欧州サッカーの2015-16シーズンが幕を開けた。来年のEURO2016開催を受け、主要リーグは例年より一足早くスタートした。リーグ・アン(フランス)は8節、プレミアリーグ(イングランド)とブンデスリーガ(ドイツ)とエールディビジ(オランダ)は7節、リーガ・エスパニョーラ(スペイン)とセリエA(イタリア)は6節消化している。今シーズンも世界中から集められた猛者たちの熾烈な戦いが繰り広げられている中、新天地を選んだ日本人選手に注目したい。


 価値を証明する泥臭いストライカー

 5年プレーしたドイツを離れ、イングランドに戦いの場を移したのはFW岡崎慎司(レスター)だ。献身的なプレーが光るプレーヤーだが、徐々にストライカーとして開花しつつある。日本代表歴代3位の通算46得点は現代表では最多。昨シーズンまで所属したマインツでは2年連続2ケタ得点の実績を引っさげ、今シーズンからレスターに加入した。

 昨シーズンは降格争いの中にいたレスターだが、今シーズンからチェルシーやインテルミラノなどを率いた知将クラウディオ・ラニエリ監督が指揮を執る。9月30日現在で、1位と勝ち点差4の8位と上々の位置に付けている。岡崎も開幕2戦目で、早速プレミア初ゴールを挙げるなど、チームからの信頼も厚い。「最後のところで身体を投げ出すのが、自分の一番の武器」と屈強のプレミアのDF陣にも臆することなく立ち向かい、リーグ戦はここまで全試合でスタメン出場を果たしている。

 プレミアリーグでの1シーズン日本人得点記録は、マンチェスター・ユナイテッド時代の香川真司(現ドルトムント)の6だ。現在はまだ1得点だが、岡崎にはそれを通過点に欧州で3年連続2ケタ得点を期待したい。プレミアで自らの価値を上げれば、当然ビッグクラブからのオファーも舞い込んでくるだろう。岡崎のレスターへの移籍金は700万ポンド(約13億円)と言われ、彼の市場価格は清水エスパルスからシュツットガルトへ移籍した時より4倍以上も跳ね上がっている。まずはストライカーとして、その価値を証明したい。

 “代役”から“主役”へ

 その岡崎の“代役”としてマインツに招かれたのが、FW武藤嘉紀である。14年にFC東京に入団した武藤は、ルーキーながら13得点を叩き出した。Jリーグの新人最多得点タイ記録をマークし、ベストイレブンにも選ばれた。プロ2年目の今年は17試合で10得点。チームの1stステージ上位進出に貢献した。今夏、海外挑戦を決めた。チェルシーからのオファーもあったとされるが、武藤はマインツを選んだ。

 イングランドのビッグクラブではなく、ドイツの中堅クラブを選択したことは賢明と言えよう。昨シーズンまでの2シーズン、岡崎が所属していたこともあり、日本人への理解も少なくないはずだ。また岡崎同様にチェイシングをサボらず、チームへの貢献度も高いタイプのアタッカー。体幹もしっかりしており前線で身体を張れることから1トップでの起用が目立っている。

 最前線での仕事を任せられる以上は、チームプレーのみならず、当然ゴールという結果も必要となってくる。“日本サッカーの父”と呼ばれるデットマール・クラマーは日本サッカー史上最高のストライカーと評価される釜本邦茂に「ストライカーはハンターだ。狙った獲物は一発で仕留めろ!」と説いたという。マインツという中堅クラブでは、武藤に回ってくるチャンスも決して多くはない。23歳の若武者が成功を収めるためには、そのチャンスを確実に仕留める決定力。それが岡崎の“代役”ではなく、武藤が“主役”となるための条件である。

 “鬼門”のスペインで輝けるか

 日本人にとって“鬼門”とも言えるリーガ・エスパニョーラに今シーズンから挑むのは、MF乾貴士(エイバル)だ。今年8月、ブンデスリーガのフランクフルトから移籍マーケットから閉まる5日前に、念願だったリーガ・エスパニョーラ入りを決めた。エイバルは過去、シャビ・アロンソ(バイエルン・ミュンヘン)、ダビド・シルバ(マンチェスター・シティ)も育ったクラブでもある。

 2000年の城彰二(当時バジャドリード)以来、リーガ・エスパニョーラには、これまで7人の日本人プレーヤーが挑戦してきた。しかし、15年の月日が経った今も、なかなか結果を残せていないのが実状だ。城、大久保嘉人をはじめとしたストライカーたち、そして中村俊輔、家長昭博といった日本有数のテクニシャンでも、その壁は厚かった。

 乾は、そんな周囲の心配を吹き飛ばしてみせた。現地時間23日に行われたレバンテ戦でスタメンに大抜擢されると後半3分に、得意のドリブルから相手DFを翻弄。敵を十分に引きつけ、最後は右足アウトサイドで味方のゴールをアシストした。このプレーにスペイン紙からは「日本の魔法を見せた」と報じられていた。名刺代わりに大きなインパクトを残した日本のファンタジスタは、ピッチで魔法をかけ、“鬼門”を突破してくれるに違いない。

 その他にも今シーズンも数多くの日本人が欧州リーグでプレーする。スカパー!では見どころ満載の欧州サッカーシーンを多様なチャンネル体系で放送する。世界のスタンダードをチェックしておきたい。

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