本日も晴天なり。午後からは徒歩でアルアハリスタジアムに行き、日本代表の練習を取材。シリアに勝って決勝トーナメント進出に大きく前進しただけに、選手たちの表情は明るい。
(写真:代表の決意が記された移動用バス)
◇1月15日 「アジアの頂点を目指して」

 練習の公開は冒頭15分のみ。こちらに来てずっとこの状態が続いている。だからザッケローニがどういう戦術練習をしているのか、分からないのが残念だ(試合翌日だけ公開も、先発組は軽めの調整、控え組はフィジカルコンディションを上げるメニュー)。15分以上すぎると、日本協会の広報から「クローズです!」のひと言が入り、記者、カメラマンが一斉にスタジアムの外に追い出される。
 関係者から聞く分だと、戦術練習ではかなり細かく指示を出しているらしい。途中で何度も止めながら、指示を出しているというのだ。「試合は、練習でやっていることを出すだけ」と“この練習の意図が果たして分かるだろうか”といった雰囲気でメディアに練習を見せていたオシム時代が今となっては懐かしい。

 チームの雰囲気は、闘うムードに徐々になっている。シリア戦の前には、選手たちだけでミーティングを行なったという。南アフリカW杯に出場した選手たちは特に雰囲気を大事にしており、この日、右大腿の肉離れが発覚した松井大輔選手が練習には参加できないながらも、盛り上げ役になっていたそうだ。
「Samurai Blue! Top of Asia!」
 写真は日本代表が使っているチームバス。アジアの頂点への挑戦を成し遂げてみせるというチームの固い決意がバスに記されている。


◇1月16日 「荒々しいドーハドライバーたち」

 メーンのメディアセンターで前日の記者会見。引き分けでもグループリーグを突破できる状況だが、ザッケローニ監督は「明日の試合には絶対に勝たなければならない」と、強い口調で言ったのが実に印象的だった。報道陣には「こんにちは!」と笑顔を振りまきながらも、会見後の囲み取材もこの日ばかりはNG。サウジアラビアは2連敗で既にグループリーグ敗退が決まっているとはいえ、指揮官は試合に向けて緊張感を高めていた。
(写真:レンタカーで立ち寄ったガソリンスタンド)

 午後の公式練習まで時間があったため、メディアセンターの周辺を散歩してみた。やはり砂ぼこりが凄く、10分ほど歩くと喉が痛くなってしまう。白いTシャツも心なしかほこりで黒くなっている。この日は風が強く、コンタクトも痛くなった。

 途中まで歩いたところでショッピングモールで買い物をしていた先輩カメラマンを見つけてレンタカーに乗せてもらった。ここの道路事情も、今までに訪れた中国やベトナムと同じように凄いものがある。車は飛ばしまくり、クラクション鳴らしまくり。譲り合いの精神というものがまったくなく、先に車を入れたもん勝ちだ。赤信号の待ち時間がかなり長いため、多少無理してでも突っ込んでいく車が多い。先輩の運転もドーハ仕様になっていて、ドーハの人たちに負けていない。

 興味があったのがガソリン代。産油国だけに、どれぐらい安いのだろうと思っていたら……。1リッターあたり、何と16円ほど。安い、安すぎます!先輩カメラマンも金額を見て「えっ!そんなに安いの」と驚きの声を上げたほどだ。

 金持ちの国らしく、みなさんいい車に乗ってます。ベンツ、フェラーリ、アメ車、トヨタのランドクルーザーも多い。うらやましい……。そう思いながら明日の試合会場で、きょうの日本代表の練習会場となるアルラヤンスタジアムへと向かった。

(このレポートは不定期で更新します)

二宮寿朗(にのみや・としお)
 1972年愛媛県生まれ。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。格闘技、ボクシング、ラグビー、サッカーなどを担当し、サッカーでは日本代表の試合を数多く取材。06年に退社し「スポーツグラフィック・ナンバー」編集部を経て独立。携帯サイト『二宮清純.com』にて「日本代表特捜レポート」を好評連載中。