「リオの風」は、株式会社アライヴンとのタイアップコーナーです。来年のリオデジャネイロ五輪、パラリンピックや国際大会を目指すアスリートを毎回招き、アライヴンの大井康之代表との対談を行っています。各競技の魅力や、アライヴンが取り扱うインヴェル製品を使ってみての感想、大舞台にかける思いまで、たっぷりと伺います。
今回は、、昨年の世界バドミントン選手権女子シングルスで日本人37年ぶりの銅メダルを獲得した三谷美菜津選手の登場です。
 体格の大きな選手に勝つ喜び

大井: トップ選手の打つシャトルはものすごく速いですね。時速何キロくらい?
三谷: 男子だと当たった瞬間は400キロ出ます。女子だと速い選手で300キロですね。

大井: 三谷さんは決して大柄ではありませんが(160センチ)、体格は競技をする上で影響がありますか。
三谷: やはり体格が大きい方が有利です。中国では身長が高くないと代表に入れません。でも、背が高いからといって必ず勝つわけではない。小さくても大きい選手に勝つとうれしいし、そこにやりがいを感じます。

大井: 小柄な選手が勝つには何が重要でしょうか?
三谷: 試合は長いと1時間半程。体格の大きな選手とは動く量が変わってしまうので、体力が必要になってきます。ずっと走り続ける持久力よりも、止まったり、動いたり、中距離を走るような力が求められます。

――昨年の世界選手権では日本人では久々の銅メダルを獲得しました。自分のスタイルに自信がついたのでは?
三谷: 自信はすごくつきましたね。強い相手でも通用することがわかりました。プレーする上でも、いい意味でのゆとりをつくれるようになりました。

大井: 試合へ集中力や気分を高めさせることも大事ではないでしょうか。試合前に特別なことはしていますか。
三谷: 私はあまり、そういうのはつくらないようにしています。いつでも、それができればいいですが、できない場合があるかもしれないので……。

大井: 自然体で臨むというわけですね。試合前にプレッシャーを感じることは?
三谷: ランキングが近かったり、格下の相手だと、「勝たないといけない」と思うことがあります。逆に強い相手だと思い切ってやるだけなので気持ちは楽です。

――試合中、流れが悪くなることもあると思います。どうやって断ち切っていますか。
三谷: シャトルを交換してもらったり、汗を拭いたり、コートをウロウロしたり、何かしら間を取るようにしています。ただ、最近は審判も厳しくなってきて、劣勢の時にはシャトルの交換に応じてくれないことも増えてきました。「早く構えてください」と言われてしまうんです。

 どこでも寝られる強み

大井: コートの中を走り回ると疲れるでしょう。疲労回復の上で、睡眠はどのくらいとっていますか。
三谷: だいたい7〜8時間は寝ていますね。

大井: 海外に行っても、ちゃんと眠れますか。
三谷: 外国の方が日本にいる時よりも空き時間が多いので、時差も関係なく寝られます。

大井: それはいいですね。飛行機の中や遠征先ではインヴェルの携帯用リチャージスリムロングを使うと、心地よく眠りにつけますよ。
三谷: 私は寝具にこだわらず寝られるタイプなのですが(笑)。でも、ベッドによって多少の違いは感じるので使ってみようと思います。

大井: シャトルを打ち続けると腕も張ってくるでしょう。優しくフィットするインヴェルのスリムサポーターで疲れを癒やしてください。マッサージなどのケアもしているのですか。
三谷: はい。8月の世界選手権ではバドミントン協会のトレーナーさんに加えて、所属しているNTTのトレーナーさんが一緒に来てくれました。試合前に時間をかけてマッサージを受けることができて良かったです。

大井: 食生活も気をつかっていますか。
三谷: 日本にいる時は寮で食事を用意してもらっています。海外遠征中は、とりあえず食べられるものを口に入れて、スープなどを日本から持参して補っています。

 練習を続けてポジティブに

大井: 体力、技術も大切でしょうが、相手に勝つにはメンタルも大事でしょう?
三谷: 気持ちが優しいのはダメだと思います(笑)。普段は優しくても、コートに入った時には、ずる賢さや負けん気の強さは必要です。

