27日、ボクシングのダブル世界タイトルマッチがエディオン大阪アリーナで行われ、WBA世界フライ級は王者の井岡一翔(井岡)が同級10位のロベルト・ドミンゴ・ソーサ(アルゼンチン)を3−0の判定で下し、ベルトを守った。IBF世界ミニマム級は王者の高山勝成(仲里)が同級10位の原隆二(大橋)と対戦。日本人初の主要4団体制覇達成の高山は8ラウンド1分20秒TKOで原を破り、2度目の防衛に成功した。
 手堅いボクシングで“3度目”の初防衛に成功

 派手さには欠けるが、井岡は堅実なボクシングで危なげなく王座を守った。

 タイトルを奪うよりも難しいと言われる初防衛戦。だがミニマム、ライトフライ、フライ級と3階級を制覇した井岡にとっては、勝手知ったるものと言っていい。既に2度経験し、いずれも防衛に成功している。

 井岡が「甘くはない試合と覚悟して準備してきた」という3度目の防衛戦の相手はスーパーフライ級から1階級下げてきたソーサ。身長は6センチ近く井岡が上回るが、リーチは5センチほどソーサの方が長い。ガードを構えると当てるポイントが極端に狭くなる挑戦者は王者にとって難しい相手と言える。

 序盤から井岡は前へと詰めるも、無理に懐に飛び込まない。ジャブで自らの距離を保ちつつフック、ボディーとつなげていく。相手のブローはほぼ見切り、何度も空を斬らした。

 井岡は中盤以降、ボディーで下がったソーサのガードのスキを狙う。顔面へジャブ、ストレート、フックと的確に連打を当てていく。井岡のパンチにソーサの足が止まる場面も見受けられたが、ダウンは奪えない。

 終盤は一発逆転を狙い、大振りになるソーサ。一方の井岡は足を止め、仕留めにかかるが、決して深追いはしない。相手のパンチを避けながら、有効打を重ねていく。リスクを最小限に抑えつつ、勝ちに徹したボクシングだった。12ラウンドのゴングが鳴り、両者は健闘を称え抱き合った。判定結果は王者が3−0――。3人のジャッジのうち2人が119−109で井岡を支持し、1人は120−108とフルマークを付ける圧勝だった。

「勝てたことが一番大きい。“この階級には井岡一翔がいるぞ”とフライ級でアピールしていきたい」と井岡。今後は年内に1試合予定しているという。井岡が目標とするフライ級最強を証明するためには、ライバルの存在を無視できない。WBC王者はローマン・ゴンサレス(ニカラグア)、WBO王者にはファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)と軽量級最強との呼び声高い猛者がいる。WBA前王者のファン・カルロス・レベコ(アルゼンチン)とのリマッチも当然視野に入れる必要もあるだろう。彼らを倒してこそ、真の王者へと近付ける。

 高速ラッシュでベルト守り、統一戦へ

“ライトニングK”のニックネームを持つ王者・高山が、高速ラッシュを繰り出して挑戦者・原の戦意を刈り取った。

 序盤から足を使って、動き回る高山。ジャブ、ワンツーを駆使して、挑戦者を追い詰める。一方の原は、右の強打で対抗。‭手数の高山、一発の原。対照的なファイトスタイルで試合は進んだ。

 3ラウンド1分47秒。偶然のバッティングにより、高山は古傷でもある左まぶたを切った。原も攻勢を仕掛けるが、高山は足を使って回避する。だが4ラウンド以降、スイッチが入ったように勢いづいたのは、むしろ王者の方だった。左のジャブ、右ストレート、左フックと挑戦者をロープ際に追い込んだ。

 高山のエンジンは点火し、一気に畳みかける。7ラウンドには左のボディーがヒットし、原のガードを下げさせた。王者はチャンスとばかりにパンチの回転数をさらに上げる。終了間際に挑戦者をキャンバスに尻餅をつかせたが、これはスリップの判定。8ラウンドもラッシュで原の気持ちを折った。最後はレフェリーが試合を止め、TKO勝ちを収めた。

 ほぼ完勝に近いかたちでのV2達成。高山には次戦以降の戦いに注目が集まる。WBOミニマム級王者の田中恒成(畑中)との統一戦も現実味を帯びてきた。

(文/杉浦泰介)