0と快勝しました。「縦に速く」というハリルホジッチ監督のコンセプトについて、どうお考えですか?
セルジオ: 要するに彼の持っている理想はカウンターサッカーなんですよ。W杯でアルジェリア代表を率いてイメージ通りのサッカーで結果を残した。それがベースになっているんでしょう。それで日本に来てすぐの親善試合では、相手もガチガチに引いてこないし、6人の交代枠を使ってフレッシュな選手を入れられるから、縦パス一本で点が取れた。でも、予選となると、相手は格下だから当然、引いて戦いますよね。縦に入ろうとしても裏のスペースがない。

二宮: そこを、どうこじ開けてゴールに結びつけるか。引き出しの多さが求められると?
セルジオ: 縦に速くという部分を勘違いして、焦ったサッカーになっているから、ゆとりがないね。そこは違うサッカーをしなくちゃいけないんだけど、それができるキャスティングになっていない。たとえばヘディングに強い選手を呼んだりしていないから、メンバーを代えても質が落ちるだけになっているね。

二宮: つまり臨機応変に対応できるようなメンバー構成になっていないと?
セルジオ: そう思いますよ。それと、監督の発言を聞いていると言い訳が多いね。東アジア杯の時には、Jリーグの過密日程を問題にしていたでしょう。それなのに、今回のカンボジア戦では海外組をスタメンに多く入れて、“時差ボケサッカー”をやらせている(苦笑)。東アジア杯の時に、コンディションが大事と言っていたんだから、海外組をわざわざ日本に連れてくる必要ないじゃない。中東のアフガニスタン戦で合流させても良かった。もし興行の観点で、求められて海外組を出したとすれば大きな問題だよ。そういった監督自身が混乱しているところが選手にゆとりのなさを生んでいるんじゃないかな。

二宮: しかも相手はランキング下位だから、結果だけでなく内容も求められる。追われる者の苦しみですね。
セルジオ: 代表の選手たちの練習を見ていたら、楽しそうに騒ぎながら狭い中でボール回しして、すばらしいプレーをしている。それが試合でペナルティエリアの中に入ると、別人になってしまうんだよね。これは他のスポーツもそう。ゴルフだってレッスンではナイスショットが打てても、トーナメントになると同じようにできない。それが人間なのね。でも、はっきり言って相手はそんなにうまくないんだよ。雰囲気を変えるのも監督の仕事じゃないかな。 

二宮: 常々、ハリルホジッチ監督は「負けることが大嫌い」と発言しています。
セルジオ: メンタル面は体の動きにもすべて影響するんです。ハリルのかけている圧力は選手たちにも伝わっていますよ。試合中の動きを見ていても、ほとんどベンチから飛び出していて落ち着きを感じない。監督が貫録をみせて、ニコッと笑ったりしたら、選手はもうちょっと余裕を持ってプレーできるはずだよ。

二宮: チームがうまく機能していない時に、コミュニケーションをとり、指示や選手交代で流れを変えるのが指揮官の役割です。その点の評価は?
セルジオ: 交代もとんちんかんだよね。親善試合で6人交代に慣れているから、3人交代の本番では何も変えられない。そもそも、アジアですら日本は横綱じゃないことをちゃんと認識しないと。

 「スターの上にチャンピオンがいる」

二宮: 確かにランキングひとつとっても、日本はイラン(40位)、韓国(57位)に次いでアジア3番手の評価です。それでもサッカーの質はアジアでは最上位でしょう。
セルジオ: いや、横綱じゃないね。まだ大関だよ。ACLにしろ、アジアカップにしろ、東アジア杯にしろ、結果を出していない。今のアジアはだんご状態なのを錯覚していない? 日本が強いというのは根拠のない偏ったイメージじゃないの? 香川真司にしても日本ではスター扱いだけど、ドルトムントの中ではひとつの駒に過ぎない。本田圭佑も、ACミランではレギュラーになれるかなれないか……。

二宮: それでも、以前に比べれば格段の進歩です。
セルジオ: もちろん。選手に責任はないよ。中田英寿がイタリアに行った時から、日本のメディアは変わっていない。「中田、中田」で、そのチームのことを伝えるわけじゃないんだね。現場の監督やサポーターからしてみれば、「中田以外にも、優れた選手はいっぱいいるのに」という思いだよ。結局は、選手じゃなくてアイドル扱い。それが国民がサッカーを覚える上での前提知識になっている。だから、日本代表はAKB48と変わらないんだよ。