大井: 絶対勝つと思い続けることだと?
三谷: ただ、思い込みが強すぎると、力が入って良くない。すごく難しいですけど、どこかでリラックスする部分も大切です。

――あまり緊張はしないタイプですか。
三谷: そうですね。団体戦は別ですが、個人戦は勝っても負けても自分の責任なので。

大井: では、性格的にはポジティブ思考で、いつも前向きに考えていると?
三谷: そういうわけではないです。負けが続くと、ネガティブになっちゃいます……。

大井: そんな時は、どうやって気分を切り替えますか。
三谷: ひたすら練習しますね。バドミントンから離れると、気が抜けてしまって、ずるずるダメになってしまう。だから少々、休みがなくても練習しているほうが気持ちはポジティブになれます。

――バドミントンは室内競技のため、空調や照明の当たり具合によってプレーが微妙に左右されると聞きます。そのあたりのチェックは?
三谷: 大会前日に1時間ほどコートで練習できるので、まず、そこで確認します。後は試合直前の練習で感覚をつかんでいますね。風だけでなく、シャトルの種類によっても飛び具合が変わるので、自分で調整しながら打っています。

 体力、スピードでは負けない

大井: 日本はバドミントンのレベルが高く、まずは出場するのが大変だとか。
三谷: 出られるのは最大2枠で、正直、現状は厳しいところにいます。世界ランキングは18位ですが、日本人では4番手で上に3人も選手がいます。

大井: 世界の18位でも五輪に出られないとは厳しいですね。ライバルは中国やアジア勢でしょうか。
三谷: 中国、韓国、タイ、インドネシア、マレーシアが強いです。ただ、最近では世界選手権でスペインの選手が優勝するなど、ヨーロッパも力をつけてきています。

大井: 今後の課題は?
三谷: 調子に波がある方なので、コンスタントに好調を維持して練習量を落とさないようにしたいです。最後まで諦めず、ランキングを上げ、何とか五輪の出場枠に入りたいです。

大井: コーチからはどんなことを指摘されていますか。
三谷: 技術を磨くだけでなく、普段の行動や私生活の大切さを言われています。常にバドミントンのことを考え、すべてを競技につなげる。嫌なこと、苦しいこと、やりたくないことを敢えてすることで人間的に強くなる。他にやりたいことは、現役を辞めてからでもできます。でも、バドミントンは長くできない。今しかできないと思うと、頑張ろうという気持ちが湧いてきます。

――実際、バドミントン以外のことをやりたいと思ったことは?
三谷: それはないです。バドミントンは楽しくて、でも、負けるのが悔しくて、次は絶対に勝ちたいという思いで続けてきました。

――五輪出場権争いへ、今の調子をどうとらえていますか。
三谷: 出場をかけたレースが始まってから、調子が良くなくて、どうしようと不安がありました。ただ、世界選手権前に練習で追い込むことができ、本番では初戦で負けてしまいましたが、プレー自体の内容は良くなっている手応えをつかめました。少しずつでも良くなっている感覚があるので、これをプラスにとらえて結果につなげていきたいです。

――具体的に、他の選手と比べて自分が優れていると思う点は?
三谷: 体力やスピードでは絶対負けないと思っています。代表合宿では一緒に練習しますが、その時も、「ここだけは勝っている」という意識は忘れちゃいけない。そういった気持ちの面でも弱気にならないようにしたいと考えています。

大井: 五輪への目標は紙に書いていますか。具体的に目指すものを書くと、そこへ向かって物事が動き出す。それを見ることで潜在意識の中に目標が自然と入りこむんです。集中力も増すので、とてもいいと思います。
三谷: そういうことはしていませんでした。早速、今日から「リオに行く」と書くことにします(笑)。

(おわり)

三谷美菜津(みたに・みなつ)
1991年9月4日、石川県出身。NTT東日本所属。8歳からバドミントンを始め、金沢向陽高校時代の09年にはインターハイ女子シングルスで優勝。12年のフランスオープンではスーパーシリーズの女子シングルスで日本人初制覇を果たす。13年は全日本総合選手権優勝。14年の世界選手権では3回戦で前回覇者を破る活躍をみせ、女子シングルスの日本人では第1回大会(77年)以来となる銅メダルに輝く。今年は9月のヨネックスオープンでは世界ランキング1位の選手を下し、ベスト8入りした。身長160センチ。

(写真/金澤智康、進行役・構成/石田洋之)