二宮: AKBジャパンですか……(笑)。
セルジオ: かっこいい選手がテレビに出たり、CMに出る。本田の空港に着いた時のファッションがニュースになったりするんだよ。代表戦も女性のお客さんが本当に増えたよね。「ウッチー、誕生日おめでとう」とか、まるでアイドルのコンサート。それは本来のスポーツとは違う部分だよね。僕はヨハン・クライフの言葉を、全メディアのスポーツセクションに貼り出したいよ。「スターの上にチャンピオンがいる」。

二宮: 至言、名言ですね。
セルジオ: すばらしいでしょう? 1974年の西ドイツでのW杯でのクライフはスーパースター。クライフ、クライフで勝ち上がって、決勝の下馬評も高かった。

二宮: それが最後、西ドイツに逆転負けして優勝を逃した。敗れはしても、この時のオランダは勝者以上の賞賛を受けました。
セルジオ: メディアがクライフのところに集まった時に発したのが、この言葉。でも、日本はサッカーに限らず、「チャンピオンの上にスターがいる」扱いが多すぎるよ。チャンピオンにならなくても、スターで飯が食えるなら、「別に頑張らなくてもいいじゃん」となるよね。これでは、本物のスポーツ文化は育たない。

 代表に「若手」の概念は不要 

二宮: ところでセルジオさんは、ハリルホジッチ監督のサッカーを吟味し、必要であれば軌道修正を促すはずの強化委員長が一緒にベンチ入りしていることを厳しく批判していました。
セルジオ: そうそう、監督に言われたからベンチ入りするなんて、「どっちが上司だ?」って(苦笑)。しかも試合中、監督が指示を出して、強化委員長が選手交代で動いているなんでありえないよ。完全に強化委員長が仕切られているよね。ただのかばん持ちになっている。

二宮: それで公平なジャッジが下せるのかと?
セルジオ: そもそも代表監督になったら、こんなにいろいろなことができる国って日本くらいのものでしょう。メディアもそれを叩かない。契約期間は明かされていないけど、かなり長期的に契約しているんじゃないかな。目の前の予選のことだけじゃなくて、チームの年齢層にも言及してベテランは呼ばないという方針を打ち出しているよね。予選を勝ち抜いた後のことを、もう考えている。

二宮: 若返りといえば聞こえがいいが、代表に年齢は関係ない。色眼鏡で見るべきではないと?
セルジオ: 代表っていうのは、その時のベストな選手で構成するもので、無理に若返らせる必要はない。イタリアだって、36歳のアンドレア・ピルロを使っている。大久保嘉人も豊田陽平も結果を出しているのに、「年齢でダメ」というのは変だよ。1試合でも2試合でも使って判断するならまだしも、最初から呼ばないのは日本代表じゃない。「オレのチーム」になってしまっている。メンバー発表を自分の晴れ舞台にしてしまっているよ。

二宮: もっとJリーグを知れば、選手選考の選択肢も広がるのでしょうか。
セルジオ: もっとJリーグを見るべきだと思うね。いずれにしても代表に若手という言葉はなくすべき。仮にロシアW杯まで見据えてチーム編成をしているなら、東アジア杯の選考と、今回のアジア予選でメンバー構成が大きく変わっていいものか。東アジア杯で使った選手があまりにも少なかったよね。たとえば東アジア杯でゴールを決めた武藤雄樹は今回の代表には入っていなかった。なんで外したのかな。

二宮: 所属する浦和レッズで活躍して代表でも結果を残しました。確かに引き続き、代表で見てみたい選手でした。
セルジオ: 本当はハリルが「武藤を呼びたい」と言ったら、協会が海外組の武藤嘉紀と勘違いしたんじゃないかな(笑)。武藤違いだったと思いたいよ。

(後編につづく)

セルジオ越後(せるじお・えちご)
 1945年7月28日、ブラジル・サンパウロ出身。両親が日本から移民した日系2世。18歳で名門クラブ・コリンチャンスと契約を結ぶ。入団後から頭角を現し、ブラジル代表候補にも選出される。23歳で一度引退するものの、日本からのオファーを受け72年に来日を果たす。藤和不動産サッカー部で2年間プレーし、現役を引退。その後は指導者に転身し「さわやかサッカー教室」を開催、長年に渡り全国の子供たちにサッカーの普及活動、指導を行った。現在はサッカー解説者として活躍する傍ら、アイスホッケー「HC日光アイスバックス」の役員として、地域密着を目指したチームづくりに参画している。


 今回、セルジオさんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
武蔵野うどん じんこ
東京都新宿区四谷1−23−8
TEL:03-5357-7539
営業時間:
昼 11:30〜14:30(平日)、12:00〜14:30(土)※L.O.14:00
夜 16:00〜23:30(月〜土)※L.O.22:30
定休日:日祝日

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 セルジオ越後さんの直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「セルジオ越後さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は10月8日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、セルジオ越後さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・写真:石田洋之)


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